今から1年半ほど前、夫でアーティストのアダムウェストンと共に、中国最大の芸術エリア、北京の798芸術区を仕事で訪れた。日本の銀座8丁目にある老舗、東京画廊が、年に1度手掛ける「朦朧主義」展に、アダムの作品が選ばれ、展示されることになったからだ。
東京画廊は、日本で最初の現代美術画廊として由緒あるだけでなく、北京の798芸術区においてもいち早くギャラリーを開き、この芸術区に置ける先駆者。私とアダムも展覧会のオープニングに出席する為、パーティー前日に関西空港を飛び立つ予定にしていた。
しかし出発当日、関西空港でハプニング発生。北京行きの便が遅れるというアナウンス。はじめは1時間程の遅れとの表示が、結局4時間経っても一向に飛び立つ気配なし。私たちが利用した中国系の航空会社の北京行きは、1日夜の1便のみ。
もしも、このままキャンセルになってしまったら、予定していたオープニングパーティーには間に合わない。私の頭の中にマイナスな考えが過っては、消える。
そんな私を横目に、アダムは好きな本を読んだり音楽を聴いたりしながらリラックス。「すべてなるようになるんだよ」と言って、ジタバタせずいつもと同様、落ち着いてる。
そうこうしているうちに、午前0時をまわったころ、北京に向けて飛行機が飛び立つというアナウンスが入った。この際、どんなに遅れても良い、飛んでくれさえすればいい、と安堵感を味わった。
しかしその後、思わぬ出来事が起きた。この時、飛行機が遅れたことが後の私たちの人生を大きく変えることとなったのだ。
出発時間が大幅に遅れたことにより、北京のホテルへのチェックイン時刻も、もちろん大きく変わった。なんとそこで、マンハッタンから仕事でやって来ていた画廊のオーナーとばったり出逢うことに。
もしも、飛行機が遅れていなかったら出逢えていなかった、奇跡的なタイミングで!
マンハッタンで生まれ育ち、日本とハワイにスタジオを構え創作活動をしているアダムと、マンハッタンで画廊を経営しているオーナーが、北京で偶然の出逢い。そして、そのオーナーがアダムの作品を大変気に入ったことでその画廊で作品の取り扱いが始まることに…。
そして、そのことがきっかけとなり今ではニューヨークにもスタジオを構え、創作を行なっている。
あの時、飛行機の出発が遅れていなければ、私たちはまた、違った人生を歩んでいるのだろうか。
人間万事塞翁が馬という故事成語があるが、まさにそのことを実体験で味わった出来事だった。
大森 千寿 香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。www.chizuomori.com |