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ビーズの世界

Bynikkansan

10月 12, 2019

ビーズ(bead)の語源は中世ヨーロッパでキリスト教の人々が使ったロザリオの数珠玉を指したアングロサクソン語、「祈る」という意味の“biddan”、または「祈る人」“bede”と言われています。かつての日本では南京玉や数珠玉と呼ばれていました。今回のエキストラ特集では、手芸だけでなく、バッグやクッションカバーなど、私たちの身の回り品にも意外と多く使われている小さなビーズの世界にご案内しましょう。

 

 

ビーズの歴史

世界史

ビーズは、遠い昔から人々に装身具などとして親しまれてきました。イスラエル、アルジェリアの遺跡からは約10万年前の貝殻のビーズが出土しており、これらは人類最古の装飾品と考えられています。紀元前4,500年頃の古代エジプトでは、ファイアンス(陶器)のビーズが大量生産されていました。

 

紀元前2,000年頃の古代インダス文明ではカーネリアンのビーズ製造が盛んに行われ、樽型のビーズなどがメソポタミアに輸出されていました。高い加工技術が必要なマイクロビーズも作られていたようです。  

 

16〜19世紀のヨーロッパで行われていた奴隷貿易では、現代の蒐集家に人気のトレードビーズが、貿易品としてアフリカに渡りました。1900年代始めに大量生産されたビーズは、アンティークビーズ、ビンテージビーズと呼ばれ、こちらもビーズ愛好家の間で人気を集めています。

 

古代エジプトのファイアンス・ビーズとカーネリアンのビーズで作られたネックレス

 

日本史

日本オリジナルのビーズといえば、縄文時代から作られている勾玉です。弥生時代中期からガラス製の勾玉が作られるようになり、装飾品や護符などとして珍重されていました。古墳時代の遺跡や古墳からも多数発掘されており、東大寺の正倉院には、数十万個もの勾玉を含めたガラス玉が保管されています。  

 

大正時代の終わり頃、ヨーロッパのビーズが婦人誌などで紹介されて知られるようになり、1926(大正15)年には日本初のビーズ手芸本『ビーズ手芸全書』が発行されました。その後戦争が始まったため、ビーズ手芸は一旦廃れましたが、戦後の高度経済成長期に徐々に復活していき、やがて女性たちを中心に、定番の趣味のひとつに数えられるようになりました。

 

2000年代始めにはスワロフスキービーズが全盛期を迎え、現在はアンティークビーズや天然石のビーズなど、ひとつずつ違う表情を見せるものが人気のようです。

 

 

ビーズの種類

形や大きさによる分類

直径数ミリほどの大きさで、中空の細いガラス棒を切って作られるガラスビーズ。種のように小さいことからシードビーズと呼ばれています。シードビーズの4大産地は日本、中国、インド、チェコ。日本では、第二次大戦後、アメリカやヨーロッパに比べて人件費が安かったことを活用し、輸出用として大量生産されていました。現代の日本製のシードビーズは、極小で品質が良いものとして世界中のビーズ愛好家から好評を得ています。

 

バンブービーズ

直径2ミリで、長さは1.5〜20ミリ。中空で長さがあるためバンブービーズと呼ばれています。表面にねじれ加工が施されているものはツイストビーズ、穴の中にねじれやメッキ加工が施されているものはシルバーラインと呼ばれています。ツイストビーズにはねじれ加工から生まれる独特の輝きがあり、シルバーラインは内部からガラスを透して見えるメタリックな輝きが特徴です。

 

マクラメビーズ

シードビーズをそのまま大きくしたような形で、直径は約7ミリ。マクラメ編みやヘンプ編みのブレスレットなどによく使われます。

 

スリーカット

表面を3面、もしくはランダムにカットしたもので、カット面の反射による輝きが特徴のビーズ。一般的な大きさは3〜4ミリで、ムーンストーンやラブラドライトなど、シラー効果のある天然石がよくこの形に加工されています。

 

マガ玉

古代の勾玉のように尻尾がすぼまる形ではなく、楕円形のしずく型で穴が一方にかたよって空いているビーズ。シードビーズと同じ2ミリ前後の大きさが一般的です。

 

メタリック加工が施されたマガ玉ビーズ

 

加工方法による分類

オーロラ

偏光性の塗料などを使い、表面に虹色の光彩(オーロラ)をコーティングしたもの。遊色加工とも言い、見る角度によって色合いが変化します。

 

管引き

中空のガラス管を作り、作りたい長さに切った後で断面を研磨したもの。シードビーズや竹ビーズを作るときに用いられる方法です。

 

ギョク

不透明のガラスビーズ。

 

サテン 

表面に透明なダークシルバーのコーティングをして光沢を出したもの。ヘマタイト加工ともいい、ワントーン暗く、渋い色に仕上がります。

 

シェブロン

ガラスを何層にも重ねてカットしたもの。断面は穴を中心に花型の幾何学的な模様で縁取られています。

 

スキ

透明または半透明のガラスビーズ。

 

セイロン

光彩をコーティングした半透明のビーズ。

 

パート・ド・ヴェール

ガラス粉を鋳型に敷き詰め、加熱して成形したもの。アフリカのキファビーズ(後述)はこの技法で作られています。

 

パラジウム

全体にパラジウムメッキを施したもの。パラジウムは、歯医者で施される銀歯やプラチナの割り金として使われる銀色の金属です。

 

中染

中央の穴のみを染めた透明なビーズ。

 

ホットキャスト

溶かしたガラスを鋳型に流し込み、固めて成形したもの。

 

ホワイトハート

白い不透明なガラスの表面に有色で透明のガラスをかけたもの。ガラス層が2層で、穴の周囲が白くなっています。

 

 

本金・外銀

本金は純金のメッキを施したもので、外銀は銀メッキを施したもの。高価な金属を使っているため、プレシャスビーズとも呼ばれます。

 

巻き付け

鉄やステンレスの芯棒にバーナーで溶かしたガラスを巻きつけ、形成したり文様描いたりするもの。芯棒にはガラスをスムーズに取り出すための離型材を塗ります。とんぼ玉を作るときに使用される技法です。

 

メタリック

黒いビーズの表面に玉虫色やガンメタルなど、金属光沢のある光彩をコーティングして焼き付けたもの。

 

ラスター

磨き上げたような艶を出すため、表面に無色の光彩をコーティングしたもの。

 

ロール

熱したガラスを板状に延ばし、芯棒に巻き取って成形されたビーズ。イタリアのミルフィオリビーズ(後述)に用いられる技法。