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マリナーズ、9月13日からの3連戦はイチロー・ウィークエンド

Bynikkansan

8月 3, 2019

球場の外壁を飾る現役最後の試合後ファンに挨拶するイチロー氏の姿

 

 

シアトル・マリナーズは7月25日(木)、日本で行われた今季開幕シリーズを最後に現役引退を表明したイチロー氏に、球団の特別功労賞に相当するフランチャイズ・アチーブメント賞を授与すると発表しました。

 

授与式が行われるのは9月14日(土)、本拠地Tモバイル・パークでのシカゴ・ホワイトソックス戦の試合前。13日(金)からのホワイトソックス3連戦は「イチロー・ウィークエンド」と称され、色々なプロモーションが企画されています。

 

13日は試合終了後、ビデオスクリーンにイチローの名場面を流しながら花火を打ち上げる「イチロー・花火ナイト」。14日は先着2万人にイチロー氏のボブルヘッド人形を配布。15日は先着1万5千人にイチロー氏の背番号51が入ったTシャツが配布されます。

 

3月21日に東京ドームで日本のファンに選手としての別れを告げたイチロー氏ですが、チームがシアトルへ戻り、ホーム開幕戦を迎えた際も、それ以降も、14年間所属したシアトルの球場ではファンに正式に別れを告げる機会が設けられていませんでした。

 

イチロー氏は現役引退後、マリナーズが本拠地で試合がある場合や傘下3Aのタコマ・レイニアーズが本拠地で試合がある場合は、打撃と外野守備の特別コーチとして指導に当たっており、試合のイニング交代時にイチロー氏の現役時代の名場面がビデオスクリーンに流れたことはあります。

 

しかし、地元ファンが首を長くして待っていた正式なセレモニーの発表がようやく行われ、イチロー・ウィークエンドのチケットの売れ行きは良好のようです。

 

この3連戦はレギュラーシーズンもわずか2ヵ月となった現時点で、プレーオフを逃す確率が高いア・リーグのワイルドカードレースで下位から5番目のマリナーズと6番目のホワイトソックスとの対決で、当日までには消化試合となっている可能性大。

 

しかし、数々のメジャー記録や球団記録を達成したイチロー氏に最後の喝采を送りたいファンで大入り満員になること間違いなしです。配布されるグッズの数が限られる場合は、試合開始の3~4時間前から列に並ぶファンも少なくなく、かなり長い一日になりますが、私も14日にはTモバイル・パークへ向かう予定です。

 

特別功労賞授与式で気になる点

「フランチャイズ・アチーブメント賞」は球団の功労者を称えるべく、マリナーズが2016年に始めたものです。まだ4年目の賞で、過去の受賞者はともに球団会長を務めたジョン・エリスとその後任者のハワード・リンカーンのみ。

 

両者とも1990年代にフロリダ移転の危機にさらされていたマリナーズを、任天堂など地元の投資家をかき集めてシアトル残留へと導いた功績が評価されての受賞で、チームに所属した選手が受賞するのはイチロー氏が始めてです。

 

マリナーズにはエリス元会長やリンカーン前会長らと同様にチームのシアトル残留に貢献したとされ、2016年に球界殿堂入りを果たしたケン・グリフィーJr.や、グリフィーやイチロー氏ともチームメイトでこの7月に指名打者として史上初の球界殿堂入りを果たしたエドガー・マルチネスもいますが、両者に先駆けての受賞となります。

 

気になるのは、授与式でイチロー氏がスピーチをするのかどうか?もし、スピーチをするなら、英語でするのか?それとも通訳を通すのか?です。シアトルのファンはイチロー氏が英語で話す言葉が聞きたいはずです。そして、イチロー氏も自身の言葉でシアトルのファンに感謝の気持ちを伝えたいはずです。

 

自らトレードを志願して敵チームの選手になった後もシアトル遠征で温かく迎えてくれ、2018年にチームに再復帰すると、6年間のブランクなどまるでなかったかのようにイチロー・コールを送り続けたシアトルのファンへの思いは、日本語では活字でもよく伝わってくるのですが、英語のみの地元ファンにはよく伝わっていない気がします。

 

アメリカ生活も今年で19年目。チームメイトだった選手とは通訳を介さず、コミュニケーションが取れているのだから、この機会に是非本人の言葉が聞きたいもの。2025年の資格取得初年度に殿堂入りが決まれば、クーパーズタウンでの式典でも、シアトルでの祝賀式典でもスピーチをするはずで、9月の式典はその練習機会として捉えて欲しいものです。

 

いよいよ背番号51が永久欠番に?

もう1点気になるのは、イチロー氏がニューヨーク・ヤンキース所属時代(2012年7月~2014年9月)を除いて長年着けていた背番号51がいよいよマリナーズで永久欠番化されるかどうか?です。

 

以前にも触れましたが、マリナーズではイチロー氏に加え、1989年から1998年まで所属していた左腕ランディ・ジョンソンも51 を着けていました。

 

ジョンソンはマリナーズ所属時代に才能を開花させ、1995年に自己初のサイ・ヤング賞を受賞しましたが、1999年にアリゾナ・ダイヤモンドバックスに移籍後にリーグ屈指の豪腕左腕としての地位を確立し、サイ・ヤング賞を4回受賞。2001年ワールドシリーズ優勝の立役者となり、資格取得初年度の2015年にダイヤモンドバックスの選手として殿堂入りしました。ダイヤモンドバックスでは殿堂入りが決まった2015年にジョンソンの51番を永久欠番化しています。

 

イチロー氏が殿堂入りの資格を得るのは現役最終年から5年が経過した2025年です。その年まで51番の永久欠番化しない可能性もありますが、今年殿堂入りを果たした前述のエドガー・マルチネスの場合は2年前の2017年に球団が永久欠番化を発表しています。

 

イチロー氏が殿堂入りするのはほぼ確実で、マリナーズの51番が永久欠番化されるのもほぼ確実。イチロー氏が引退表明してから、Tモバイル・パークでの引退式典を発表するのにここまで時間がかかったのは、51番の永久欠番を引退式典で発表するにあたり、ジョンソンとの連名にするか、イチロー氏名前のみでするか、球団内やジョンソン、およびイチロー氏と話し合いが必要だったからではないかと推測しています。

 

マリナーズの永久欠番は今年殿堂入りしたエドガー・マルチネスの11番を合わせて3つのみ

 

プロ野球時代から51番を着用していたイチロー氏がマリナーズ入団にあたって、ジョンソンに手紙を書いた話は有名です。私はダイヤモンドバックスですでに永久欠番してもらったジョンソンが、マリナーズの51番はイチロー氏の単独でどうぞと譲ってくれることに期待しています。

 

 

 


金岡美佐

1992年に渡米。サンディエゴからサンフランシスコ経由で北上し、現在シアトル近郊在住。MBAを取得し某有名IT企業のファイナンス部門で勤務するも、大のスポーツ好きが高じて脱サラ。スポーツライターへ転身。「スポーツは見て楽しむもの」をモットーに年中スポーツ観戦に大忙し。春夏は野球、秋冬はアメフト、冬春はアイスホッケー。一番好きなのはアメフト。シーズン中の土日はスタジアム観戦以外、外出不可


 

(日刊サン 2019.08.03)