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NYを出て地元の香川県に戻り、はや1週間が過ぎました。雨続きの香川県でしたが、今日の空はあまりに青く、ふと見上げた空をぼんやりと眺めていたら、ある出来事を想い出しました。  

以前、このコラムでもオレゴンに留学していた時の事を書きましたが、当時、私は16歳。親元を離れて高校2年生の夏休みに休学届けを出し、そこからの1年間をオレゴン州、セーラムにある私立高校で過ごしました。アメリカでの高校生活は、地元、香川県での高校生活とは180度違っていました。  

まず、大きな違いは高校生が自分で車を運転して学校へ通うということ。地元香川では自転車通学の私でしたが、オレゴンでは、自動車を運転する同じ年の友人に車で学校まで乗せてもらい登校していました。これだけでも、ずいぶんとカルチャーショックでした。  

授業中も、クラスによっては床に寝転がってスナック菓子を片手に授業に参加している生徒も多く、日本とは全く違うスタイルに戸惑いました。

 

そんなある日、1つ年上で高校3年生の親友モニアが週末泊まりにおいで〜と誘ってくれました。幼い時にルーマニアから家族でアメリカに移住してきた彼女は、異国で暮らすことの厳しさや孤独をよく知っていて、ことあるごとに私をかばい助けてくれていました。  

晴天の土曜日。彼女がどうしてもある場所に私を連れて行きたいと言い出しました。モニアが運転する車に乗って約1時間。着いたのは地元の空港でした。全く、何も知らされていない私にこの時、はじめてモニアの口からこう切り出されました。 「今から、私がセスナを操縦するから、チズと二人で空を飛ぶんだよ!」  

驚く間もなく、目の前にセスナが現れモニアが飛行準備をし、私を横に乗せました。将来パイロットになりたくてセスナの免許を取り、練習を重ねているとのことでした。モニア17歳、私16歳。私たち二人だけを乗せたセスナ機がどんどん加速して行きついにテイクオフ。車を運転している友人たちを見ているだけでカルチャーショックだったのに、空を飛ぶなんて!  

あっという間の飛行でした。空の上から見たオレゴンは緑溢れ、また一段と素晴らしく、物事を違った角度から見ると全く違う世界が見えるんだということを体験しました。  

 

このことがきっかけで、世界が一気に広がりました。そして、この時に二人で大空を飛んで味わった開放感、そして自由という感覚は未だに忘れられない私の人生の大きな宝物です。  

もしかしたら、今日も見上げた果てしなく続く大空の何処かに、モニアが操縦する飛行機が飛んでいるかもしれない。そう思うと何だかとてもワクワクして、私の夢もまた、大きく広がっていくのでした。

 

(日刊サン  2016/7/5)

 

大森 千寿
香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。

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