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1億円のハッピー・ハロウィン

Bynikkansan

11月 12, 2019

 

 ハロウィンと言えば、ハワイ時代に住んでいた住宅地近くの「Kaimuki Street」を思い出します。当時小学校の低学年の娘は「トリック・オア・トリート」が一番楽しかったお年頃。イルミネーション華やかな一画を、可愛い衣装を着て、お友達と飛び跳ねるようにお菓子をもらいに走った姿が、昨日のことのように目に浮かびます。

 

 

ハロウィン直前に渋谷の街を埋め尽くした啓発防止のオレンジ色のフラッグ。当日の路上飲酒は全面禁止に

 

 

過激化する渋谷の夜

 そんな平和なハロウィンの思い出の一方、日本の渋谷では超厳戒態勢の一夜を迎えました。日本のハロウィンは、5年ほど前から突如人気となり、昨年は大騒ぎした仮装客が、渋谷の中心のセンター街で軽トラックを数人で持ち上げて横転させる事故が発生。ニュースでも取り上げられ、社会問題となりました。

 今年、ハロウィンの前の週に渋谷に用事があり行くと、代々木公園に続くバス通りに見慣れないオレンジ色の旗がズラリとたなびいていました。「SHIBUYA PRIDE ハロウィンを渋谷の誇りに」と書かれ、アーティストや歌手など著名人らの啓発メッセージが1枚1枚に印刷されていました。直前に迫ったハロウィンに向けて、マナー向上を訴えていました。

 

渋谷区は1億円以上の対策費

 さらにセンター街のレストランでは「ハロウィンの衣装のトイレでの着替えは禁止」と大きく貼り出され、すでに警戒態勢。今年渋谷区では、早々と6月にハロウィン直前の週末と当日の路上での飲酒を禁止する条例を可決しました。また特別予算として、警備や対策費に1億3000万円を計上し、本気の対策が大きな話題となっていました。渋谷のハロウィンは過激な仮装をした学生や若手社会人が集まり、一夜限りの大騒ぎする日として定着。それに対抗するため、行政側は大金を使った警備が必要なほど危険なイベントと認識されているのです。ハワイで経験したホノボノとした子どものイベントとは別モノに思えるほど、日本のハロウィンは過激になり、本来のイメージと大きくかけ離れているように感じます。

 

またまた逮捕者が!

 そんな警戒ムードで迎えた渋谷の10月31日は、警視庁の数百人の警察官が警備にあたったものの、合計9人の逮捕者が出る結果に。20歳女性のお尻を触った51歳の男性まで逮捕され、スクランブル交差点を中心とした渋谷がその夜どれほどの「カオス」だったか、想像できます。 その一方、日本ならではの「清掃ボランティア」が翌日の早朝の街を掃除。午前7時前にゴミが片付けられ、いつもの街以上に渋谷が綺麗になったと賞賛されました。

 

ハロウィン人気も失速傾向

 ただ一時はバレンタインを追い抜き、1240億円の市場規模(2018年、日本記念日協会発表)を誇ったハロウィンの消費は、ここ3年は減少とのこと。若者が仮装をして大騒ぎする一方、今年も近所の商店街では衣装を着てお店に行くとお菓子をもらえるイベントなどが盛んに行われ、小さな子どもたちのお楽しみとして続いています。我が家もハワイからの帰国後、娘が小学生だった頃は近所の子に声をかけて、家に「トリック・オア・トリート」に来てもらい、楽しく過ごしました。 外国と違って日本では、まだまだ歴史の浅いハロウィンが、今後どのような形で日本に定着していくか、注目です。

 

 

 


竹下聖(たけしたひじり)

東京生まれ。大学卒業後、東京の某新聞社でスポーツ記者、広告営業として15年間勤務後、2012年〜2014年末まで約3年間ハワイに滞在。帰国後は2016年より、大手町のマスコミ系企業に勤務。趣味はヨガと銭湯巡り。夫と中学生の娘、トイプードルと都内在住。


 

 

 

(日刊サン 2019.11.09)