ハワイでの桜の名所はワヒアワ
日本では桜の季節ですね。2017年は東京が全国でトップを切って3月21日に開花がスタート。続いて3月25日に福岡で開花。東北の開花予想日は4月中旬から後半と予想されています。
春の訪れを知らせる桜ですが、常夏のハワイでも、桜は咲きます。平均開花時期は、毎年1月の最終週から2月上旬にかけて。ローカルの日系人たちは、ここぞとばかりに桜を楽しみます。2000年からは、お花見も本格的に行われるようになりました。たとえば、ワイキキから「お花見トロリー」が期間限定で出るようになり、トロリーに乗りながら桜観賞をすることができるようになりました。さらにワヒアワの本願寺では、毎年、桜祭りが行われます。日系女性たちがエントリーする「ミスチェリーブロッサム(桜の女王)」コンテストのクイーンやプリンセスたちが参加し、カラオケ、太鼓、ダンスなどをして盛り上がります。
ハワイではワヒアワがサクラタウンとして知られています。1950年代にワイピオバレーに住んでいたチョロ・ナカノセさんが沖縄から桜の木を持って来て植えたのが、そのきっかけだと言われています。チョロさんが桜の苗を、ワイメアに住んでいたタスケ寺尾さんにプレゼントし、そのタスケさんが木を育て増やし、コミュニティに売ったりしていたそうです。なので、ワヒアワにある桜の木のほとんどは95%が沖縄の桜。ソメイヨシノなどと比べるとちょっと紫がかっています。残りの5%は、台湾の桜といわれています。
桜が元気に咲くためには、ある程度の寒さが必要です。ワヒアワでは12月頃になると、夜は8℃くらいまで気温が下がるので、桜が育つにはオアフの中では一番適しています。この寒さに加え、雨の多さや標高の高さも綺麗な桜を咲かせる条件なので、ワヒアワはすべてを満たしているのです。
この桜の管理を守っているのが、ワヒアワ日系公民協会のメンバー達。この協会は1953年に発足され、日本の文化を大切に守り継承していこうといろんな活動をしてきましたが、そのメインの活動が、この桜の管理です。代表のジャック・ツジハラさんはアメリカ中を転々として来た日系移民。日本人は、人が困っている時にお互いに助け合う人種。思いやりがあって情深く、優しくて、桜をありがたく観賞するお花見のような文化も、日本人ならではの文化なので、今後もずっと継承していきたいとのこと。
オアフ島の他にも、ハワイ島本願寺の裏のチャーチロウパークに、ワイメアライオンズクラブにより1972年に桜の木が植えられ、今も75本の桜が花を咲かせます。2012年には、新たにワイメア、ワヒアワ、そしてマノアに八丈島からの桜の木が届き、日米友好の一環として植えられました。ワイメアとワヒアワの木は花が咲きましたが、マノアの木は証拠写真を撮る前に、その年の花がすべて散ってしまったというエピソードがあります。
ハワイには、Cherry Alley Committeeという団体もあり、桜を通して日本との交流を深め、日本文化を継承していこうと日々活動しています。昨年の3月には、渋谷区ロータリークラブ、そして高知県牧野ボタニカルガーデンからのドネーションにより、オアフ島ワヒアワのヘレマノプランテーションに約100本の桜の木が新たに植えられました。ハワイと桜の関係はますます強くなっていきそう。ハワイの日系人が、遠い日本に思いを寄せて植えた桜。感謝の気持ちで観賞してみては? (参考文献:The Hawaii Herald)
桜と似ているハワイのフラワーツリーは?
シャワーツリー
まるで桜のように可愛いピンクの花を咲かせて、ひらひら舞い落ちてくるのがシャワーツリー。まるでシャワーのように咲き乱れるのでこの名が付けられました。ピンク、イエロー、オレンジ、レインボーカラーなど色とりどり。レインボーカラーのシャワーツリーは、ホノルル市の花に制定されており、ハワイでは街路樹としてあちこちに咲いています。原産地はインド・インドネシア、マメ科カッシア属の樹木です。注目したいのは、天皇皇后両陛下がハワイ訪問をされた時に自ら植樹された、カピオラニ公園の一角にあるレインボーシャワーツリー。木の根元にはベンチがあり、特別プレートや囲いはありませんが大木でとてもゴージャス。シャワーツリーは、樹高約10m程度の高木で、4月頃から花が咲き始め、11月頃まで咲き続けます。まるでハワイの春の訪れを告げるような、まさにハワイの桜なのです。
ピンクテコマツリー
2月〜3月から咲き出すピンクテコマツリーも、ピンク色で桜のように見える美しい花です。ノウゼンカズラ科タベブイア属の落葉高木で、花が咲いたあとは、インゲンのようなサヤが垂れ下がります。アラモアナ公園や、チャイナタウン、ワヒアワなど、こちらも色々なエリアでみられる花で、シャワーツリーよりも若干、繊細な感じがするお花です。南米原産で、ハワイ、そして沖縄など暖かいところに咲きます。こちらもハワイの日系人には「南洋桜」として知られていて、ハワイの桜とも呼ばれています。
世界の桜事情
オーストラリア
1971年に日本とオーストラリアの友好目的で、カウラという街にジャパニーズガーデンを作ろうと提案。回遊式庭園が、Ken Nakajimaという日本人によってデザインされ、1979年に開園しました。カウラは第二次世界大戦の時に連合軍の捕獲収容所にいた日本兵500人以上が脱走した『カウラ事件』でも知られている場所。多くの日本兵が命を落としましたが、脱走した日本人捕虜に現地の住民が食べ物を振る舞ったというエピソードもあり、2度とこのようなことが起きないよう平和を提唱するためにこの庭園が作られました。オーストラリア国内有数の日本庭園でもあるこのジャパニーズガーデンに桜が植えられており、毎年チェリーブロッサムフェスティバルが開催されています。
ブラジル
日系移民の多いブラジルですから、ハワイと同様、桜の木の種を持ってくる移民が1930年前後から、たくさんいました。サンパウロは海外で一番大きな日本人コミュニティ。南ブラジルのパラナ、アプカラナ、マリンガ、カスカベル、クリティバにも桜の木があり、クリティバのボタニカルガーデンなど、国のあちこちに桜の木があります。有名なのは、サンパウロのカルモ公園の桜。市の東部に暮らす日系人によって70年代に植えられ、4000本の桜の木があるそう。地域によって開花時期が違いますが、サンパウロ一帯では7〜8月に開花します。
カナダ
バンクーバーは桜が有名で、特にクイーンエリザベスパーク、スタンレーパークが人気です。もとはといえば1930年代、神戸市と横浜市がスタンレーパークにある、日系カナダ人戦没者慰霊碑に追悼の意を込めて500本もの桜の木を寄贈したのがきっかけ。トロントのハイパークのソメイヨシノも、1958年に日本政府によってプレゼントされたもので、さらに2001年には日本領事館の桜プロジェクトによって、さらに34本の桜が植えられました。他にも大学のキャンパスや、ナイアガラの滝の近くに桜の木が植えられています。バーリントンのロイヤルボタニカルガーデンでも美しいソメイヨシノを鑑賞することができます。ロイヤルボタニカルガーデンの桜の開花時期は少し遅くて4月後半から5月の1週目にかけてです。
中国
中国では、海の近く、特に北部と南部に桜が咲きます。とくに有名なのは、江蘇省に存在する桜観賞スポット「無錫太湖?頭渚」。ここは3万本以上もの桜の木があり、玉淵潭桜花園、青島中山公園、百万葵園などにも。中国人は日本で桜を見ることに憧れを抱いていて、日本イコール桜というイメージを持っている人たちが多いそうです。
フランス
パリの郊外、パークドソーの公園の中央に100本ほどのピンクの八重桜が植えられています。開花時期は4月中旬から下旬で、多くの人たちが桜の鑑賞に訪れます。
トルコ
2005年にイスタンブールのNezahat Gokyogit Botanical Garden(ナザハット・ゴキョギット・ボタニカルガーデン)に日本の桜がお目見えしました。エルトゥールル号遭難事故から120年、日本とトルコの友好120周年記念として、日本から運ばれた3千本の桜が植樹されました。
ドイツ
ドイツのアルタス ランド オーチャードは桜が名物で観光スポットになっています。最大のドイツのお花見イベントはハンブルグで行われ、チェリーブロッアムアソシエーションという団体が日本文化を伝えるイベントを行います。さらにテレビ朝日のキャンペーンで、ベルリンの壁跡地に桜を植えるプロジェクトがあり、集まった募金でベルリンに9100本の桜が植えられました。そのほか、ライプツィヒのグラッシイ博物館、ハノーファー、ボンのへーア通り、シュヴェツインゲン城、ハンブルグのアルトナ市庁舎、ホーフハイムのウンタートーア広場、オーヴェンのテック城壁、マグデブルクのホルツ通り、ベルヒテスガーデンのクアガーデンなど、ドイツには桜スポットが満載です。
インド
インドでは桜の野生種の一つであるヒマラヤンチェリーが主流です。インドのヒマーチャル・プラデーシュから中国南西部、ビルマなどに見られる。海抜1200〜2400mの高山の森に生えます。サクラ自体もヒマラヤンチェリーも、ヒマラヤ近辺が原産と考えられています。
オランダ
2000年にJWC(Japan Women’s Club)が400本の桜の木を、アムステルビーンという街に寄付。その木は、アムステルダムのAmsterdamse Bos(アムステルダムセ・ボス)という公園に植えられました。なんと一本ずつ名前がつけられており、すべて女性の名前。200本は日本人女性の名前、残りの200本はオランダ人女性の名前が付いているそうです。
ニュージーランド
ニュージーランドには吉野チェリーという桜が存在しています。9月下旬から10月上旬になると、オークランドのあちこちに桜が咲き始めます。ワンツリーヒルまたオークランドドメインといった場所が桜スポットです。
韓国
韓国の桜の歴史は、ソウルのChanggyeonggung Palace(チャンドックン・パレス)にヨシノチェリーを日本人が植え、お花見の文化が紹介されてからだと言われています。桜の開花シーズンには、汝矣島(ヨイド)を訪れる人が平均250万人にも達するほど、ヨイドはソウルで一番人気の桜ストリート。毎年、ここでは桜フェスティバルが開催されます。オリニ大公園(オリニテゴンウォン)徳寿宮(トクスグン)も桜の名所。ソウルを代表する古宮の一つである徳寿宮は、韓国の神秘的な昔の建築物と桜の調和が鑑賞できる場所としても有名です。ソウル大公園(ソウルテゴンウォン)外郭循環道路に沿って約7kmの街路樹に咲き乱れる桜も人気。毎年4月になると「桜の道を歩く大会」が開催されます。ロッテワールドの隣にある石村湖(ソクチョンホス)は1周約2.5kmの湖畔には桜の木がたくさん植えられ、毎年春になるとキレイな桜並木に大変身します。
イギリス
イギリスの桜は、チェリープラムというサクラ類の木と、アーモンドやアプリコットといったバラ科モモ属の木。19世紀後半のビクトリア女王時代に、日本からもロンドンへ桜の木も渡った。グラウステルシャーのバッツフォード植物園、そしてスタフォードシャーにあるキール大学ではイギリスの中でも最大の桜のコレクションを誇っており、その種類は150種類です。
関東風・関西風どちらが好き? 桜餅
桜餅が生まれたのは、江戸向島の長命寺だといわれています。
享保2年(1717年)、長命寺の門番・山本新六が、土手の桜の葉を樽の中で塩漬けにすることを思いつきました。薄い皮で餡を包んだものに塩漬けの桜の葉を巻いて長命寺の門前で売り出したところ、隅田堤に花見にやってくる人に大いに喜ばれたと伝えられています。当時、隅田堤は桜の名所として花見客で大変にぎわっていました。これが江戸における桜餅の始まりです。山本新六が創業した「向島長命寺桜もち」は、老舗として現在も変わらぬ味を伝えています。餅は小麦粉を水で溶き薄焼きしたもの、餡は漉し餡というのが関東風です。
一方、関西風の桜餅は道明寺粉(どうみょうじこ)を蒸して餡を包み、桜の葉をあてたものです。道明寺粉とは、もち米を蒸して乾燥・粗挽きしたもの。大阪の道明寺で作られたことからこの名で呼ばれています。つぶつぶした食感が特徴で、餡は粒餡が基本です。大阪の道明寺は、戦国時代から武士の携帯食として糒(ほしい・もち米を蒸して乾かしたもの)をつくることになり、寺の名前を取って糒のことを道明寺と呼ぶようになったようです。道明寺粉は、お湯や水に浸せばすぐに食べられるので、昔は備蓄用の食糧として重宝されていました。現在はお菓子の材料として使用されています。
関東風・関西風、どちらにも共通しているのは、桜の葉の塩漬けで包まれているということ。桜餅に使用される桜は、柔らかくて毛の少ない大島桜が好まれ、桜餅の葉の約7割が伊豆の松崎町で生産されています。収穫した葉を半年ほど塩漬けにすると、クマリンという芳香成分が生まれ、これが独特の香りをかもし出します。桜餅を包むことで、香りや塩気がついてさらにおいしくなるわけです。桜の葉を食べるかどうかは意見が分かれると思いますが、正解というものはありません。食べ物はそれぞれの好みで食べるのが一番おいしい食べ方。好みと気分で食べ分けてみてはいかがでしょうか?