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12歳、はじめてのアメリカへ その2

 12歳、はじめてのアメリカオレゴン州へのホームステイひとり旅は、最初から運命に導かれたようなハプニングの連続でした。緊急着陸したハワイオアフ島で一晩明かした後、いよいよ今度こそ目的地、オレゴン州のポートランド国際空港へ。空港では、2人の女の子とご両親が、あたたかく迎えてくれました。  

 

 アメリカでの生活が始まり、困ったことのひとつ、それはなかなか冷蔵庫を開ける勇気が持てなかった事。かなりちっぽけなことなのですが、私にとって他人のお宅の冷蔵庫を開けるということは、今までの日本での生活の中では無いことでした。親から、お友達の家へ遊びに行っても勝手に冷蔵庫を開けたらダメよと、教えられていたからです。  

 ホストファミリーのお母さんから、何度もジェスチャーを交えながら 、冷蔵庫のものは自由に飲み食いしてオッケーと言ってもらった事は理解できていたのですが、なかなか取っ手を引っ張ることができずにいました。  

 

 そんな中、自分自身の殻を破る出来事が起きました。家族で外食をするため、車から降りてレストランまで歩いていた時のことでした。 「チズは、いつも下を向いて歩いているよね!」 8歳のおませな妹、ティファニーが私にそう伝えて来たのです。彼女は、私がそのことに理解ができるまで、私の歩く前にやって来て、相変わらずの早口でベラベラと英語を話しながら、何度も何度も、頭を垂れて面白くなさそうに暗く歩く私の真似をしたのです。まるで、鏡に映った自分の姿を見るようでした。  

 その時、ハッとして、目が覚めるような衝撃を受けました。英語がわからないこと、自分をうまく出せないこと、家族と仲良くなりたいのに自分から一歩を踏み出せないこと…あげると切りが無いほど、自分の殻に閉じこもり、まわりの状況をみることもせず、気づくと下を向いて生活をしていたのです。  

 そうか…こんなに遠くまでやってきて、下を向いて歩く自分ではなく、しっかり上を向いて楽しく歩ける自分でいたい! そう心に決めた瞬間から、何かが吹っ切れて、冷蔵庫も開けることができるようになって(笑)すると、ものごとの流れも何かが変わって来たように感じました。  

 

 そうこうしているうちに、1カ月があっと言う間に過ぎ、家族とお別れをする時がやってきました。そこで、同じ歳、12歳のアンドレアと、ある一つの約束をしたのです。 「高校生になったら、同じハイスクールにいこう!」  

 それは、オレゴン州にまた、戻ってくるということを意味していました。  

 次なる新しい目標を胸に、貴重な経験をさせてもらった12歳の私は、意気揚々とはじめてのアメリカを後にしたのでありました。

 

 (日刊サン  2016/4/1)

 

大森 千寿
香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。

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