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フランス女子が決断したこと

 

週末のNYは、冬の気温から一気に25度を超える暑さとなり「ついに春の到来か!」と喜んでいたら、翌日は3度まで気温が急下降。まるで常夏ハワイから冬のNYに帰ってきたような気分。そんな、たった2日の春日和。ニューヨーカーたちは春を待ちわびていましたー!と言わんばかりに前日まで着ていたダウンコートを脱ぎ捨て、タンクトップに短パンという出で立ちで多くのひとがテラス席での食事を楽しんだり、公園でピクニックしたり。私と夫アダムもセントラルパークへ直行。

 

満開の桜を堪能した。温度が上がると、テンションも上がる。(笑)早速、友人カップルに連絡。テラス席で太陽の温もりを感じる中ダブルデートを決行。友人カップルはフランス人とニューヨーカー。フランス人の彼女は、カメラマンのアシスタントの仕事で9年前にパリからNYCへと引っ越してきた。食事中、ふたりが決断したことがあるといって話をはじめた。  

 

彼女は、NYでの生活にもう未練がないらしく故郷フランスに帰る決断をしたという。パリで仕事をしていたけれど、故郷はパリから列車で1時間くらいの場所にある郊外。そして、ニューヨーカーの彼も一緒に彼女の故郷へと移り住む計画だという。それからしばらくの間、ふたりが決めた人生の決断の話で盛り上がった。彼女曰く、生活のクオリティーを考えると大都会のマンハッタンでこのまま生活していくことに限界を感じてしまっているという。「わたし、とにかく知りたいのよ。わたしたちがフランスに帰ってどう感じるか、どうなるかなんて誰にもわからない。でもそれを知るには、自分から行動に移すしかないでしょ。だからやってみるの」キラキラと澄んだ彼女の目がより一層、輝いてみえた。

 

そこから、フランスのあるある話にはなしが発展。パリではバゲットをかじりながら歩いて家に帰るまでに半分以上がなくなってしまうことや、フランス人は英語を話せるのに、英語を話したがらないという噂は本当らしかった。彼女は、続けてこういった。「人生ね、何度だってやり直しができるのよ。もしあわなかったらまたどこか他に選択肢だってたくさんあるしね!ね、そうでしょ?!」そういって彼女は彼にもたれかかり、目の前のグラスに少し残っていた白ワインを品よく飲み干した。

 

ふたりは今、誰もが憧れるような大手の会社で働いている。そのキャリアを捨てて、まったく仕事のあてもない土地へ踏み出そうとしている30代後半のふたり。このふたりだったら、どんなことがあっても乗り越えていけるな。ふたりの新たな決断と、これからの人生の門出を祝うような、そんな春の気配感じる穏やかな1日だった。

 

(日刊サン 2018.04.18)

 

 

大森 千寿

香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。 www.chizuomori.com