■ひな祭りの食べ物
菱餅
《色》
幕末の1853年に刊行された江戸風俗記「守貞漫稿 (もりさだまんこう)」に「ひな祭りの菱餅は3枚、上下が緑で中が白、菱形の台にのせて供える」と記されていることから、この頃の菱餅は緑と白の2色だったことが伺えます。現代は、赤、白、緑の3色が一般的で、それぞれの色には意味があります。3色合わせて「雪が溶け、草が芽生え、花が咲く」という意味も含まれています。
【赤】 解毒作用があるため、厄祓いや健康を象徴するクチナシの実で着色されています。桃の花や紅花を表しています。
【白】清浄さ、または残雪を表しています。血圧を下げる効果のある菱の実を入れることもあります。
【緑】 初めはハハコグサの餅でしたが、次第に増血効果のあるヨモギの餅になっていきました。春先に生えるヨモギの新芽を使い、汚れを祓うという意味もあります。江戸時代、江戸にはヨモギが少なかったため、青粉で色をつけていました。
《形》
菱餅の形の由来には、いくつかの説があります。
●正月、宮中でおせち料理の1つとして食べられる菱葩餅(ひしはなびらもち)が起源。
●元々の形は三角だったが、子孫繁栄が連想される菱の繁殖力の高さにちなんで菱形になった。 ●菱の実を食べ、千年生きたという仙人伝説にちなんだ。
●室町時代、足利家には、正月に紅白の菱形餅を食べる習慣があったが、これが宮中に取り入れられ、草餅と重ねて菱餅になった。
●小笠原氏の家紋である三蓋菱(さんがいびし)をかたどったもの。
●心臓をかたどったもの。 菱の実 菱は、古代から日本の池や沼・湖に自生している水草で、果実は食用とされていました。固く、とげがある果実の形から、「菱形」という形の呼び名が生まれました。
《菱の実》
菱は、古代から日本の池や沼・湖に自生している水草で、果実は食用とされていました。固く、とげがある果実の形から、「菱形」という形の呼び名が生まれました。
ひなあられ
ひなあられの由来は、「ひなの国見せ」という風習です。平安時代、貴族階級の子女たちが、川や野原に人形を持ち出し、春の景色を見せたという風習で、ひなあられは、そのときに食べるスナックのようなものでした。元々は菱餅を砕いて揚げたものと言われています。
ひなあられは、関東では、お米に圧力をかけて一気に減圧し、弾けさせて作る「ポン菓子」「ドン菓子」に砂糖で味付けした菓子のことをいい、また関西では、餅を揚げたものに、塩、砂糖、醤油などで味付けした菓子のことをいいます。
白酒
中国では、桃の花びらを酒に漬けた「桃花酒」を飲むと、健康、若さを保ち、邪気を払うとされてきました。江戸時代に入ると、桃花酒の代わりに、日本酒のにごり酒「白酒」が使われるようになりました。
ちらし寿司
平安時代から、桃の節句には「なれ鮨」に、エビや菜の花をのせたものが食べられており、これが現代のちらし寿司の原型と言われています。ちらし寿司の具材にも意味があり、エビは「腰が曲がるまで長生きする」、レンコンは「先を見通す」、豆は「健康でマメに働く」といった意味があります。
蛤(はまぐり)の吸物
蛤の貝殻は、ちょうつがいになる部分が個体によって異なるため、始めから対だったもののみ、互いに合わせることができます。生涯、一人の相手と添い遂げるという理想的な夫婦の象徴とされています。