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日本の山岳信仰とハワイの山の神話

ハワイの山と神話

ハレアカラ山

ハレアカラ山の標高2,969 m地点から見た景色

標高3,055m(10,023ft)のハレアカラ山はマウイ島の東側にあり、島のどこからでもその堂々とした姿を仰ぐことができます。休火山で、最後に噴火したのは1790年頃と言われています。ハレアカラ山はハワイ語で「太陽の家」を意味しますが、この名前はハレアカラを舞台にしたマウイの神話のエピソードから来ています。

 

神話「太陽とマウイ」  

ある日、半神半人のマウイはカパ作りの名手である母のヒナアケアヒからこんな頼みごとをされました。「カパ作りの時は布を太陽に晒して乾かす必要があるが、太陽が天空を走り抜けるのでいつも十分に乾かすことができない。だからお前が太陽を捕まえておいてくれないか」  

 

そこでマウイはハレアカラへ行き、頂上のカルデラ(凹み)に住む祖母、マフイエに相談しました。目が見えないマフイエは、太陽が昇ると同時に鳴く雄鶏の声を合図に、毎朝焼いたバナナを太陽に捧げていて、太陽のことをよく知っていました。マフイエはマウイに太陽を捕まえるための縄を用意させ、手斧を渡し、カルデラの近くにあるウィリウィリの木陰に隠れて太陽を待つように言いました。

 

早朝、雄鶏が鳴いて太陽が昇った時、マウイは縄を投げて太陽を捕まえました。ウィリウィリの木の根に縄を結び、手斧を持って太陽と戦いました。人々に十分な光を与えず、足早に駆け抜ける太陽を自分勝手だと罰したのです。  

 

マウイは太陽に、2本の足のうち強い方の1本を傷つけ、これからは弱い方の足を使って空を渡り、人々に光を十分に与えることを約束させました。

 

 

マウナケア山

冬のマウナケア山

ハワイ島の北に位置するマウナケア山は、標高4,205m(13,803 ft)の休火山です。最後に噴火したのは約4,500年前と言われています。休火山になっています。マウナケアはハワイ語で白い山という意味があり、冬、山頂に雪が降ることが名前の由来です。ハワイ神話では、マウナケアにはポリアフという美しい雪の女神が住んでいるとされています。

 

ポリアフは四姉妹のうちの1柱で、姉妹神として霧の女神リリノエ、湖の女神ワイアウ、ハレアカラ山の雪の女神カホウポカネの3柱がいます。マウナケア山には、ポリアフにまつわるハワイ神話があります。

 

神話「ポリアフとアイウォヒクプア」

ある時、美しい雪の女神ポリアフは王族のアイウォヒクプアに出逢い、2人は恋に落ちました。アイウォヒクプアはポリアフを彼の故郷であるカウアイ島へ連れ帰ります。しかしポリアフは、アイウォヒクプアは既にマウイ島の王女、ヒナイカマラマと婚約していたことを知ってしまいます。

 

ポリアフはアイウォヒクプアの元を去り、アイウォヒクプアとヒナイカマラマが抱擁するたびに冷気が襲うという呪いをかけてしまいます。これが元で、ヒナイカマラマはアイウォヒクプアから去って行ったと言います。

 

Pele and Poli’ahu, by Dietrich Varez

 

神話「ポリアフとペレ」  

美しい雪の女神ポリアフは、マウナケアの東の山腹で人間たちと一緒に暮らしていました。ある日、ホールアというハワイのソリで人間たちと一緒に滑って遊んでいたら、この辺では見たことのない美人が現れてホールア滑りに参加し、ポリアフに勝負を挑んできました。

 

美人の挑戦者はホールアを持っておらず、ポリアフが不利になるようなソリを1台借りました。最初の競争で、ポリアフは挑戦者を負かしました。挑戦者はポリアフに互いのホールアを交換しようと持ちかけ、ポリアフはこれに応じて再び競争し、勝利を収めました。  

 

3度目の競争で、挑戦者はポリアフの前に溶岩流を流して邪魔をしながら「私は火山の女神ペレである」と身分を明かしました。ポリアフはペレの溶岩攻撃を恐れ、山頂へ逃げて行きました。山頂で落ち着いたポリアフは、溶岩に雪をぶつけて凍らせた上で島の南端に閉じ込めてしまいました。この時、ハワイ島北部にあるラウパホエホエの溶岩台地が生まれました。  

 

今日、ペレはキラウエア山とマウナロア山のあるハワイ島の南半分を支配し、マウナケアのある島の北半分はポリアフが支配しています。

 

 

 

パリ・ハイウェイと豚肉

ホノルルのダウンタウンから島の北東、カネオヘに抜ける道「パリ・ハイウェイ」。夜に車に豚肉を積んでパリ・ハイウェイを走ると、故障や事故が起きる…そんな伝説があります。コオラウ山脈を越える山道の途中に「ヌアヌ・パリ」という断崖があり、そこはかつてカメハメハ1世がハワイ統一を成し遂げた最後の戦場だったのです。

 

古代ハワイでは、豚肉は男性のみが食べられるものとされていました。凄惨な戦場で命を落とした戦士たちの霊が豚肉に乗り移り、豚肉を持ってパリを越えようとする人に祟るのでは?とも言われています。また、豚の神「カマプアア」が火の神である「ペレ」と仲が悪く、この場所に豚肉を近づけることでトラブルになる、という説もあります。

 

 

 

<参考URL> 2019年8月27日閲覧

・Encyclopedia of Shinto “Mountain Beliefs and Practices”http://eos.kokugakuin.ac.jp/modules/xwords/category.php?categoryID=26 

・Ancient Civilizations “10a. Japanese Religion and Spirituality” <http://www.ushistory.org/civ/10a.asp> 

・Discovery Channel 「なぜ日本人が山に対して夢を抱くか」<https://www.discoverychannel.jp/0000044977/>

・FUJIYAMA NAVI 「富士山を知ろう|富士山の歴史」<https://www.fujiyama-navi.jp/entries/kP72p> 

・山歩きアラカルト「山岳信仰」< http://www5e.biglobe.ne.jp/yamamosa/5sinkou.htm> 

・Wikipedia「山岳信仰」<https://ja.m.wikipedia.org/wiki/山岳信仰> 

・画像出典:Public domain、Pixabay、Shtterstock、Wikipedia など

 

 

(日刊サン 2019.08.31)