ゴールポスト後方のカテゴリーCの席。ちなみに1席2万円でした
日本中がラグビーに熱狂し、夢を見た1カ月に終止符が打たれました。私が買っていた20日の準々決勝のチケットは、日本が予選プールを1位で突破したため、奇跡的に日本対南アフリカ戦となり、歴史的一戦を東京スタジアムで観戦しました。W杯出場9回目で、初の決勝トーナメント進出を果たした日本。その雄姿を目に焼き付けました。
いざ、準々決勝へ!
日本が歴史を塗り替えた13日のスコットランド戦のテレビの視聴率は、驚異の53・5%。 この1週間は、新聞もテレビも決勝トーナメントを決めた日本ラグビーの話題一色で、その興奮のまま私もスタジアムに向かいました。
東京スタジアム近くの調布駅は、日本代表の赤白のジャージはもちろん、鮮やかなグリーンのアイルランドや紺とチェックのスコットランド、そして黒のオールブラックス、南アフリカの黄緑のジャージがあふれます。どの国も20日に準々決勝を行う可能性があった4カ国。
女子トイレで会ったスコットランドからのファンは「どの試合になるか分からないから、両方の準々決勝を予約したの。スコットランドは負けちゃったから、日本を応援するわ」と笑顔で話してくれました。
ハイネケンの売り上げも、W杯級
午後7時15分開始の因縁の南アフリカ戦。 ラグビーの試合は、同じ競技場で試合を行うJリーグ開催時より照明の明るさを上げており、光に浮かび上がる芝生の美しさに胸が高まります。
余談ですが、今W杯中はハイネケンを背負ったスタンドの売り子が大活躍し私も試合中に3杯お世話になりました。サッカーのファンより、8倍ビールを飲むと前評判が高かったラグビーのファン。売り子さんに聞くと前日は1人で200杯売ったとか。1杯700円ですから、14万円の売り上げ!すさまじいですね。
日本のノーサイドを実感
試合結果はご存知の通り、3-26で惜しくも日本が敗退…。試合を終えた選手たちは、スタンドの前方後方、左右と4方向に必ず挨拶に来てくれます。
ここまで計5試合続いた激闘を物語るように、試合後の福岡選手は、挨拶の時もひざを落として芝生にお尻を付いていました。今まで見せたことのない姿に、W杯の最終戦だったのを感じました。 さらに、スタンドへのお辞儀が終わると、リーチ選手ら3~4人の選手が看板を乗り越えバックスタンドの最前列へ。
柵越しに子どもを抱きかかえて、チームの輪に戻ってきたのが印象的でした。パパの近くで嬉しそうにかけっこをする子どもたちの微笑ましい姿は、日本が本当に「ノーサイド」を迎えた光景でした。
赤いユニホームで埋まった試合前のスタンド。カンタベリー製の日本代表のジャージは20万着が売れたとか!! |
ありがとう、桜の戦士たち
1カ月前の開幕前は、ほとんど顔と名前を知られていなかった選手たち。FW1列目で体を張った稲垣選手は「笑わない男」として有名になり、さっそく朝のワイドショーに引っ張りだこ。
NO・8のイケメン姫野選手は、その44センチの太さを誇る二の腕で、相手選手から次々ボールを奪う「ジャッカル」の代名詞となりました。
今大会で15人制ラグビーを引退する福岡選手は、母方の祖父と同じ医師を目指し医学部への再入学を公言。私を含め「早く医者になって、診察してもらいたい」という女性ファンが多くいます。南アフリカ戦は、私の“おし選手”3人がスタメンで出場し、個人的にも忘れられない日となりました。
試合の翌日にチーム全員で行った会見。2大会前の11年W杯の帰国会見では記者が3~4人だったそうですが、この日は200人越えと、当時を知る堀江選手を驚かせました。
「One Team」の言葉で魅了したラグビー日本代表はたくさんのレガシーを残してくれました。W杯は準決勝、11月2日の決勝と続きますが日本の試合はひとまず終了。桜のエンブレムを付けた選手たち、満開の桜の花をありがとう。
竹下聖(たけしたひじり)
東京の某新聞社でスポーツ記者、広告営業として15年間勤務後、2012年〜2014年末まで約3年間ハワイに滞在。高校時代から大のラグビー好きで、今回のW杯は自腹で4試合を観戦予定。好きな選手は日本のFW1列目のスクラム番長・稲垣、好男子・姫野、文武両道のトライゲッター・福岡。現在隔週土曜に日刊サンで「コラム・マスコミ系働き女子のひとりごと」を連載中。
(日刊サン 2019.10.24)