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ジェミニマン

Bynikkansan

11月 7, 2019

 庭の池と似ているから絶対に鯉が泳いでいる!と岩風呂には怖くて入れなかったし、冬のモコモコした防寒用イヤーマフはヘッドフォンと同じで音楽が聴ける!と親にねだって買ってもらったもののそんなはずはなく、がっかりしたのを覚えている。と、子どもの頃ほど思い込みは激しくなくなったが未だに名残がある。本作“ジェミニマン”もそうだった。

 

 時速200km以上の高速列車に乗るターゲットを2kmも先から難なく仕留めるという、世界最高峰のスナイパー、ヘンリー・ブローガン。しかし、51歳という己の年齢もあり腕の衰えを感じ引退を決めた矢先、最後の案件になるはずだった暗殺が、政府から知らされていた凶悪なテロリストの殺害ではなかったことが判明。疑問を抱いているうちに謎の組織から襲撃を受け追われる身となり、さらにその最中、互角の戦い方をし、若い頃の自分と瓜二つの顔を持つ奇妙な“ある男”と出くわすことに―。

 

 タイトルに“~マン”とつけばマーベル作品だろう、と事前リサーチを怠った自分が甘かった。今年は“アベンジャーズ”シリーズ最終章もあり、色々と燃え尽きてしまっていたのでもうお腹一杯、と知人にこぼしたら「いやいや、マーベルでもDCでもないよ!」とのご指摘。その上、予告編で主人公ウィル・スミスにそっくりな人物を目にした瞬間、ああ、息子のジェイデン・スミスも立派な大人になったなぁ…と思ったらそれも間違いで、特殊メイクでもなく、なんと顔だけまるまるフルCGとのこと。こんなにきめ細やかな若い肌の質感や物憂げな表情が作り物なのか、と驚嘆した。今後は死者すら生前と変わらずスクリーン上に甦らせることも可能になり、映画製作の基盤を変えていくのでは、と期待も膨らんだ。また、ストーリー自体は小難しくなく、クールなWウィル・スミスの、爽快でキレのあるアクションを存分に楽しめる。

 

 今回は気付けて良かったが、勘違いや思い込みで見逃している良作は、実はまだまだたくさんあるのかもしれない。

 

 


●加西 来夏 (かさい らいか)

映画は年間100本以上視聴、訪問39ヵ国の旅する映画ラヴァー/先週のハロウィン、キャットウーマンの仮装で行ったらかなりキマッているジョーカーと遭遇し、映画の話でしばし盛り上がりました! 類は友を呼ぶ、ですね。


 

 

(日刊サン 2019.11.07)