日本代表が強豪のスコットランドを倒し、予選トーナメント無敗で、史上初のベスト8入りを決めました! 超大型の台風19号が日本列島を直撃し、当日の朝まで開催が危ぶまれた13日夜のスコットランドとの一戦は、日本中が固唾を飲んで見守り、そして歓喜しました。
その一方、台風の影響で3試合が無念の中止に。開催12都市の中で、格別の希望と情熱を持ってW杯を招致した岩手・釜石でのカナダ対ナミビア戦も、キャンセルゲームとなりました。
復興の象徴、釜石での試合も中止 実は私も1年前から、現地のホテルを予約し、観戦を心待ちにしていた三陸・釜石の試合。新日鉄釜石が日本選手権を7連覇し、「ラグビーの街」としてその名前を知られた地です。
今回のW杯12会場のうち、唯一新設された「釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアム」は、津波で流された小学校と中学校の跡地に建てられました。震災後に届いた世界中からの支援に対し、「感謝と復興の発信」をする機会として、W杯に向けて多くの関係者が奔走してきました(→詳しくはラグビーライターの大友信彦著『釜石の夢~被災地でワールドカップを~』がおすすめ)。
私は昨年8月のスタジアムのこけら落としで、娘と一緒に訪問。白い帆船をイメージし、被災地に凛と立つそのスタジアムで、多くの世界中のファンを迎えることこそ釜石の方の希望だと思い、W杯での再訪を心に決めていました。(釜石の2試合のうち1試合は無事開催)
遠くナミビアからの応援団 試合を行う予定だったナミビアは、出場20国の中で最も無名かもしれません。ラグビー大国・南アフリカの隣国で人口は220万人。チームの中には、週5日間は銀行マンとして働く「アマ選手」の存在も。
6日に東京スタジアムで観戦した、NZ対ナミビア戦は、スコア以上に気迫に満ち、子どもを3人連れて33時間かけてはるばる日本まで応援に来たナミビア人の家族と遭遇。「2週間も学校を休ませたのよ」と笑う母親に、つい「私も娘を早退させて、静岡まで日本の応援に行ったよ!」と意気投合してしまいました。
カナダ、ナミビア代表に感謝の声 釜石の試合中止の決定は、当日の朝。ただ想像を超えた後日談があり、カナダ代表の選手はすぐさま冠水した釜石市内で泥さらいのボランティア活動を行い、屈強なパワーを発揮してくれました。
宮古市に滞在したナミビア代表も、「台風の被害を受けた市民を元気づけたい」と即席の交流会で現地の方と触れ合いました。
台風が大きな爪痕を残し、ラグビーW杯史上初めて3試合が中止となった今大会。厳しい状況でこそ発揮されたラガーマンの寛容的な態度と、その気風を醸成させるラグビーというスポーツに、多くの人が今、驚きそして感動しています。
竹下聖(たけしたひじり)
東京の某新聞社でスポーツ記者、広告営業として15年間勤務後、2012年〜2014年末まで約3年間ハワイに滞在。高校時代から大のラグビー好きで、今回のW杯は自腹で4試合を観戦予定。好きな選手は日本のFW1列目のスクラム番長・稲垣、好男子・姫野、文武両道のトライゲッター・福岡。現在隔週土曜に日刊サンで「コラム・マスコミ系働き女子のひとりごと」を連載中。
(日刊サン 2019.10.17)