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相撲錦絵の第一人者、木下大門特製平成二十九年夏場所限定絵番付

平成二十七年夏場所限定の絵番付。タテ44×ヨコ58cm、折り畳んでありますが、和紙でできているので裏から霧吹きをかけて軽くアイロンすると、折りジワが消せるので額装もできます。

 

 

波乱含みの熱い、暑い戦いが繰り広げられる大相撲夏場所。名古屋場所は、2000年春場所以来となる4横綱3大関がずらり居並び、前売り券は完売。入場券が全てなくなる“札止め”が15日間続きそうな大フィーバーぶりである。

日刊サンでは、大相撲錦絵の第一人者として活躍している木下大門(きのしただいもん)氏に取材。本場所を見に行かなければ買えない特製絵番付を「ハワイの相撲ファンのために!」と、特別プレゼントしてくれることになった。

 

大相撲錦絵の第一人者として活躍している木下大門(きのしただいもん)氏

「子どもの頃から錦絵が好きでした。イラストレーターの仕事をしていたのですが、40年ほど前に北京で木版画の工房を見て感動し、なんとか日本でも江戸時代の錦絵を復活させたいと思い定めました」       

 

先場所全勝優勝で連覇を狙う横綱白鵬。自身の1036勝の通算勝ち星を積み上げ、歴代1位の魁皇1047勝を追い抜くことができるのか? 歴代最多勝利とともに、白鵬がリスペクトしているのは、元横綱・千代の富士(昨年死去)が残した歴代2位の通算1045勝だ。場所前には千代の富士が親方を務めていた九重部屋に出稽古に訪れるなど、恩返しをしたい気持ちは強い。

「さすが、最短の9勝で歴代2位の記録を塗り替えました。白鵬は10年前のこの名古屋場所で、初めて横綱を務めましたしね。白鵬の横綱昇進が決まったあと、ハワイ場所があったんですが、僕はそれについて行ったんですよ。ハワイではいろんな人に良くしてもらいました」  

と、木下さん。

「白鵬の横綱土俵入りの姿の錦絵を制作するためです。両腕を広げ、せり上がらんとする心技体みなぎった、新横綱の益荒男(ますらお)ぶりを描きたかった。真正面からの姿をしっかり見たくて、ホノルルの会場では正面に座らせてもらいました」

 

絶滅していた錦絵を、江戸時代の手法そのままに再現。

木下さんは明治時代に絶滅してしまった錦絵を、江戸時代の手法そのままに現代に甦らせた功労者だ。今の両国国技館が完成した時から、日本大相撲協会お墨付きの絵師として30年以上、筆を持っている。  

作品は、歴代横綱の肖像や、国技館の茶屋風景、千代の富士と小錦の大一番、両国五人大男など。昨年は、稀勢の里の横綱昇進を祝う錦絵が制作された。その作品は、先週までイタリアで開催されていたヴェネチアビエンナーレにも出品。国宝級の宮殿一館を展示空間として使い、1500年続く神事でもある“相撲”を、木下さんとフランス人写真家のコラボで表現し、イタリア国内外から絶賛された。

「錦絵は絵師が描いて、彫り師が表裏を掘って、摺り師が摺る。錦のように色を重ねるので、錦絵というわけです。桜の一枚板を使った版木は、最低5枚くらいは彫ります」  

紙も上等な福井の越前和紙を使って摺る。だから1作品創るのに150万円くらい費用がかかるのだという。

 

「肉筆画も描きます。これは竹の筆。ヴェネチアの作品展では、春夏秋冬の四神獣を描きました。力士の姿は、実際の取り組みをカメラなどで撮影したのを参考にしています。錦絵にも心技体がみなぎっていなくてはなりません」

 

大人気、売り切れ続出の絵番付は、アニメのセル画がヒント、木下さんが独創。

「1枚ずつ摺る錦絵は高価になってしまいますが、もっと気軽にもっと身近に相撲錦絵を楽しんで欲しくて、平成5年から場所ごとに絵番付を作り、本場所限定で販売してきました」

“番付”とは、大相撲で10ある階級・リーグのことだ。横綱、大関、関脇、小結、前頭、この上位5つの階級をまとめて幕内と呼ぶ。その次に来るのが十両で、幕内と十両の力士のみが“関取”と呼ばれ、幕下以下(幕下、三段目、序二段、序ノ口)は“力士養成員”と呼ばれ、一人前の力士としては扱われない。  

横綱から序ノ口までの力士の数は600人前後。待遇は天国と地獄ほどの差だ。お相撲さんといえば大銀杏(おおいちょう)と呼ばれるちょんまげをイメージするが、大銀杏を結えるのは十両以上だけ。十両になると月額で100万円以上の給料が支給されたり、付き人や個室が与えられたりする。十両以下は、所属する相撲部屋に住み込みで、基本無給。1日も早く関取に出世すべく、稽古に励むのだ。

「絵番付に登場するのは、幕内力士42人と、行司、呼び出しです。これを本物の版木で制作すると莫大な費用がかかるので、僕は試行錯誤の末、アニメを制作する時のセル画の技法を使って、錦絵風にすることを考案したんです」  

セル画は透明シートに描かれる絵。体や化粧まわしなど、パーツごとに描いておけば、重ねるだけで力士一体の絵を完成することができる。 「体型は、“東”に番付される関取は右向き、“西”の関取は左向きの2種類を用意します。今場所、前頭3枚目の遠藤は、入幕当初はザンバラ髪姿でした。今は描き変えて大銀杏を結った姿です」

 

「絵番付は、アニメでしていたセル画の技法で制作しています。これなら着せ替え人形のように、化粧まわしが変えられるでしょう。力士の体型が変わったら、作り直しますけどね」

 

表情や体型だけでなく、絵番付は化粧まわしにもご注目!

体が大きくなった関取や、大関の高安など胸毛が濃くなった姿なども随時更新していくのだという。面白い!

「今場所は横綱稀勢の里が人気マンガ“北斗の拳”のキャラクターの化粧まわしをつけますからね、それを絵番付にも描きました」  

土俵入りで稀勢の里の露払いを務める松鳳山(しょうほうざん・前頭10)と、太刀持ちの輝(かがやき・前頭4)も北斗の拳だ。

「赤い地色の化粧まわしなので、他の関取の色合いとかぶらないよう調節したりもしました」  

稀勢の里はケガで残念ながら途中休場してしまったが。

「関取たちは講演会などから新しい化粧まわしを贈られるので、その都度スケッチしておくんです」  

今場所、木下さんが驚いたのが、関脇に昇進した御嶽海(みたけうみ)の化粧まわしだ。

「御嶽海は長野県出身なんですがね、同じく長野県出身の画家、草間彌生の水玉ドット柄の化粧まわしを、長野の農協が贈ったんですよ。ふつう化粧まわしは、強くて凛々しくて豪壮な柄にするものですが、白地に赤い水玉は可愛らしいというかねえ」  

だから御嶽海の絵番付も水玉ドット。浅黒くてキン肉マンみたいな御嶽海が付けると、本場所でどんな反応があるのか楽しみだ。

「長野県人は相撲好きが多いですからね。大相撲史上最強力士と言われる、江戸時代の雷電(らいでん)は信濃の国長野出身ですから筋金入りです。毎場所バスを連ねて大相撲観戦にみえますよ。御嶽海は初日、稀勢の里を破って金星を挙げたからますます盛り上がるんじゃないですか」  

最近の大相撲人気は乙女な女子たちにも広がり、“スー女”といわれる相撲女子も急上昇。平成生まれの大関高安や、同じく若手の宇良(うら・前頭4)の、牛若丸のようなアクロバティックな飛び技や、阿武咲(おうのしょう・前頭6)のスピード感あふれる立会に、スー女たちは胸キュンしている。

「宇良は横綱からも初金星を上げています。先日もNHKでスー女の特集をしていて、番組の中で若い女の子の部屋を訪ねたら、僕の絵番付が壁に貼ってあったんですね。そうしたら取材スタッフが、このポスターは? って聞いたんですよ。思わず、ポスターじゃなくて絵番付ですよって、画面にツッコミを入れましたけどね(笑)」   

見どころ満載の特製絵番付、木下さんはなんと、ハワイの相撲好きに夏場所限定の絵番付をプレゼントしてくれるという。日刊サンが場所中は毎日、大相撲の記事を掲載していることを伝えると、

「高見山や小錦など、ハワイ出身の力士が大相撲の国際化に貢献してくれましたよね。またハワイ場所が復活したら、僕も行きたいです。どうぞハワイの相撲好きの皆さんによろしくお伝えください」

 

(取材・文 奥山夏実)

 

《平成二十九年夏場所限定絵番付、抽選で10名様にプレゼント》

◆締め切り 2017年7月24日(月)

[email protected]まで、Eメールでご応募ください。 

※当選された方にのみご連絡をいたします。ハワイの日刊サンオフィスに受け取りに来られる方のみご応募ください。