嗅覚 ―香りを感じるメカニズム
私たちは鼻から入った香りをどうやって感じ、嗅ぎ分けているのでしょうか?
図を見ながら学んでみましょう。
①まず、空気中に散らばっている揮発性の物質が鼻から鼻腔の奥に入ります。
②鼻腔の上の粘膜にある嗅細胞がそれを受け取り、電気信号に変換します。
③電気信号は神経に伝わり、さらに1つ目の中枢「嗅球」へ伝わります。
④嗅球から、前梨状皮質、扁桃体、視床下部、大脳皮質嗅覚野(眼窩前頭皮質)など、脳の各部分へ次々と情報が伝わります。
⑤脳が、現在使われている嗅覚受容体の種類を識別します。
⑥匂いを感じている現在状況と、過去に学習した記憶とを照合し、香りが認識されます。
ヒトの嗅覚器官の構造
嗅覚の役割
安全を確認する
嗅覚は、自分よりも離れたところから受け取る感覚のため、匂いを発しているものが自分にとって安全かどうかを判断する役割も担っています。安全確認の身近な例として、冷蔵庫の中にある少し古くなった食べ物がまだ食べられるかどうか、匂いを嗅いでみるということがあります。
危険を察知する
ガスの匂いや物が焼ける匂いなど、身に危険が及ぶ可能性のあるものの匂いを認識することで、危険を察知するという役割もあります。
目に見えないものの様子をうかがう
私たちは嗅覚を使い、遠くの様子をうかがったり、見えないものを探したり、季節や天気の移り変わりなど、とらえどころのないものを知ろうとすることがあります。これが転じて、周囲の雰囲気や物事の流れ、予兆について、「◯◯の匂いがする」「◯◯は臭い」など、嗅覚に関わる表現が使われることがあります。
Memo
「鼻が慣れる」嗅覚疲労
同じ匂いをずっと嗅ぎ続けていると、鼻が慣れてその匂いが感じられなくなります。これは嗅覚疲労といい、嗅覚の感度が一時的に低下する現象です。嗅覚は、聴覚や触覚など、ほかの感覚と比べて疲労しやすい(慣れやすい)感覚。1種類の匂いを嗅ぎ続けると、わずか数分間で鼻が慣れてしまいます。しかし不思議なことに、その状態でもほかの種類の匂いの感度は低下せず。感じ取ることができます。