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石川恵多くん 8歳 名門FCバルセロナジュニアチームの練習に招待!

Bynikkansan

5月 24, 2019

アロハサッカースクールで練習  

 

サッカー界の超名門クラブ、FCバルセロナ。クラブの愛称はバルサ。スペイン、カタルーニャ州のバルセロナをホームタウンとし、現在のキャプテンは世界屈指のドリブラー、メッシ。1899年創立以来、サッカー界のレジェンド、ヨハンクライクをはじめ、シャビやイニエスタなどキラ星のようなスーパースターを輩出してきた。この名門バルサのジュニアチームの練習に、この春招待されて参加した日本人少年がいる。ホノルル在住の石川恵多くん8歳だ。  

 

恵多くんは3歳からアロハサッカースクールでサッカーを始めた。

 

「お兄ちゃんがサッカーをしていたからついて行きました」  

 

最初はお遊び気分で、友達と走り回っているのが楽しそうな程度だった。ところがグイグイとハマっていった。いつしか片時もサッカーボールから離れなくなっていた。お母さん曰く、 「家の中でもリフティングしています」  

 

アロハサッカースクールの代表を務めるのはコーチの中村利香さん。日本の女子トップリーグ(現なでしこリーグ)でミッドフィルターとして活躍し、引退後はコーチ人生を歩んでいる、育成のプロだ。サッカーの技術を教え、個人のスキルアップを指導できる人材が少ないハワイでは貴重な存在。現在は口コミだけで100人以上のジュニアが学ぶサッカースクールを運営している。  

 

向かって左から、兄の石川和磨くん、友人のアンディくん、恵多くん、友人のアイナさん

 

 

そんな利香さん自身も同じく、 「兄がサッカーをしていたので、5歳からボールを蹴っていました」  というほど、サッカーひと筋。

 

「恵多くんは最初こそ普通でしたが、左利きのレフティで小柄ながら足も速い。なにより本当にサッカーと相思相愛で、練習を苦にするどころか、練習をするのが楽しくてならないんですね。努力を惜しまないからメキメキ上達しています。持ち味はドリブルのうまさです」  

 

実際にドリブルを披露してもらった。右に左にボールを蹴り出しながら自分が狙った方向に走るのだが、普通であれば蹴りが弱いと走るスピードが落ち、蹴りが強いとボールについていけなくなる。利き足は良くても、もう一方の足はアンバランスになりがちだ。  

 

ところが恵多くんは、トップスピードを落とさず、左右の足のバランスも良く、体の軸もぶれずにドリブルができる。ボールを見ることもなく、自分の行く方向だけを見据えてドリブルができる! デコボコの公園の伸びきった芝生の上で! たった8歳なのに!!   

 

バルサキャンプでも飛び級、キャプテンマーク!

 

「昨年の夏にバルサの子どもキャンプがハワイで開催されたんですね。それに兄とともに恵多も参加したんです。1週間のキャンプでU6(6歳)からU16まで200人くらいの子どもが集まりました。そこで恵多はMVPを獲得したんです。そのご褒美に4月1日から4月6日まで、スペインのバルサ本拠地での練習に招待されました」(お母さん)  

 

スペイン人でもなかなか参加することのできないスクールでの特別な機会だ。両親もお兄ちゃんもお姉ちゃんも石川一家総出で応援に行った。4日間の集中練習の後、練習試合も組まれていた。 「練習の初日からは年齢どおり8歳のグループに入っていましたが、3日目からはコーチから歳上のグループに上がるように言われました。みんな大きくてがっしりした体格で、恵多だけ頭一つ小さかった。それで練習中1〜2回しかボールに触れず、ホテルに戻って悔しがって大泣きしていました。次の日から親が見ても驚くほどがむしゃらに頑張って、最終日の試合ではキャプテンマークを付けさせていただく機会までいただきました」(お母さん)  

 

スペイン語で話していた子ども達も、恵多くんには英語で話しかけてくれたりもした。

 

「バルサと言えば、細かくパスをつなぐパスサッカーが主流ですが、チームメイトは試合の時に恵多に「ドリブルで突っ込めよ」と、得意なドリブルを生かせるよう配慮までしてくれて」  何回かのシュートチャンスを作ることもできた。利香コーチも、「バルサでのキャンプのおかげで、ものすごく気持ちが前向きになりました。パスかドリブルか、判断力も良くなりました。恵多はFCハワイに所属していて、チームはプレジデントデーカップで優勝しているので、8月にはサンディエゴで決勝ラウンドに出場します。子どもは遠征すると成長しますから、それも今から楽しみです」   

 

まずはアスリートとしての体幹作り  

 

FCハワイでは食事面の指導もしていて、普段の練習でもスナック当番に「ハムは脂肪分の少ないターキーで、マヨネーズは使わない」など、子どもであってもアスリートとしての意識を持つよう教えているのだという。 「試合の前の日はパスタなどでカーボローディングするようにとか、試合の3時間前には何も食べない、試合の後はノーシュガーで野菜と果物を食べるなど、細かく指導されます。我が家でもパンよりもご飯にして、高タンパクで野菜の多い和食の献立を心がけています。」  

 

バルサでのキャンプ中もクロワッサンばかり食べていたら、恵多くんはすぐに便秘になってしまい、お母さんがレンジで温めるご飯を用意し、おにぎりを食べさせて治したという。

 

「親としては、サッカーという好きで熱中できるスポーツと出会えて本当に良かったと思います。お兄ちゃんは学校の部活など、趣味としてサッカーが好きですが、恵多はプロを目指したいと言っています。どちらも応援したいです。今は公立の小学校と週末の日本語補習校に通っていて、サッカーをしながら最低限の宿題をこなすのが精一杯。上の学年になったら、勉強との両立も大変だし、プロを目指したいなら別の場所でサッカーを学ぶこともこれから考えていかなければならないかもしれません。でも本当に夢中になれるものと出会えて良かった。利香コーチの指導も素晴らしいので感謝しています」

(取材・文 奥山夏実)

 

(日刊サン 2019.05.24)