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日本のしきたり特集(春・夏編)

Bynikkansan

5月 7, 2015

 

意外と知らない「ジューン・ブライド」の意味

 

「ジューン・ブライド(June Bride)」とは、6月の花嫁、6月の結婚を表す言葉。欧米では、6月に結婚すると生涯幸せな結婚生活がおくれるという言い伝えがあります。では、なぜ日本でもこの習慣が広まったのでしょうか?日本でジューン・ブライドが有名になったのは、それほど昔のことではありません。ヨーロッパの6月は最も気候の良い時期ですが、日本は梅雨の真っ最中。雨が続き、蒸し暑くて湿気も多い時期なので、挙式を避ける人が多く、日本では結婚式の少ない月でした。売り上げの下がる6月をなんとかしようとして、ブライダル業界が戦略として取り入れたのがヨーロッパの「ジューン・ブライド」だったのです。ちなみに、日本で最初にジューン・ブライドを取り入れたのは、ホテルオークラだったという説が有力。1967年ごろ、ホールで結婚式を挙げてもらうための宣伝文句として提案したようです。(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/tuiseki/342/)

 

●日本の婚姻形態の変遷 

今は、結婚すると夫婦でそのまま生活を始めますが、結婚の形態は時代によって異なっていたことをご存知でしょうか?平安時代の貴族社会では、「婿入り婚」が一般的でした。男性は意中の女性の両親から許可を得てから、妻方の家で祝いの儀式が執り行われ、夫が妻方の家に通い続けます。しばらくこの「通い婚」を続けたのちに、妻が夫の家に移って一緒に暮すよるになります。次に登場したのが「足入れ婚」です。婚姻の儀を夫方の家で行ったのち、妻はいったん実家に戻ります。夫は妻方の家に通い、しばらくしてから妻が夫の家に移りました。戦国時代になると、妻が最初から夫の家で暮らす「嫁入婚」が主流となります。夫方の家で祝言をあげ、妻となる女性を親戚や近所の人たちに紹介し、新しい生活が始まるのです。これが庶民にも広まり、現在のような結婚の形態に発展しました。

 

⌈梅雨⌋

暦の上では立春から135日目にあたる6月11日か12日が「入梅」で、そこから30日間を「梅雨」といいます。しかし、実際に雨が降る時期は一定せず、5月下旬から始まることもあれば、雨が降らない空梅雨も稀にあります。梅の実が黄色く熟すころに雨が降り続くので「梅雨」と呼ばれています。雨続きで太陽が恋しくなる時期ですが、梅雨がないと作物の実りがないうえに、夏の水不足や干ばつを引き起こすこともあります。梅雨時に雨が少ないと、稲が開花結実しにくいので、日本人の主食である米の収穫を脅かす可能性があります。そのため、かつては雨乞いの目的で農業神(トシの神)の祭礼が盛んに行われていました。6月の異称「水無月」には、日本人が豊作を願う思いが込められているのです。

 

●五月雨(さみだれ)  

現在の暦では、梅雨時に降る雨のことをさす。「さ」は神に捧げる稲のことで、「みだれ」は「水垂れ」から雨を意味するといわれています。まさに田植えの季節に降る雨です。 「梅雨」と言うとうっとうしさがあるので、詩歌では五月雨が好んで使われます。

 

●さつき闇  

五月雨の降るころ、曇りがちで昼でも暗く、夜は月も見えない闇になることを「さつき闇」と言います。旧暦の梅雨は現在の5月にあたるため、「さつき」という名称が使われています。梅雨の厚い雲に覆われた空のため、夜は漆黒の闇となっていたのです。

 

●虎が雨  

旧暦5月28日は、かたき討ちで有名な曽我兄弟が討たれた日。兄十郎祐成の愛人で、大磯の遊女、虎御前が流す涙が雨になったという言い伝えがあります。毎年この日は雨になることが多く、命日にちなんでこう呼ばれるようになりました。

 

●海霧(うみぎり)  

海上や沿岸部に発生する霧のこと。冬にも発生しますが、春ごろから増え、6月が一番多くなります。特に北海道方面では、水温が低いために南風に反応して霧が発生しやすくなります。塩害や海難事故の原因ともなるのが海霧です。「海霧」は「じり」、「かいむ」とも読みます。

 

●白南風(しろはえ)  

梅雨が明けて空が明るく晴れ渡ると、白い雲が空にあらわれ、暑い夏が始まります。吹く風は明るく輝くように感じられることから、この時期の季節風は「白南風(しろはえ)」と呼ばれています。これに対して、梅雨の黒い雲の下で吹く風を「黒南風(くろはえ)」といいます。

 

参考:『面白くてためになる! 日本のしきたり』 永田美穂  

『おうちで楽しむ日本の行事』 広田千悦子

『365日「今日は何の日か?」事典』 カルチャーブックス編集部編

(日刊サン 2015.03.27)