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1969年7月20日、米国の宇宙船アポロ11号から降り立った二人の宇宙飛行士が初めて地球以外の天体・月に足を踏み入れた。地球から38万キロも離れた月からの衛星生中継!ア-ムストロング船長がその第一歩をしるした瞬間に報道局中で歓声が上がったのを、今も鮮やかに思い出す。

 

そして、今年7月、その瞬間の記録ビデオのマスタ-テ-プ3本が競売にかけられ、約2億円で落札されたというニュ-スが入ってきた。払い下げされたテ-プの中に混じっていたのを個人が保管していたという。あれからもう50年たっているんだなあ・・・それにしてもNASAはいったい?2017年のアポロ17号以来、月面有人着陸はなされていない。

 

今年3月マイク・ペンス米副大統領は2024年までに宇宙飛行士を再び月に送ると発表したが、トランプ大統領は「そのミッションには日本が参加する。そして、ごく近いうちに火星にも向かうだろう。軍事的観点から見て、現時点で宇宙より重要なものは何もない」と訪日中に語っている。

 

直前に、中国が世界で初めて月の裏側に無人探査機「じょうが4号」を着陸させたことが大いに影響を与えていると言われている。中国はすでにソ連・米国に続き無人探査機の月面着陸にも成功しているが、2030年には有人月探査も目指しているという。着々と計画を進め、今はどの国のものでもない月に、いずれは軍事基地を作るのではないかと疑う向きもあるからだ。

 

さらに、中国はミサイルによる人工衛星破壊実験にも成功している。米軍は世界に展開する部隊の管制を多様な衛星に依存しているため、これらが破壊され、無力化されるのを恐れているのだ。だから米国の宇宙関連予算は、NASAよりはるかに多く国防総省に割り当てられている。

 

また、トランプ大統領は昨年「宇宙軍」の新設を指示、「アメリカが宇宙を支配する必要がある」と語っていて、もはや宇宙問題は国防問題となっているのだ。 もちろんロシアには「ロシア航空宇宙軍」、トルコには「トルコ宇宙軍」がすでにあり、フランスのマクロン大統領も先月空軍に「宇宙担当司令部」を創設することを発表、いずれ「空・宇宙軍になる」と述べているように「宇宙戦争」が現実のものになっている。もっとも中国は「宇宙の軍拡競争には反対」「宇宙をさらなる戦場にするのは反対」という声明を発表しているが・・・。

 

その中で日本は宇宙の何に力をいれているのか?実はスペ-スデブリ(宇宙ゴミ)の除去!去年、自民党の宇宙・海洋開発部会にこれをテ-マにしたプロジェクトチームができ、その座長が、先日電撃結婚をした小泉進次郎議員。取材オ-プンだったので私もずっと部会の議論を聞いていたが、民間も加わって非常に熱心な討論が繰り広げられた。

 

「スペ-スデブリ」というのは、宇宙に漂う、使用済みや・故障した人工衛星・その部品、爆発や衝突してできた破片、燃えカス、塗料片などで、軌道上に大小あわせて約2万3000個以上もあると言われている。人工衛星や国際宇宙ステ-ションにぶつかったら大変!ところが、宇宙は誰でも自由に利用できる空間だから、各国がそれぞれにいろいろな衛星を打ち上げる。

 

しかしどこに、何があってどういう動きをしているのか、その全体像は把握ができていない、または軍事・サイバ-上の理由からか発表されていない。地球温暖化やオゾン層破壊の話と同じことで、各国が衝突の危機感を持っていても、それを共有して対処しようということにはなかなかならない。

 

そして具体的にどう除去するかについては、米国やドイツはロボットア-ムで、英国はネットや銛で、スイスでは触手やネットで捕まえ破壊する方法を提案をしているが、実証実験止まりで、まだ実現されたものはないのが現状。 そこで日本はこの7月に日本で行われたG20の場で安倍首相がこのスペ-スデブリの低減に向けた国際協力を呼びかけた。

 

デブリ対策には米中露の参加が不可欠だが、G20は3人の首脳達が一同に会していたのだ。日本は以前からこの分野での研究・技術の実績があり、宇宙活動での「透明性」「信頼性」が高いと認められているそうなので、今回の提言になったということだ。 とはいえ、どれを除去して良いのか?誰に許可を取るのか?誰が費用分担をするのか?二次被害がおこったら?軍事大国の思惑もからんで実現までにはまだまだ長い道のりだ。民間ビジネスの宇宙参入も始まっている。宇宙は人類共有のもの、永遠に「平和の宇宙」でいてほしいものだ。

 

 

(日刊サン 2019.08.31)