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多肉植物とサボテン – 多彩な色や形を楽しむ

Bynikkansan

6月 9, 2018

皆さまは「多肉女子」という言葉をご存知でしょうか。多肉植物がブームの日本では、愛好家の女性たちが「多肉女子」と呼ばれています。ハワイにも愛好家が多く、ファーマーズマーケットやホームセンターなどでは多彩な多肉植物が見られます。お家に鉢植えなどを置いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな身近な多肉植物ですが、種類の多さや性質、さまざまな形や色、模様など、意外なほど多彩で奥深いことに驚かされます。今回は、多肉植物にちょっと詳しくなれる豆知識をご紹介しましょう。

 

ΨΨΨ多肉植物とはΨΨΨ

多肉植物とは、厚い葉、茎、根の内部にある柔組織(じゅうそしき)と呼ばれる部分に水を貯め、砂漠などの極度に乾燥した環境に長期間耐えることのできる植物のことです。多肉化する部分は、植物全体、葉、茎など、種によって異なります。約1万種類もあると言われている多肉植物は、特定の科や属の植物群を指すわけではなく、約50の科に分散し、明確な区分がされていません。例えばキク科では、そのごく一部の数十種類が多肉植物に分類されています。

 

 

ΨΨΨ乾燥地帯に適した性質ΨΨΨ

 

アリゾナ州の多肉植物の木

 

「クチクラ層」で水分の蒸発を防ぐ  多肉植物の多くはクチクラ層と呼ばれる膜で覆われており、その膜が水分を蒸発しにくくしています。クチクラとは、表皮を構成する細胞が外側に分泌することで生じる丈夫な膜のことで、人間を含む哺乳類の毛や、昆虫、卵の表面など、多くの動植物が持つものです。植物のクチクラ層は透明な膜で、主成分は蝋(ろう)。特に多肉植物は発達したクチクラ層を持つため、葉などに独特の艶があるのです。

 

独特の経路で水分の消費を抑える  また、日中は気孔を閉じ、夜間になると気孔を開けて二酸化炭素を取り込む、CAMという独特の経路を持っています。これは、砂漠などの水分が慢性的に不足しており、昼夜の温度差が大きい環境に適応したものと考えられています。  通常、植物は昼に気孔を開けて二酸化炭素を取り込みますが、砂漠のような環境では、同時に大量の水分を失ってしまいます。一方で、CAMを持つ植物は、涼しい夜間に気孔を開けて二酸化炭素を取り込み、昼は気孔を閉じることで水分の消費を最小限に抑えているのです。

 

豆知識

ラン(蘭)は多肉植物との境界線が曖昧

ラン科の植物の多くは「バルブ」と呼ばれる、茎が肥大した貯水器官を持っています。植物学的には多肉植物ですが、「ラン」としてカテゴリーが確立している園芸界では、多肉植物として扱われることは滅多にありません。

 

多肉化したハーブやブドウ

ウリ、サツマイモ、トケイソウなど、さまざまな種類の植物には多肉化バージョンのものがあります。例えばシソ科のプレクトランサスという植物は多肉化したハーブで、葉からよい香りがします。実をつける多肉化したブドウなどもあります。

 

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ΨΨΨ多肉植物の代表サボテンΨΨΨ

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サボテンと多肉植物は別のものと思われがちですが、サボテンも多肉植物の1つです。5000種類以上もあるため、園芸家の間では他の多肉植物と区別されています。観葉植物として、立派なとげの形を楽しむ強刺類、形を楽しむ有星類や牡丹類、美しい花を楽しむ花サボテンなど、品種によってさまざまな楽しみ方があります。

 

ΨΨΨいろいろなサボテンΨΨΨ

 

ΨΨΨ刺を楽しむ 種類

エキノカクタス サボテンの代表と言われている種類。その多くはボールのような形をしています。

コピアポア 灰黒色の強剛な刺がある「黒王丸」が代表格。

ネオポルテリア 柔らかい刺が特徴。

フェロカクタス 太く長い刺があり、刺の色は赤、紫、黄、褐色などいろいろ。

ステノカクタス 稜(りょう)と呼ばれる、直射日光に耐えられるよう日陰を作り浴びる光量を調節する凹凸面が特徴的。

「稜」のあるサボテン

ΨΨΨ形を楽しむ 種類

アストロフィツム

 

アストロフィツムの1つ、鸞鳳(ランポウ)玉

「有星類」とも呼ばれ、表面に小さな星のような斑点が散らばっています。大まかに、兜系、ランポウ玉系、ズイホウ玉系、般若系の4種があります。

アズテキューム この種類は成長が遅いことで知られています。長い年月を経て子株が生まれるので、群生したものは高値で取引きされます。

アリオカルプス、ロゼオカクタス 稜(りょう)と呼ばれる、直射日光に耐えられるよう日陰を作り浴びる光量を調節する凹凸面が特徴的。

ユーベルマニア ざらざらした表面を持ち、くし状やたてがみ状に並んだ刺が特徴。

ツルビニカルプス 表面は灰白色で、ねじれのある刺をつけます。栽培も容易で扱いやすい種類です。

ロホホラ 株は饅頭のような楕円形で、柔らかく弾力があり、白い毛のような刺が生えます。

ウチワサボテン

扁平ウチワ、球状ウチワ、棒状ウチワの3種類があります。耐寒性があり、鉢植えだけでなく庭植えにも向いています。 ☆エキノケレウス 花サボテンの中でも、特に美しい花を咲かせます。ムラサキタイヨウ(紫太陽)という種類は、紫がかったピンクの刺がグラデーション状につきます。

エピテランサ 丸く小さな子株を群生しやすい種類。時間をかけて群生株を作り楽しむ愛好家が多いです。

スルコレブチア 小ぶりで球体の株に大きな花を咲かせます。刺は触っても痛くありません。

ペレキフォラ 5cm前後の球状で、松ぼっくりのような見た目です。頭頂部に濃いピンクの花が咲きます。

マミラリア

400以上の種類があり、形や刺の特徴も様々です。小型のものが多く、柔らかい羽毛状の刺をつける品種などがあります。

 

ΨΨΨ花を楽しむ 種類

 

エキノプシス ラッパ状で牡丹のような大輪の花を咲かせます。

エリオカクタス、ノトカクタス 丈夫で栽培しやすくよく花を咲かせるので、花サボテンの初心者に向いています。

コリファンタ この種類は特に日光を好み、毎年黄色やピンクなどの花を咲かせます。

パロディア 黄色や赤のメタリックで力強い質感の花を咲かせます。

メロカクタス 球形花座サボテンのひとつ。開花年齢に達すると、頭頂部に刺と線毛の生えた花座がつくられ、その中から花を咲かせます。

レブチア 株は小型ですが、沢山の花を連続して咲かせます。刺は柔らかく、触っても痛くありません。 ☆ロビビア 大きな花を咲かせ、色も豊富な花サボテン。

 

ΨΨΨ変わった 色や形を楽しむ 種類

 

群生種 時間をかけて子株を群生させ、ボールが積まれたようなかわいい形を楽しむ種類です。

綴化(せっか)種 綴化種は変異種の総称で、化石や鉱石、オブジェ、爬虫類などに似たユニークな形をしています。「綴化」の度合いが強いほどユニークな姿になります。

斑入り ところどころの葉緑素が薄くなり、独特の模様が作られます。美しい斑の入ったものは高値で取引きされます。

モンスト 「石化」「獅子化」とも呼ばれ、あちらこちらから現れる生長点が、石のような見た目を作ります。モンスターのように見えるため「モンストローサ」とも呼ばれます。

 

ΨΨΨサボテンの鑑賞以外の使い道

 

ウチワサボテンの果実、トゥナ

食用  身近なところでヒモサボテン属のドラゴンフルーツ、またウチワサボテン属のトゥナという実などが果物として食べられます。また、ノパルと呼ばれるウチワサボテンの若い茎節は、野菜として料理などで使われます。ミネラルやビタミンを豊富に含むノパルは、メキシコでは昔から栄養価の高い食物として珍重されてきました。また、糖尿病、二日酔い、便秘、日焼けによるシミ予防などの民間薬としても使われています。

 

宗教儀式  乾燥させたペヨーテを噛んだり、煎じて飲んだりすると幻覚作用や高揚感を得られます。アメリカ・インディアンの一部の部族は、ペヨーテ・ミーティングと呼ばれる儀式の際に使います。夜から明け方にかけて行われる儀式では、呪術師がペヨーテを切り分け、水を飲みながら食べたり、お茶にして飲まれたりします。

 

 

レイン・スティック

 

楽器  南米のチリやペルーでは、柱サボテンの木状の芯でレイン・スティックという楽器が作られます。空洞のある芯にサボテンの刺を突き刺し、空洞に多くの小石を入れたもので、傾けると小石が刺に当たり、雨のような音が出ます。

建築材やランプシェード  アルゼンチン北部のウマウアカでは、サボテンの芯を建築材やランプシェードに加工して使用しています。

 

柱サボテンの芯

フェンス  メキシコ南部のオアハカ州では、成長した柱サボテンをフェンスとして使用しています。

蓄音機の針  「ソーン針」と呼ばれる蓄音器の針には柱サボテンの刺が使われています。鉄の針ほどレコードを傷めず、竹の針よりすり減りにくいという特長があります。

 

鑑賞用、食用、生薬にもなる万能植物、アロエ

アロエは、ツルボラン亜科アロエ属の多肉植物の総称です。

500以上の種類があり、南アフリカからアラビア半島まで広く分布します。特に、アフリカ大陸南部とマダガスカル島に多く見られます。アロエ属で最も大きくなる品種はアロエ・バーベラエ。高さは18mにもなります。花茎は三叉に分かれ、ピンク色の花をつけます。最も小さい品種はアロエ・ディスコイングシーで、成長しても数センチの大きさにしかなりません。 昔は「ろかい」と呼ばれていた  アロエが日本に伝来したのは鎌倉時代と言われており、江戸時代には薬用として広く使われるようになりました。昔の日本では、アロエの「ロエ」を「蘆薈」という漢字にし、漢字の読みがなの「ろかい」と呼ばれていました。琉球方言では、中国風の発音で「どぅぐゎい」と言いました。

 

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ΨΨΨ代表的なアロエの種類ΨΨΨ

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アロエベラ 葉肉が食用として使われます。葉は長く、中心から成長していき、成長に伴って外側が枯れていきます。花は黄色で、寒さに弱い性質です。ヨーグルトに入れたり、刺身で食べられたりします。

キダチアロエ 「木立ち」という名は、茎が伸びて立ち上がりながら枝になり、成長に伴って多数に分かれることから来ています。暖かい場所では、冬に赤みがかったオレンジ色の花を咲かせます。葉の外皮は苦いですが、内部にあるゼリー質の葉肉が食用になります。キダチアロエの葉肉には健胃、便秘改善効果があると言われています。外皮を除いた葉を患部に貼ることで、傷や火傷の治療にも使われます。ドイツの薬用植物評価委員会「コミッションE」は、アロエの葉の柔組織にある粘性の部分は、痛み、火傷の外用治療に有効であると示唆しています。

 

キダチアロエ

アロエノビリス 「不夜城」とも呼ばれるアロエノビリスは、緑の葉の縁に明るい黄色の鋭い刺をつけます。中心から茎が伸び、はたきのような形の赤い花を咲かせます。 ☆アロエサポナリア やや薄い色の緑の葉には鱗のような白い斑があり、和名は「明鱗錦(めいりんにしき)」といいます。また、厚みのある葉をすり潰して水を加えると泡立つため、「シャボンアロエ」とも呼ばれます。

 

その他、ハワイで見かける多肉植物

エケベリア

ロゼット状の花型の葉が特徴です。大きさは、品種によって5〜40cmと幅があります。丈夫で育てやすく、園芸の初心者に向いている植物です。

エレガンス 丸みがあり、バラの花のような形をしています。種類によって、花を咲かせたり、紅葉したりといった変化を楽しむことができます。

ギョクセン(玉扇)

小さな積み木を並べたような形の厚い葉が特徴です。切ったように真っ直ぐな葉先は、土に埋まったままも光合成ができるよう、光を取り込むレンズの働きをしています。

リトプス

コーヒー豆のような2つに別れた葉形が特徴です。緑、茶、赤、青、黄色など実にさまざまな色があり、また模様も変化に富んでいます。1年に1回、外側の古い葉が枯れ、中から脱皮をするように新しい葉が展開します。

 

 

豆知識

カピオラニ・コミュニティ・カレッジの サボテンガーデン

ファーマーズマーケットでおなじみのカピオラニ・コミュニティ・カレッジ。そこの駐車場の脇、多くのサボテンの種類が植えられている一角をご存知ですか? 1988年、退役軍人で第100歩兵大隊、442人のRCTの元メン。

バーらが、カレッジ内の未使用のスペースを何か利用できないかと考え、サボテンや多肉植物のガーデンにする許可を得ました。カタログで様々な種子や苗を取り寄せ、小さな庭を完成させました。造園と植物の手入れにモリス・テラオカ氏、サム・キャンプ氏ほか多くのボランティアたちが尽力し、庭は徐々に広げられました。テラオカ氏は現在もガーデンの維持に携わっています。

https://www.kapiolani.hawaii.edu

(日刊サン 2018.06.09)