妙法寺でピースコンサート
る、心温かなとなり人。歌って奏でることで、涙を笑顔に変えている音楽家たちだ。 「カンタ!ティモール」予告上映会の後は広田奈津子監督があいさつし、この映画を見て応援団長に名乗りを上げ、各地で上映会をしてくれている女優の斉藤とも子さんを紹介。
斉藤さんは15歳で芸能界に入り、学園ドラマなどで人気を博してきた。38歳の時にシングルマザーとして子育ての傍ら、東洋大学の社会福祉学科に入学。ほぼ同時期に井上ひさしさんの『父と暮らせば』の舞台に出演。被爆した娘を演じ、舞台は3年間も続いた。大学と広島の二つの出会いで、斉藤さんの人生の舵は反戦と平和へ向かっていく。大学院にも進み、卒論のテーマは「きのこ雲の下から明日へ—原爆小頭症患者の親子の会『きのこ会』の歩みと家族の生活史−−」だった。「カンタ!ティモール」を応援するために、ハワイにも手弁当で同行してくれ、広田さんと知り合って知ったという本『父は空 母は大地〜インディアンからの手紙』を朗読。これは160年前、アメリカ先住民の酋長が、当時のアメリカ大統領に、土地を明け渡さなければならなくなった思いを綴った手紙だ。
わたしは この大地の一部で大地は わたし自身なのだ それなのに 白い人は 母なる大地を 父なる空を まるで 羊か 光るビーズ玉のように 売り買いしようとする 大地は わたしたちに属しているのではない わたしたちが 大地に属しているのだ (一部抜粋)
ピースコンサートは50人ほどの小さな集まりだったが、心の琴線に触れる手応えのあるひと時だった。
カンタ! ティモール、 見逃した方は連絡を!
「カンタ!ティモール」は2002年に独立した、東ティモール民主共和国の平和への願いを記録したドキュメンタリー映画だ。1970年代の終わりから30余年、悲惨な殺戮と侵略が繰り返されたこの地では、3人に1人の命が失われた。
残された人々は、命を分けるように助け合った。悲しいから笑い、苦しいから歌い、忍耐と愛で独立を勝ち取った。カンタ(歌え)!ティモール。 映画は罪のない人々が無差別に殺されていくさまや、瀕死の傷を受けた青年の体験談など、酷い、目を覆いたくなるシーンもある。なのになぜか陰鬱にはならない。全編をキラキラと彩る、東ティモールの人々の圧倒的な笑顔、澄みきった瞳を真っ直ぐに向けてくる子ども達の躍動の存在感の方が強いからだ。主人公アレックスの歌声が、観る者のからだに染み込んで、命の息吹を感じさせてくれる。
登場人物全員の笑顔がいい、歌声がいい、ポエムのような語り口がいい、なにより生き様が最高だ。 村の人々に寄り添い、じっくりと話しを聞き、ありのままにカメラを向けた、広田奈津子さんと小向サダムさん。カメラ機材は友達に貸してもらい、制作費のメドも何も考えずに東ティモールに飛び込んだ二人。アレックスを道先案内人に山深い村を訪ね歩き、未知の村人の家に泊めてもらいながら記録してきた映像。世界で最も安上がりな映画かもしれないけど、心に残って離れない作品。人生に凹んだ時、また観たくなる映画。なんてピュアでハートフル!
この記事を読んで、ああ観たかったな、と思ってくださったあなたへ。広田監督はハワイの皆さんに素敵なギフトを用意してくれたのだ!!今回、「PEACE CONCERT 2018」と「カンタ!ティモール」上映を主催したのは、“ハワイで、豊かで実りある人生をサポートする”ウーマンサポートセンター・オブ・ハワイと、ホノルルファンデーションの2つのNPO。女性たちが自立できるよう、セミナーや講演を企画したり、サポートグループや傾聴で助け合う活動をしている。代表を務めるはKaori FiackさんとHiroko Dewizさん、瓜生仁美さん。 広田監督はこのNPOに「カンタ!ティモール」のDVDを託してくれたので、見たい方は下記に連絡すれば、日本語字幕、英語字幕いずれかのDVDを購入することができる。一人でも多くの人とシェアしたい映画だ。
(取材・文 奥山夏実)
問合せ:電話377−4730、371−0218
(日刊サン 2018.11.18)