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【インタビュー輝く人】小説家・アーティスト 沙真〜Sachika〜さん

Bynikkansan

5月 25, 2013

幼い頃から物語を書き、絵を描き、写真を撮っていた沙真さんは、18歳 の時に初の小説『私は一本の木に恋をした」を刊行。その作品は、福岡主要書店べストセラー第 1位に7週連続で輝き、後に日本のテレビ局でドラ マ化され、話題を呼ぶ。写真展を開催したり、地元である福岡県の伝統工 芸を中心にしたブランドを立ち上げ、積極的にデザインを発表したりする など、小説家・アーテイストとして活躍する中で共通する永遠のテーマは 自然。人は自然に守られている、だから守っていきたいという想いを様々な形で発信する、輝く人。

ライター:みなみようこ

 

 

人は自然の一部。
私たちは自然から守られている、だから守っていきたい。

 

大きな壁を乗り越えて18歳の時に小説を出版

子どもの頃から、書くことが好きでした。 小学校時代から書いていたのですが、当時は小説を書こうというのではなく、自分の 中で生まれて来た物語を趣味で書いてい るという感じでした。物語がふと降りてくる という感覚です。ハワイにいる時もそうですが、自然の中に身を置いた時や人との出会いの中で、突然浮かんでくるのです。

 

最初に出した本 「私は一本の木に恋をし た」は、沖縄県にある竹富島の桟橋で生ま れた小説です。これは、中学生の少女が、通学路にある謎の森に興味を持ち、その森で 出会った不思議な一本の木に恋をするという物語です。自然を壊される話ですが、そ の中には「終わりではなく始まり」ということや 「信じる心の難しさと簡単さの紙ー重な部分」などキーワードがあるラブファンタジーです。

 

この物語を書く前、高校2年生の時に私 のことを可愛がってくれていた大好きな祖父の死で初めて身近な人が亡くなるという体験をしました。姿、形がないということはこんなにも悲しいことなのかと心底から言葉には表せない大きなショックを受けまし た。

 

またその当時は同世代の自殺が相次い で起こっていて、私たちは何を求めて生きているのか、一体何を信じていったらいい のだろうとたくさんの疑問が渦を巻き始め たことが、私の中で大きな壁となり2ヶ月間くらい学校に足が向かなくなりました。

 

学校に行けず、外にも出ずにいた私が唯 一行けた場所が、幼少の頃から通い続けていた竹富島です。悩んでいた私に 「何故悩んでいるの?」 「どうしたの?」などと問うことは一切なく、 「今日の風は気持ちがいいね。」 「花々が喜んでいるよ。」と自然に話し かけてくれました。

 

ある日私が幼少の時から大好きだった西桟橋で潮風を感じながら寝転んでいると、知り合いでも友達でもない旅人たちがたわいもない話をしながら三線に笑い声を乗せて夕日を見ていたんで す。広い海と大きな空に包まれながらその 様子を見ていて、あぁ私は何を考えていた んだろうと思い、す一っと何もかも洗い流してくれるようなそんな気持ちになりました。

 

その時に物語が降りてきました。 家に引きこもっていた私に、母が「昔から書くことが好きだったよね?気分転換に何か書いてみたら?」と言ったんです。そのひと言から、自分でも分からないうちにスイッチが入ったのか、考えることなく一気に書き始めました。

 

そして不思議と物語を書き終えた頃には学校に行けるようになっていました。母にはありがとうと伝えたいです。 今思えば、自分の中に閉まってあった想い を言葉やネガティブなものとは違う形で原稿用紙にぶつけたのかもしれません。

 

その 物語が「私は一本の木に恋をした」です。 竹富島は、島全体が呼吸しているよう な自然と島の人々が一体となった島です。 大きな風を小さな風に分けるようにと石や木が置かれ、風の通る道があったりするこ の島に初めて行った小学生の時、幼いながら衝撃を受けました。

 

竹富は口承で伝え続 けられた様々な物語が民謡と踊りで残され ているなど、失われてはいけない大切なも のが詰まった島です。私は未知に溢れた竹富島に惹かれました。そして今、アロハスピリチャルに包まれながら自然の中に秘めら れた物語のある、どこか竹富と似ているハワイにも導かれたのかもしれないと感じています。

 

こうした中で生まれた小説ですが、この 物語を書いた時、私の中に 「小説」という文 字はどこにもありませんでした。実は、書いている時の事をあまり覚えていないのです。 自分を立て直すことに一生懸命だったのかもしれません。物語を書くことにより、それ が心の救いになっていたかと思います。

 

壁にぶつかってから生まれた物語ですが、そこには沢山の人の支えや今までの小 さな気づきと出逢いの積み重ねから、私の 心の中に謎の森ができ、物語を綴ることが できたのだと感じています。終わりではなく、始まりなのだと誰かに対する想いより、 自分がそれを忘れたくないという想いをフ ァンタジーの世界で包み込んだのではないかと今となっては思います。

 

世界を旅したから感じるハワイの魅力

子どもの頃は、物語を書くよりも絵を描くことの方が好きでした。その時は、デザイナーになりたいとは思っていませんでし た。小学生の時から写真を撮っていたの で、写真家になりたいと思ったり、動物が好きだったので、動物関係の仕事もいいなと思ったりしていました。

 

父がデザイナーということもあって、デザインの仕事の関係で幼い頃からいろい ろな所へ行っていました。ほとんど記憶にない場所もありますが、ハワイ、ヨ ー ロッパ、韓国、中国などのアジアや、日本でも、 北海道から沖縄までほぼ全国に行きまし た。特に沖縄の竹富島など八重山諸島は30数回訪れています。

 

当時は全く実感がなかったのですが、 今となっては、子どもながらにそれぞれの国の違いや抱えているものを感じとってい たような気がします。 今はハワイに来ることが特に多くなっています。きっかけは、大学の卒業旅行に友人と来た時で、小さい頃に感じていたもの とは違ったハワイの魅力を感じたのです。

 

自然の壮大さや観光地として毎日賑やかで ありながらも守られているスピリチュアルな部分を感じました。 その時にペレの物語に出会って、物語の 中に男の人が木に変えられてしまうというシーンがあることを知ったのですが、私の書いた小説「私は一本の木に恋をした」は、一本の木の男の子に少女が恋をしていく話なので、それと重なったんです。

 

何かあるかもしれないと感じて、ハワイのことを学んでいきたいという気持ちが芽生え、ハワイに来るようになりました。ハワイに通ううちに、風の吹き方も場所によって違って、昔はそれぞれの士地で風に名前がついていたということを知ったりして、ますます興味を持つようになりました。

 

竹富島も風にはひとつひとつ名前がついていて呼 び名があると教わったことがあり、自分 の好きなところには似ているところがあ るのかなと感じています。 私の小説の中には風の精が出てくる のですが、それは、自分の知らないとこる でその風の精に助けられたり、守られていたりするというメッセージで書いたも のです。ハワイも風だったり、突然降ってくる雨だったり、ここではマナと呼ばれている風や花、木などいろいろな形になって自分は自然に守られているのではないかと思います。