イラストを描きながら自己の夢や深層心理を視覚化する「イラスト思考」メソッドを基盤とした教育プロジェクト「ユメカキJAPANプロジェクト」の講座が、日刊サン主催で2月23日、24日の2日間にわたり開催された。ユメカキJAPANプロジェクトには、学校や大学、企業の社員教育、自治体や地域での生涯教育、家庭教育などが含まれ、同プロジェクトの前身となった「まんが教育プロジェクト」が2011年に発足して以来、延べ1万人以上が受講している。桃山学院大学では2019年度の正規カリキュラムへの導入が決定するなど、「イラスト思考」メソッドは現在、日本全国の教育機関や企業の研修などに取り入れられている。
今回行われたハワイ講座は、ホノルル在住の漫画家・前川かずおさんの声掛けで実現したもの。日本からはユメカキJAPANプロジェクト代表の松田純さん、松田利恵さんを始めとした関係者らが来布し、日刊サン主催のイラスト講座、ユメカキ講座のほか、ハワイ大学で学生を対象としたワークショップが開催された。
前川さんはハワイ講座開催のきっかけについて、2017年にハワイで漫画ワークショップを行ったことに触れ、「集まった100人近くの子どもに漫画についての夢を尋ねてみたのですが、『漫画家になりたいが、ハワイではなかなか難しい』という意見が多かったのです」と語った。そこで前川さんは、日本に帰ってから漫画とコラボレーションした教育方法があるか調べてみたという。それがきっかけで、前川さんは松田純先生と会うことになった。「そして実際に松田先生のユメカキ講座を受け、これはぜひハワイでも、子どもだけでなく大人にも体験してもらいたいと思ったのです」
平成学院で23日に催された子ども向けのイラスト講座には、5歳から10代後半までの約15人が参加し、オリジナルの書き込み式テキストでイラストの描き方の基礎を学んだ。講座のメソッドは、漫画の神様と言われた手塚治虫の「丸、三角、四角が描ければどんな絵も描ける」という考えを元に、単純な線と形を組み合わせながら人の顔を描いてもらうというもの。参加した中学生は「イラストは苦手だったけれど、簡単な形の組み合わせでいろいろな顔の表情が描けるとは、目から鱗が落ちたという感じ」と感想を述べた。
センチュリーセンターで24日に開催された大人向けの「ユメカキ講座」には、在住日本人女性を中心に約15人が参加。ワークショップ形式の講座は、書き込み式テキストを使用しながら4時間にわたって行われた。同講座では受講者に数パターンの自分の顔のイラストを描いてもらうが、その目的は、描く過程で台詞などの言葉も加えながら問題解決や将来の夢の達成方法を明確にし、自己の深層心理を追求、理解するというもの。参加者の一人で96歳の日系人女性は、色鉛筆などを使い、日々の買い物の難しさなど、年齢を重ねた際に起こりがちな日常生活の問題解決に取り組んでいた。
プロジェクト代表の松田純さんは、今回が初の開催となったハワイ講座について次のように語った。「ハワイ大学で行ったユメカキ講座では、日本の学生さんよりも、よりはっきりとした自己表現をする学生さんが多い印象でした。100名以上の参加があり、イラストを描くことを通して各々の夢をより明確に把握していただけたのではないかと思います。描いた絵を見せながら夢について語ってもらったのですが、中には涙を流して自分を解放する学生さんも何人かいらっしゃいました。子ども向けのイラスト講座でもそうでしたが、イラストを通じて言葉だけでは表現し難いことを描いてらうことで、夢を描くことに国の違いは関係ないということを実感できました。イラストやまんがの思考法を使って、右脳と左脳を両方活かしながら、私たちの目標達成や未来をデザインするユメカキのアプローチは、まんが大国日本でも大変注目されている手法です。まんが文化に関心の高いハワイでも、今後多くの方にユメカキを体験、活用していただけることを楽しみにしております。前川先生や日刊サンの皆さまに心から感謝申し上げます」
ユメカキ教育を通して日本と世界の教育変革に貢献するプロジェクト「ユメカキJAPAN」についての詳細はhttps://yumekaki.jpまで。 (取材・文 佐藤リン友紀)
(日刊サン 2019.03.08)