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サンクスギビングデーの雑学 由来や歴史、七面鳥を食べる理由は……?

Bynikkansan

11月 24, 2019

今年もサンクスギビングデーの季節がやってきました。2019年は 11月28日(木)になります。ホームパーティを開いたり、 友達と会食したりと予定のある方も多いのではないでしょうか? サンクスギビングといえば、別名「ターキー・デー」と呼ばれるほど 七面鳥料理が欠かせません。 今回のエキストラ特集では、サンクスギビングデーの由来や歴史、 七面鳥が欠かせない理由や、大統領が行う「七面鳥の恩赦」の 意味など、知っておくとサンクスギビングデーがもっと楽しくなる 雑学をご紹介しましょう。

 

11月第4木曜日の祝日

 

 サンクスギビングデーはアメリカの祝祭日(National Holiday)のひとつです。行事が始まった17世紀はキリスト教的な行事でしたが、現代は親戚や親しい友人たちが集って食事を共にする、1年で最も大事な家族行事になっています。  日本のお正月のように、サンクスギビングデーの前後はアメリカ中の空港が大混雑。ハイウェイも大渋滞になりますが、当日は家で家族と過ごす人が多いため、あまり混雑しません。毎年、木曜日から日曜日までの4日間を休みにする職場も多いようです。

 

由来と歴史

先住民が入植者に穀物の栽培方法を 教えたのがきっかけ

 アメリカのサンクスギビングの由来は、1620年11月にイギリスからマサチューセッツ州のプリマス植民地へ入植したグループ「ピルグリム・ファーザーズ」が初めての収穫を記念して行ったお祭りと言われています。入植後、イギリスから持ってきた野菜や麦の種を撒いて畑を作ったのですが、土壌に合わず、飢えなどでグループにいた半分の人々が死んでしまいました。そこで、プリマスにいた先住民族のワンパノアグ族が彼らに食糧や物資を提供したり、部族の中でも英語を話せる人が狩りの仕方やトウモロコシなどの穀物の栽培方法を教えました。

 

先住民への感謝を込めた祝宴

 おかげで1621年の秋に食料が収穫できたピルグリム・ファーザーズは、感謝の祝宴に御馳走などを用意し、ワンパノアグ族を招待しました。その時の記録では、宴会は3日間続けられ、参加者は入植者53人に先住民90人だったとされています。祝宴は3日間続けて行われ、料理がなくなると、ワンパノアグの酋長が自分の集落から食料を運ばせました。  この祝宴が現代のアメリカで行われているサンクスギビングの由来になったと考えられています。プリマス植民地で最初に感謝祭が行われたのは1623年。当時は、教会で礼拝を行うなど、神に感謝を捧げる宗教的な意味合いが強いものでした。

 

南北戦争後の国内の融和を図るため 祝日に制定

 18世紀後半にジョージ・ワシントンが初代大統領になると、感謝祭は「大統領宣言」という形をとって不定期に行われるようになりました。19世紀初めには「州知事宣言」の形に代わり、感謝祭の日は州によって異なっていました。19世紀半ば、第16代アメリカ合衆国大統領のエイブラハム・リンカーンが、感謝祭を連邦国家の祝日に制定。1861年から4年間続いた南北戦争の終結後、国家の団結と国民同士の融和を目的として、家族が集うことを奨励したのです。そして、遠方の家族や親戚が集まり、一緒に食事をするという形になりました。

 

入植時のプリマス・プランテーションを再現したテーマパーク

 

 

MEMO

ピルグリム・ファーザーズとは?

 16世紀、イギリスではエリザベス1世がイングランド国教会を立ち上げました。しかし、17世紀にかけて教会の改革を主張する清教徒が勢力を増し、中でも分離派と呼ばれたグループは国教会から分離しようとしていました。しかし弾圧を受けたため、宗教的な自由を求めた清教徒ら合わせて102人は、メイフラワー号に乗船して新大陸のアメリカに渡りました。1620年11月、現在のマサチューセッツ中プリマスに到着したピルグリム・ファーザーズは、キリスト教徒の理想的な社会を作ることを目指し、新しい土地の開拓に励みました。

 

1621年のサンクスギビングの様子を描いた絵 Jennie Augusta Brownscombe, The First Thanksgiving at Plymouth, 1914, Pilgrim Hall Museum, Plymouth, Massachusetts

 

伝統的な食事

スタッフィング、キャセロール、 アップルパイなど

 サンクスギビングの日のメインディッシュは「スタッフィング(stuffing)」または「ドレッシング(dressing)」と呼ばれる、角切りパンを詰めた七面鳥の丸焼きです。七面鳥のイメージが定着しているため、サンクスギビングの日を「七面鳥の日(Turkey Day)」と呼ぶこともあるようです。焼き上がったスタッフィングの七面鳥は、切り分けられ、グレービーソースとクランベリーソースを添えて供されます。  ベジタリアン向けのスタッフィングとして、豆腐や麩で似た食感にした「トーファーキー」なども販売されています。サイドディッシュは、サツマイモ料理やマッシュポテト、いんげんのキャセロール(グラタンに似たもの)など。デザートにはアップルパイやパンプキンパイが食べられます。

 

七面鳥が欠かせない理由

 その理由については諸説ありますが、最も有力なのは先住民のワンパノアグ族が飢えに苦しんでいた入植者、ピルグリム・ファーザーズに野生の七面鳥を分け与えてくれたという説。感謝の気持ちを表すため、その後のサンクスギビングには必ず七面鳥が供されるようになったといいます。

 一方、1622年に発行された『プリマスにおけるピルグリムの日誌』(“A Journal of the Pilgrims at Plymouth”)には、1621年の感謝祭では野鳥や家禽という意味の“wild fowl”が食されたと記録されています。これが七面鳥だったかどうかは定かではありませんが、1651年に成立した『プリマス・プランテーション』(“Of Plymouth Plantation”)には、1621年の秋、入植者たちが七面鳥狩りを行ったことが記録されています。

 他に、入植者のサンクスギビングに招かれたワンパノアグ族の人々が野生の七面鳥を持参したことにちなんでいるという説もあります。アメリカ大陸の中央から東海岸にかけて野生の七面鳥が多く生息しているため、先住民族たちは、七面鳥を捕らえて常食していたようです。

 また、大勢の人が集まるサンクスギビングの食卓では七面鳥が手っ取り早いからという説も。チキンや牛肉を大量に調理するのは時間や手間ががかかりますが、七面鳥なら1羽をそのまま調理すればよいので簡単、というわけですね。

 

 

MEMO

グレイビーソースとは?

 グレイビーソースとは、ビーフやチキンなどの出汁をベースにして作られるソースです。18世紀のイギリスでは、グレイビーソースは基本的なソースでした。作り方は「多少の肉、タマネギ、スパイス類を茶色くなるまで炒め、小麦粉と水を加えて煮込む」というもの。現代のグレイビーソースは、ソテーなどを調理した後のフライパンに残った肉汁を一旦取り出し、ワインやビール、水などを加えて沸騰させ、炒めた小麦粉と取り出した肉汁を足しながら滑らかにしたものが一般的。基本のグレービーソースに牛乳や生クリーム、野菜ジュース、小さく刻んで火を通した肉などを加えるなど、さまざまなバリエーションもあるようです。

 

大統領による七面鳥の恩赦 “Turkey Pardon”

 

ケネディ大統領が暗殺される 4日前のエピソード

 1963年、第35代大統領のジョン・F・ケネディに ”Good Eatin’, Mr. President”というメッセージを首から下げた七面鳥が贈られたものの、ケネディはそれを食べなかったというエピソードがあります。ケネディは、暗殺される4日前の11月18日に重さが25kgもあったその七面鳥を農場に返し、食べずに飼育するよう頼んだとされています。この出来事は、ワシントン・ポスト紙とロサンゼルス・タイムズ紙によって「恩赦」と呼ばれました。

 

レーガン大統領が慣習化

 七面鳥に公式に「恩赦」を出した最初の大統領は、第40代大統領のロナルド・レーガンでした。1980年代半ば、アメリカ政府は、イランに武器を売却して得た収益をニカラグアで反政府戦争を行なっていた反共ゲリラに与えた事件「イラン・コントラ事件」の主要人物に対し、恩赦を与えるかどうかという問題を抱えていました。レーガンは、これについてのマスコミからの質問を逸らすための冗談として、サンクスギビングの七面鳥の恩赦を思い立ったといいます。  1989年、第43代大統領に就任したジョージ・ブッシュは、「七面鳥の恩赦」をホワイトハウスの公式行事の1つに制定しました。ブッシュ元大統領は当初、七面鳥を恩赦する際、「容認する」「生かし続ける」「容赦する」という表現を使いましたが、のちにスピーチライターが「大統領の恩赦」というフレーズを原稿に入れたとされています。以来、毎年大統領に贈られる七面鳥の少なくとも1羽は恩赦されて農場に運ばれ、余生を送るようになりました。

 

サンクスギビングデーに七面鳥を恩赦するレーガン元大統領(1983年)

 

恩赦された七面鳥はその後どこへ?

 恩赦された幸運な七面鳥は、2004年まではバージニア州フェアファックス郡にあるフライパン農場公園に送られていました。 2005〜2009年には、カリフォルニア州のディズニーランド、フロリダ州のウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートに送られ、ディズニーで行われたサンクスギビングデー・パレードでは、恩赦された七面鳥が名誉グランド・マーシャルを務めました。 2010〜2012年にかけては、初代大統領ジョージ・ワシントンの故郷、バージニア州のマウント・バーノンに送られ、観光の目玉になりました。  サンクスギビングデーの前日、ホワイトハウスでは現職大統領が雄の七面鳥を屠殺される危機から「恩赦」する“Turkey Pardon”という行事が行われます。その起源は、1863年のサンクスギビングデーに第16代大統領エイブラハム・リンカーンの息子、タッドが父親に嘆願して行われた七面鳥に対する「寛容」と言われています。七面鳥を大統領へ贈る習慣は、1870年代にロードアイランド州の家禽ディーラー、ホレス・ヴォースが始めました。1913年のサンクスギビングでは、ケンタッキー州からもう一羽七面鳥が送られて、ロードアイランド州の七面鳥と席を同じくしたといいます。当時、「七面鳥の恩赦」はホワイトハウスの伝統ではあるものの、公式行事ではありませんでした。1948年12月には、第33代大統領ハリー・S・トルーマンが2羽の七面鳥を受け入れ、クリスマス・ディナーに「重宝する」と述べ、恩赦はされませんでした。

 

恩赦される七面鳥はどうやって選ばれる?

 「恩赦用」の七面鳥は、普通の食用七面鳥と同じ方法で飼育されます。食用七面鳥の雌の場合、通常は生後14週間で売りに出され、加工時の体重は15.5ポンド(7kg)になります。一方、恩赦セレモニー用の七面鳥は生後21週間の雄で、ホワイトハウスに到着するまで、体重は少なくとも45ポンド(20kg)まで増やされます。そのため、恩赦用の七面鳥には強化トウモロコシや大豆などの穀物の多い餌が与えられます。そして50〜80羽の群れの中から、セレモニーで起こるカメラのフラッシュや騒音、多くの人々の前でも落ち着いていられる七面鳥10〜20羽が選ばれます。最終的に選ばれるのは2羽。その名前は、ホワイトハウスのスタッフの子どもたちが提案した中から選ばれます。その後、2羽はワシントンD.C.に運ばれ、ホワイトハウスでのセレモニーの前に、5つ星ホテルのウィラード・インターコンチネンタル・ワシントンホテルに滞在します。その費用は全米七面鳥連盟が負担するのだそうです。

2018年、トランプ大統領に恩赦された七面鳥のピーズ

 

寿命

 野生の七面鳥の寿命は短くても5年と言われていますが、意図的に体重を増やされた恩赦用の七面鳥は、心臓病や呼吸不全、関節損傷などの肥満に関する疾患を患うため、以前は恩赦の後1年以内に死ぬことが多かったそうです。しかし最近は飼育環境などの改善で、2年以上、時には3年以上生きる七面鳥もいるようです。

 

MEMO

アメリカ先住民にとっての感謝祭

 先住民たちは、サンクスギビングデーを先祖の土地や土地がヨーロッパからの入植者に奪われた「大量虐殺の始まりの日」としています。1969年から1971年まで続いた「アルカトラズ島占拠事件」では、先住民たち数百人がサンクスギビングデーに合わせてアルカトラズ島に上陸しました。マサチューセッツ中のワンパノアグ族を中心に、ニューイングランドの先住民部族が結成する「ニューイングランド・アメリカインディアン連合」は、ピルグリム・ファーザーズが始めたサンクスギビングの日に「全米哀悼の日」としてデモンストレーションを行い、喪服姿で虐殺された先祖達に祈りを捧げます。翌日金曜日は「アメリカインディアン遺産記念日」として、アメリカ先住民の存在意義を高めるための祝祭行事を行い、伝統文化や言語を再認識する日になっています。  先述したサンクスギビングデーの由来になったワンパノアグ族とピルグリム・ファーザーズの交流譚ですが、入植者と先住民双方のイメージを良くするため事実を大袈裟に伝えているのではないか、という向きもあります。

 

 

Happy Thanksgiving Day – 恒例行事

メイシーズ・サンクスギビングデー・パレード

 ニューヨーク市のサンクスギビングデーには、メイシーズ主催のサンクスギビングデー・パレードが恒例行事になっています。1924年からほぼ毎年行われており、デトロイトの「アメリカズ・サンクスギビング・パレード」と肩を並べて、アメリカで2番目に古くから行なわれているサンクスギビングのパレードです。  最も古いものはフィラデルフィアの「6abc・ダンキンドーナツ・サンクスギビングデー・パレード」で、1920年に始りました。メイシーズのパレードは、毎年、サンクスギビングデーの午前9時から3時間行なわれます。トレードマークはフロート車に飾られる巨大な風船。風船は、ハローキティやスーパーマン、おさるのジョージなど、年代わりで様々なキャラクターをテーマにしています。

メイシーズ・サンクスギビングデー・パレード(1979年)

 

ブラック・フライデーとサイバー・マンデー

 ブラックフライデーとは、1年に1度、大型量販店やデパートが行う大売り出し日のことです。日本のお正月の初売りのようなものでしょうか。今年のブラックフライデーは11月29日金曜日。ハワイでも毎年、アラモアナセンターやワイケレショッピングセンターなどで行われ、前日の夕方から列に並ぶ人や、この日のショッピングのために日本から来る人もいるほど。感謝祭が終わると、クリスマスまで1ヶ月弱。人々がクリスマスプレゼントを購入し始める時期でもあるため、クリスマス・セール前の特別セールとして消費を促し、売り上げを上げるという目的があります。

 「ブラック・フライデー」という呼び方は、小売店の年間通算収支がこの金曜日を境に黒字になるといわれているのが由来です。サンクスギビングデーの週明けの月曜日は「サイバーマンデー」。クリスマス・プレゼントをネット購入する人を対象に、特別セールが行われます。ブラックフライデーからクリスマスまでの1ヶ月間に小売業の年間売り上げの半分が集中するといわれており、商品を作る各会社もこの期間に合うように新製品を発売します。

 

Ververidis Vasilis / Shutterstock.com

 

 

(日刊サン 2019.11.23)


【参考URL】 ・The Plymouth Colony Archive Project http://www.histarch.illinois.edu/plymouth/mourt1.html ・Betty C. Monkman. “Pardoning The Thanksgiving Turkey“ https://www.whitehousehistory.org/pardoning-the-thanksgiving-turkey ・National Museum of The American Indian “American Indian Perspectives on Thanksgiving“ https://americanindian.si.edu/sites/1/files/pdf/education/thanksgiving_poster.pdf ・Wikipedia “Thanksgiving” https://en.wikipedia.org/wiki/Thanksgiving ・Wikipedia “Black Friday” https://en.wikipedia.org/wiki/Black_Friday_(shopping) ・画像出典 Public Domain, Wikipedia, Pixabay, Shutterstock 他