他の人に意思表示をするための身振り手振りのことをジェスチャー(gesture)と言います。ここアメリカでは、話言葉と一緒に用いられることが多いですが、読者の皆さまは、普段の会話の中でどんなジェスチャーを使っておられるでしょうか。また、外国へ旅行へ行くと、その土地の人々の身振り手振りや表情の作り方の違いに驚くことはありませんか?
ブルガリアでは首を縦に振ると「いいえ」、横に振ると「はい」を意味するなど、同じ身振りのジェスチャーでも国によって意味が全く異なることがあります。今回のエキストラ特集では、皆さまの日常生活や旅行の際の豆知識として、世界の国々のジェスチャーをご紹介したいと思います。ぜひ、身振り手振りをしながら読んでみてください。
?さまざまなジェスチャー?
【手・指】
ポジティブ系
*相手の手にツバを吐きかける
キクユ族など、東アフリカの部族の間で使われます。「あなたによいことがありますように」と祈ったり、相手に対して「魔除け」をほどこすという意味になります。
*人差し指と中指を交差させる
「fingers crossed」と呼ばれ、主にアメリカとイギリスで、相手の幸運を祈る時に使われます。
*手のひらを上に向け、指をつまむように合わせる
トルコでは5本指を合わせて「かわいい」、メキシコでは3〜5本の指を合わせて「混んでいる」ことを表します。
*両手を挙げ、頭上で丸を作る
日本では「OK」を表しますが、他の国では使われないようです。日本では、学校のテストの正解に◯印を付けることから、この動作が生まれたのだとか。
*口の高さで両手を握り合わせる
アメリカやヨーロッパの一部の国では「おめでとう」を表します。
*自分の拳と相手の拳を合わせる
アメリカでは友情を表す挨拶として使われます。発祥はジャマイカと言われています。
*口に指先を当てた後、上に向けて指を開く
頰をつねるのと同様、イタリアでは「おいしい」という表現。
*親指と人差し指を広げて銃を持つようにする動作
メキシコでは「金持ち」という意味。
ニュートラル系・意思表示系
*手の平をもう片方の手の人差し指のあたりに交差するように打ち付ける
フランスで「じゃあ、行きましょうか?」の意味。
*相手に向けて手を合わせる
日本では相手に「お願い」するときに手を合わせる仕草をしますが、フランスでも同じシチュエーションで同じような仕草をします。また、インドやタイでは、挨拶として両手を合わせ軽く頭を下げます。
*自分の胸のあたりを指で指す
アメリカでは「自分」を指す時に使います。手を軽く胸に当てることもあります。
*手のひらを下に向け、上下に振る
韓国では、「さようなら」「ここにいるよ」などを伝えるジェスチャー。
*右手を握り、立てた親指を口元に持っていく
インドでは「飲む」を表す仕草で、「喉が渇いた」や「何か飲みますか」という表現になります。
*手招き
日本では手のひらを下にして手招きをしますが、アメリカでは「向こうへ行ってくれ」の意味になってしまいます。アメリカでは、手のひらを上にし、手首を軽く曲げて手前に動かす
「手招き」が一般的です。また、オーストラリアでは、手のひらを上にして、人差し指で人を呼ぶと失礼に当たります。
*広げた右手を裏表に数回回す
インドでは「持っていない」を表します。
*手のひらを上に向け、両腕を広げる
アメリカやヨーロッパの一部の国では「知らない」「よくわからない」という意思表示になります。
*甲を上にした手を左右に動かす
ドイツでは「大体そのくらい」という意味になります。
*拳を鼻の前に持ってきて、手首側に向かって2、3回ひねる
フランスでは「酔っている」を意味します。
*手のひらを下に向け、裏表に何回かひねる
フランスでは「まあまあ」「あんまり」など微妙な状態を表現します。
*両手を組み、親指を回す
フランスでは「退屈」という意味の仕草。
*人差し指をクイクイと曲げる
フィリピンでは犬を呼ぶ動作で、シンガポールでは「死」を意味します。
*お酒を飲む時、口元を隠す
韓国では、年長者や親の前でお酒などを飲む時、手で口元を隠して飲みます。
*親指と小指を立て、口の前で円を描く
スペインでは「喉が渇いている」「何か飲みますか」という意味の動作。酒瓶を持って飲む仕草を表しています。
*両手でピースサインを作り、人差し指と中指をクイクイと曲げる
このジェスチャーは「エアクォート」と言います。自分が話していることをクォーテーション=「”」で囲うという意味です。話していることを強調したり、皮肉る時などに使います。
*親指と人差し指を擦り合わせる
フランスでは「お金」「値段が高い」を意味します。
ネガティブ系
*手を顔の前で振る
日本では、手を顔の前で振ると「違います」「いいえ、大丈夫です」などを意味しますが、イタリアでは「頭、大丈夫?」という意味になってしまいます。
*片手の拳を挙げて反対の手で腕を叩く
日本では何かを達成した時や喜びを表す意味で、片手の拳を挙げて反対の手で腕を叩くジェスチャーをすることがあります。フランスやブラジルでは侮辱を意味する仕草に。
*こぶしを突き上げる
多くの国では勝利の喜びや闘志を表現しますが、パキスタンでは「くたばれ」という意味になってしまいます。
*手のひらを下に向け、顎の下に持ってくる
ドイツでは「うんざり」という意味になります。
*ピースサイン
イギリスやアメリカでは「平和」や「勝利」を表します。しかし、ギリシャでは「くたばれ」を意味するサインになってしまいます。
*手の甲を見せながらのピースサイン
オーストラリア、イギリス、アイルランドなどでは、相手を侮辱する時に使うサイン。
*親指を立てるポーズ
アメリカなどでは素晴らしいを意味しますが、イランでは「最大級の侮辱」という真逆の表現になってしまいます。
*人差し指と親指で◯を作る
アメリカでは「OK」という意味ですが、フランスでは「ゼロ」を意味し、侮辱のサインになってしまいます。
*親指を中指の先で弾いて「パチン」と鳴らす
アメリカでは何かを思いついた時などに使いますが、イギリスでは、無関心、嘲笑といった意味になります。
*相手に手のひらを向けて前後や左右に動かす
日本では、相手に「まあまあ」と言ってなだめたり「もう結構です
という意味で使われますが、ギリシャでは「お前の顔に糞を塗り付ける」という侮辱の動作になってしまいます。
*相手を指差し、その指を上下に振る
アメリカでは親が子どもなどに「行儀が悪い」と注意する時に使います。
*親指と他の4本の指を開閉させる
フランスで「黙れ」という意味のジェスチャー。
*親指・小指を立てる
バングラデシュでは「お手洗いに行く」を意味します。しかしインドでは「あなたに対して怒っている
という表現になります。
*手の平を相手に向かって出す
アメリカでは”Talk to the hand”と言いながらこの動作をすると「話をやめてください」「あなたの話は聞きたくない」という意思表示になります。
*手を広げて、肩の後ろへ放り投げる
フランスでは「どうでもいい」「勝手にしてください」などのニュアンスがあります。
*手を垂直にし、手首を上下に動かす
日本では、人の前を通る際に「ちょっとすみません
という意味がありますが、イタリアでは「近づいたら殴るぞ」という意味になってしまいます。
*肘を曲げながら腰に手を当てる
インドやインドネシアでは、怒りを表していると思われることがあります。
*椅子に座って足を組む
エジプトでは、足を組んでイスに座るのは相手に敵意を示す表現。
*足の裏を見せる
エジプト、サウジアラビア、シンガポール、タイなどでは、相手に対する侮辱を意味してしまいます。座るときなども、相手に足の裏が見えないように座ります。
「YES」と「NO」
*顎をそらす
ギリシャ、トルコ、イタリア南部では「Yes」。
*首をかしげる
イスラエルでは「Yes」。
*片方の眉をつり上げる
フィリピンでは「Yes」。
*頭を左右に振る
ブルガリアや、インド・パキスタンの一部地域では「Yes」。
*首を後ろにそらし、目を大きく見開く
ギリシャでは「No」。
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*口の中で「チッ」と舌打ちをする
インドでは「No」。
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数字の数え方
*アメリカでは、1が人差し指、2が中指、3が薬指、4が小指、5が親指というパターンが一般的です。
*中国には、地方によって数え方にもさまざまなパターンがありますが、ここでは一般的な数え方をご紹介しましょう。まず、1から5までの数え方は日本のそれと同じですが、6以降からは違う動きになります。6は親指と小指を立てる動作、7は人差し指と中指を立て、親指、薬指、小指で丸を作る動作で表します。8は人差し指と親指を立て、9は人差し指を立てて親指に付け、10は人差し指と中指でクロスを作ります。
*フィリピンでは、1は小指、2は薬指、3は中指、4は人差し指、5は親指と、日本とは逆の順序に立てながら数えます。
*ヨーロッパでは、日本の多くの地域と同様、1は親指、2は人差し指、3は中指、4は薬指、5は小指の順に立てながら数えます。
*インド・バングラデシュ
手のひらを開き、親指を使って、他の指に各3本ずつある関節を指します。まず小指の1番下の関節から上に向かって「1、2、3」となります。薬指に移り、1番下の関節から4、5、6となります。同じように中指、人差し指の関節も数えていきます。4本の指に3つずつある関節で、「12」まで数えることができます。
<その他の仕草や習慣>
*イスラム教・ヒンズー教圏では、物を渡したり人に触るのは右手で行います。トイレの後に左手で拭くことから、左手は「不浄の手
とみなされています。
*中国、タイ、フィリピンでは、出された料理はお皿に少し残すのが礼儀とされていますが、これは「十分に食べさせてもらった」ことを表しています。残さず食べると「足りなかった」という意思表示になることがあります。
番外編
ドイツですると罰金、最悪の場合は逮捕になるかもしれないジェスチャー
・親指と人差し指で丸を作る
「お尻の穴」という意味。警官に向かってこのジェスチャーをすると、750€(約10万円)の罰金。
・人差し指で頭を軽く叩く
通称「鳥のサイン(Jemandem einen Vogel zeigen)」。「頭の中に鳥でも飼ってるの?」=「気でも狂ってるの?」という意味になります。警官に向かってした場合、1,000~1,500€(約13~20万円)の罰金。
・手の平を自分の方に向け、顔の前で左右に動かす
こちらは「ワイパージェスチャー」と呼ばれるもので、「ワイパーで前が見えてないのでは?」=「バカじゃないの?」という意味になってしまいます。こちらも警官に向かってすると、350€ (約4
7,000円)の罰金となります。
・世界共通で侮辱を表す中指立て
ドイツで警官に向けて中指を立てた場合は、なんと4000€(約53万円)の罰金が課せられます。
・五本指を揃え、腕をまっすぐ張って挙手
ナチス式の敬礼を思わせるため、ドイツではタブーになっています。状況によっては逮捕されることもあるのだとか。ドイツで挙手をする際は、人差し指だけを立てて腕を挙げます。
・左手を使うとダメな国
イスラム教・ヒンズー教圏では、物を渡したり人に触るのは右手で行います。トイレの後に左手で拭くことから、左手は「不浄の手」とみなされています。
(日刊サン 2018.09.08)