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ビーズの世界

Bynikkansan

10月 12, 2019

日本のビーズ

勾玉(まがたま)

【縄文時代から作られていた勾玉】  

勾玉は縄文時代から作られている日本独自のビーズです。青森県の三内丸山遺跡からは、円盤型の翡翠の真ん中に穴が空いた5,500年前の翡翠のビーズが出土しており、勾玉の原型と推測されています。  

 

縄文時代は鉄器がなかったため、先を尖らせた細い竹に砂をつけたもので翡翠に穴を空けていました。新潟県の糸魚川沿いにある縄文遺跡、長者原遺跡からは、細竹を使った勾玉の工房跡が見つかっています。縄文時代、糸魚川沿いに住んでいた職人たちは、石器と勾玉を作り、勾玉は北海道や九州を含む全国各地に出荷されていました。

 

【全盛期は古墳時代】  

弥生時代になると、糸魚川翡翠の勾玉は朝鮮半島にも輸出されるようになりました。古墳時代は「勾玉ブーム」が全盛期を迎え、特に前期には翡翠やガラス製の勾玉が大量生産されたと言います。  

 

その後、勾玉は急に作られなくなるのですが、日本人が勾玉に興味を失った理由についてはよくわかっていません。奈良時代には、古墳時代や飛鳥時代に作られた勾玉が寺院に納められたり、仏像の装飾に使用されていました。

 

 

トンボ玉

【トンボの複眼が名前の由来】

ビー玉のような模様のついたガラス玉に穴が空いたビーズ、トンボ玉。トンボの複眼に似ていることが名前の由来と言われています。江戸時代は、青地に白の花模様がついたガラス玉が「蜻蛉玉」で、それ以外のものは模様によって「スジ玉」「雁木玉」などと呼ばれていました。6〜10世紀、隋や唐の時代の中国では、火齊珠(かせいしゅ)や玻璃(はり)と呼ばれていました。

 

【弥生時代の遺跡でエジプトからの輸入品が出土】  

とんぼ玉は、紀元前2000年頃の古代エジプトでガラスの溶融加工が発明されて間もなく作られ始めたと言われています。様々な技法のトンボ玉が製造され、中東や西アジアへ広まっていきました。  

 

日本では、佐賀県の吉野ヶ里遺跡から勾玉と一緒にエジプトからの輸入品と思われるトンボ玉が出土していることから、弥生時代には既に外国との交易を通じてトンボ玉が伝わっていたと考えられています。奈良時代にはトンボ玉の製法が伝えられ、国内で生産されてました。

 

正倉院には、トンボ玉の作り方を記した書物やその原料と共に多くのトンボ玉が保管されています。奈良時代から平安時代初期にかけて、トンボ玉は厨子の装飾や数珠に用いられるなど、仏教美術と深い関わりがありました。

 

【江戸時代には長崎で大量生産されるように】  

江戸時代には、南蛮貿易を通じて中国とヨーロッパからガラス技術が伝えられ、長崎で安いコストのとんぼ玉が大量生産されるようになりました。そして、長崎のトンボ玉製造法が江戸で発展した「江戸とんぼ玉」、アイヌ民族との交易用に作られた「アイヌ玉」、奈良時代からの製法で作られた「泉州玉」が一般庶民にも広まり、根付けやかんざしなどの装飾に用いられました。  

 

明治時代、トンボ玉の製法は「奢侈禁止令」によって一旦絶えますが、第二次大戦後、江戸とんぼ玉や外国産のとんぼ玉を参考に復元されました。現在は、炭火を使って手でガラスに彩色する伝統的な手法と、バーナーを使って色のついた工業用ガラスを溶かして作る現代的な手法で生産されています。

 

 

世界のビーズ

アフリカ

キファビーズ

キファビーズは、ガラスの粉を熱して形成し、穴を空けたビーズのことで、再生ガラスを使って作られたトンボ玉の一種です。  

 

 

1949年、フランスの民俗学者レモン・モニがアフリカ北西部にあるモーリタニアのキファ市周辺で発見したことから、キファビーズと呼ばれるようになりました。丸型や楕円形などさまざまな形がありますが、写真のような二等辺三角形がキファビーズの定番の形です。

 

17世紀頃、奴隷貿易を通じてアフリカにヴェネツィアン・グラスをはじめとしたガラスが伝わったものの、ガラス産業は発展しませんでした。そこで、壊れたガラス製品を粉にした後、型に詰めて焼成する技法が考案され、ガラスビーズが作られるようになりました。

 

 

チェコ

チェコビーズ

【かつては国の管理下にあったビーズメーカー】  

チェコで作られたビーズは、まとめてチェコビーズと呼ばれています。色や形は様々ですが、特にナツメ型にカッティングしたガラスを高温で焼成し、表面を軽く溶かしたファイアポリッシュというビーズが有名です。  

 

かつて、チェコは共産主義だったため、ビーズメーカーは国の管理下に置かれていました。そのため、メーカーによる品質の差があまりなく、生産されるビーズの種類や型が似通っていたことから、まとめてチェコビーズと呼ばれるようになったようです。現代では、写真のようにさまざまな色や形のチェコビーズが生産されています。

 

【ボヘミアンビーズ】  

チェコビーズのひとつに、カットガラスで有名なチェコ西部のボヘミア地方で生産されるボヘミアンビーズがあります。ボヘミアンビーズは、木灰を含み、硬くて艶があり、透明感の高い「カリガラス」で作られているのが特徴です。カリガラスに鉛を加えたものがクリスタルガラス(グラス)です。鉛が入るので重量感があり、屈折率が上がるため、カリガラスよりも輝きや透明度があります。

 

 

オーストリア

スワロフスキー

【クリスタルガラスの一種】  

スワロフスキーは、1895年、オーストリアのチロル州でチェコ人のダニエル・スワロフスキーが創業したクリスタルガラスの製造会社。オーストリアを代表するクリスタルガラスとして世界的に有名です。  

 

スワロフスキーガラスは、ガラスの主成分である珪砂、カリウム、ソーダ灰に、酸化鉛を添加して形成されるクリスタルガラスの一種です。クリスタルガラスは、製造時に酸化鉛などが添加されて溶解温度が低くなり、普通のガラスに比べて成形しやすいことが特徴です。同時に透明度と屈折率が高くなり、クリスタル(水晶)のようなガラスになることから、クリスタルガラスと呼ばれるようになりました。

 

【クリスタルガラスより透明で屈折率が高い】

一般的に、クリスタルガラスが含む鉛の量が多くなるほど透明度や屈折率が高くなって見た目が美しく、重さも増すため、叩くと余韻のある澄んだ音がします。  

 

スワロフスキーガラスに含まれる酸化鉛の含有量は、普通のクリスタルガラスが24%ほどであるのに対し、最低でも32%含まれています。そのため、クリスタルガラスよりも見た目が一層美しく、ビーズとして使われるほか、宝石の代わりとして指輪やペンダントに使われたりしています。

 

 

 

イタリア

ヴェネツィアンビーズ

【イタリアのトンボ玉】  

イタリアのヴェネツィアで作られたガラスビーズは、まとめてヴェネツィアンビーズと呼ばれています。直径5ミリ以上の大きなビーズが多く、花柄のガラスを集めてひとつのビーズに成形したもの、金箔が入っているものなどが定番です。  

 

ヴェネツィアンビーズの多くは手作りで、とんぼ玉とほぼ同じ製法で作られます。棒芯には銅線が使われ、離型材は使用されないため、ビーズが出来上がって銅線を抜いた後の穴が透き通っていることが特徴です。

 

【技術流出を防ぐため職人をムラーノ島に移住させる】  

イタリア北東部の港町、ヴェネツィアは、ローマ時代から東西交易の中継点だったため、イスラムのガラス製法が他の地方よりも早く伝えられました。13世紀頃、交易で取引されていたものの中で最も珍重されていたもののひとつ、ガラス製品をヴェネツィアで製作して輸出する計画が立てられました。  

 

しかし、原材料や燃料は産出することができないため、ヴェネチアングラスの類似品が他国で生産されてしまうのではと懸念されていました。そこで、時の為政者がガラス職人、家族、販売者をムラーノ島へ強制的に移住させました。

 

この強制移住は、技術の流出を防ぐためだけでなく、溶解炉が火元になる火事の被害を最小限に抑える目的もあったようです。以来、職人たちは狭いムラーノ島で独自のガラス技術を発展させていき、ガラス食器などとともに質が高く芸術的なビーズが数多く作られ、広い範囲に輸出されました。  

 

特に奴隷貿易のあったアフリカでは当時のヴェネツィアンビーズが多く発見され、骨董品として扱われているものもあります。

 

 

【ミルフィオリビーズ】  

ヴェネツィアンで作られるビーズのひとつにイタリア語で「千の花」という意味のあるミルフィオリ(Millefiori)ビーズがあります。  

 

ミルフィオリビーズは、金太郎飴の要領で模様が入っているガラス棒を切って作ったものです。溶かしたガラス棒を花形に成形し、その表面に別の色のガラスを巻き、さらに花形に成形する、という過程を繰り返すことで模様ができていきます。

 

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【参考URL】 ・株式会社MIYUKI「ビーズ加工の種類」 https://www.miyuki-beads.co.jp/introductionz/processkinds.html ・すずらん工房「Beads Color加工」 http://www.suzuranart.com/beadsinfo/color/beadscolor01.html ・いずもまがたまの里伝承館 https://www.magatama-sato.com ・ビーズやさん「豆知識」http://beadsya.jp/trivia_beads.html ・Wikipedia「ビーズ」https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ビーズ ・画像出典 Public Domain, eBay, Wikipedia, Pixabay, Shtterstock他

 

 

(日刊サン 2019.10.12)