ハワイに伝わる伝説

チームワーク抜群の 伝説の小人族『メネフネ』の伝説

メネフネ水路

昔、カウアイ島西部で、干ばつによりワイメア川の水がタロイモ水田にうまく流れず、住民は飢饉に苦しんでいました。当時のオラ王は水を引く水路を作ることをメネフネに依頼しました。本来なら何日間もかかってしまう大仕事。メネフネなら一晩で終わらせることができるからです。メネフネは２つの条件を提示しました。１つはメネフネが作業をする夜は、人間や犬、鶏などすべての生き物を静かにさせ、外を出歩かせないこと。もう１つは終了後にメネフネに魚を用意してほしいということでした。作業の翌朝、オラ王は心配しながら出かけて行ってみると、一夜にして立派な石造りの長い水路が完成していたのでした。作業を終えたメネフネたちは全員がオラ王から好物のエビを受け取り、鼻歌を歌いながら山へと帰って行きました。

虹を作ったメネフネ

昔々、ハワイは雨が降った後、空を見上げるとどんよりしていました。そこで、メネフネたちはアヌエヌエ（虹）を作ることを思いつきました。そしてさっそく虹の色の材料を探しにいきました。 彼らが見つけてきたものは、王家の象徴である赤い羽。これは宮殿から調達したものです。さらに鮮やかなオレンジ色のイリマの花、おいしそうな黄色いバナナ、艶やか緑色のシダの葉、美しく青い海の水、そして女王様の紫色のシルクドレス。すばらしい材料がそろいました。そこで登場したのはカフナ（聖職者）です。カフナは集まった材料をコアウッドのボウルに入れてゆっくりかき混ぜました。そして、弓矢に虹色をつけて空へ向かって放ちました。 その後、雨が降ると大きなアヌエヌエ（虹）が空を彩ったのです。メネフネは大喜び。「これで人々は水と雨の大切さを思い、虹の美しさも楽しんでくれることになるだろう」カフナは言いました。 こうしてハワイの空には大きな虹が見られるようになりました。日本と違って6色と言われるのはメネフネが６つの色を集めたからなのですよ。

ハワイの神様とは？

日刊サンで連載中 「アロハが流れる日常」より 2016年9月掲載

万物に魂が宿るという考え方

先日手にした雑誌に、アニミズムについて書かれたものがありました。アニミズムとは万物に霊魂が宿るという考え方のことですが、語源はラテン語のアニマ（＝霊魂）からきています。動植物から無機物に至るまで、この世界の万物に魂が宿るとする信仰を意味します。アニミズムに対して一神教がありますが、一神教は年中過酷な気候にさらされた砂漠の民により作られたと言われています。そのような環境で生きた民族は想像力によって理想を見出す物語型の思考を生み、理想を目指して団結、乱世を生き抜いたと思われます。一方アニミズムの母体となった森は無数の動植物、微生物が互いに連鎖し、生死を繰り返す環境です。そのような複雑な世界に生きた森の民は多くの神々を見出すようになったのかもしれません。ハワイの文化に根付いているのはまさにこのアニミズム。

ハワイアン達は自然界や身の回りの全ての物にはマナ（＝霊力）が宿ると信じ、時には儀式や行いを通じてこのマナを強化することも出来たと言われています。またハワイアンにはアウマクアと呼ばれる祖先神がいます。先祖達はサメ、トカゲ、フクロウ、虹などの様々な動植物、自然現象に姿を変えてこの世に現れ、家族に危機や災難が起きたときに守ってくれると信じられています。またハワイの神話を見ても沢山の神々が、日々の生活を営む至る所に宿っているのが解ります。このようにハワイでは、人々は自然の中に活かされ、恩恵を受け、そしてそこに宿る沢山の神々に守られて生きているということをよく理解していたのだと思います。同時に常に神々が近くに居るわけですから、自分たちの言動は全て神々に見られているという意識もあったのでしょう。 　

言葉にもマナが宿ると考えていた民族ですから、口から発する言葉も神々に届いても恥ずかしくない、美しい言葉を選び、使う。そんな考えもハワイに根付くアロハの精神を大きく育ててきたのです。国や文化が違ってもこのようなアニミズムを理解出来る民族は身の回りの多様性を認め、調和し、対立を避けてきました。また自然を支配するのではなく共生するための知恵も持っています。エコやサステイナブルということが必須となって来ている現代、アニミズムなライフスタイルを見直して実践し、人にも自然にも優しい生き方が出来たらと思います。

参照：https://ja.wikipedia.org/wiki/ハワイ神話、 https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Mythology_of_Hawaii?uselang=ja

※ハワイ神話、伝説には諸説あります。

（日刊サン 2016.11.25）