穀物とは、植物の種子で澱粉質を主体とする食材の総称です。日本人が食べる最もポピュラーな穀物は精白されたお米ですが、主食にしやすい穀物は他にも多くの種類があります。今回は、穀物の種類や由来、含まれる栄養成分、穀物を使ったレシピなどをご紹介していこうと思います。
主な穀物の種類
キヌア Quinoa <アカザ科・アカザ属> 368 kcal /100g
原産地は、ペルーのチチカカ湖周辺で、紀元前5千年にはインカ帝国で栽培されていたという記録があります。1993年、NASAが完全食に近い穀物として宇宙食に指定したことから広く知られるようになりました。栄養成分を白米と比較すると、カルシウムは10倍、マグネシウムは7倍、鉄分は8倍、リンは7倍、食物繊維は8倍含まれ、必須アミノ酸9種も含んでいます。白く平たい円形をしており、加熱すると白いヒゲのような胚芽が出てきます。糠のような独特の香りです。
チアシード Chia Seed <シソ科・アキギリ属> 534kcal/100g
原産地はメキシコ中南部からグアテマラにかけての地域です。16世紀にアステカ族が広く栽培していたという記録が残っています。良質のタンパク質が20%、良質の脂質が34%、食物繊維が25%含まれています。また、人間の体内では作られない必須脂肪酸、オメガ3脂肪酸とαリノレン酸を豊富に含んでいます。浸水すると10倍以上の水分を含み、種子の周りに半透明の柔らかい膜が張られて食べやすくなります。
黒米 Black Kerneled Rice <イネ科・イネ属> 346kcal/100g
中国・東南アジアが原産地で、古代米(玄米の中でも色や香りのあるもの)の一種です。中国では「薬米」として薬膳料理にも使われています。栄養成分を白米と比較すると、ビタミンB1は5倍、ビタミンB2は4倍、カルシウムは2倍、ナイアシンは9倍、食物繊維は6倍となっています。また、黒い種皮には、ポリフェノールの一種、アントシアニンを含んでいます。
赤米 Red Kerneled Rice <イネ科・イネ属> 353kcal/100g
こちらも古代米の一種です。縄文中期、朝鮮半島から日本へ稲作が伝来しましたが、その時の米は赤米だったと言われています。赤飯の起源は赤米を蒸したものといわれ、魔除けの赤色をした食物として珍重されていました。栄養成分を白米と比較すると、ビタミンB1は5倍、ビタミンEは7.5倍、鉄分は8倍、食物繊維は8倍となっています。また、赤褐色の種皮にはポリフェノールの一種、タンニンを含みます。
蕎麦 Buckwheat <タデ科・ソバ属> 344kcal/
原産地は東アジア北部です。日本には8世紀ごろに朝鮮半島から伝わりました。772年、朝廷が干ばつに備えてソバの栽培を奨励したという記録が残っています。必須アミノ酸のリジンとトリプトファン、ポリフェノールの一種であるルチンを多く含みます。白米と比較すると、食物繊維は2.5倍となっています。
大麦 Barley <イネ科・ホルディウム属> 340kcal/100g
原産地の西アジア地域では、9千年前のメソポタミア文明の時代に栽培が始まりました。日本には縄文時代後期~弥生時代に中国より伝来したと言われています。穂の形状によ って六条大麦と二条大麦に分類され、六条大麦は食用、二条大麦はビール原料などとして使われます。丸麦は生麦したもの、押麦は丸麦を蒸してローラーで押しつぶしたもの、米粒麦は米のような形状に加工したものです。栄養成分を白米と比較すると、食物繊維は17倍、カルシウムは3倍、カリウムは2倍となっています。歯応えがあり、もちもちとした食感です。
はと麦 Job’s tears <イネ科・ジュズダマ属> 360 kcal /100g
原産地はインドからミャンマーにかけての地域で、日本の川辺などに生息する多年生植物「ジュズダマ」の変種です。インドでは3千5百年前ごろには既に栽培が始まっていました。日本には江戸時代に朝鮮半島から薬用として伝来したと言われています。中国では漢方薬や滋養強壮食として使用され、日本でも栽培されています。漢方の生薬名は「薏苡仁(よくいにん)」と言い、利尿や解毒に効果があるとされています。また、グルタミン酸、ロイシン、チロシン、バリンが含まれることで、肌の新陳代謝を高める作用があります。精白された丸い粒状のものが食用で、炊飯時に適量混ぜるなどして食されています。
粟(アワ) Foxtail <イネ科・アワ属> 367kcal /100g
原産地は中央~西アジアにかけての地域で、その原型はエノコログサ(ねこじゃらし)と推定されています。日本では縄文時代から栽培されていました。白米と比較すると、カルシウムは3倍、マグネシウムは5倍、カリウムは3倍、鉄分は6倍、食物繊維は7倍含まれています。あっさりとクセがなく、食べ易い味です。
稗(ヒエ) Japanese Millet <イネ科・ヒエ属> 366 kcal /100g
原産地はインドと言われています。日本では、アワと同様、縄文時代から栽培されています。寒冷地や高地でも栽培でき、さらに保存期間が長いことから、救荒作物としても利用されていました。白米と比較すると、マグネシウムは5倍、鉄分は2倍、カリウムは3倍含まれています。また、ヒエのたんぱく質には、血中の善玉コレステロール値を高める作用があると言われています。アワに似て、あっさりとした味わいです。
黍(キビ) Common Millet <イネ科・キビ属> 363kcal/100g
原産地は中央アジアで、縄文~弥生時代に中国から日本へ伝来したと言われています。白米と比較すると、カルシウムは2倍、マグネシウムは4倍、カリウムは2倍、鉄分は3倍、食物繊維は3倍含まれています。黄色い色素はポリフェノール由来です。甘みが強めで、プチプチとした歯ごたえです。
高きび Sorghum <イネ科・モロコシ属> 364kcal /100g
原産地のアフリカでは紀元前3千年以前から栽培されていました。コーリャン、モロコシとも呼ばれます。日本には、14世紀ごろに中国から伝来しました。その用途は様々で、主食として食される他、ビール醸造の原料となったり、穂の部分はほうき、茎は飼料や燃料となり、糖蜜も採取することができます。白米と比較すると、ビタミンB群は3.5倍、ビタミンEは28倍、カルシウムは3倍、鉄分は12倍、食物繊維は20倍含まれています。弾力のあるひき肉のような噛み応えです。
アマランサス Grain Amaranths <ヒユ科・ヒユ属> 358kcal/100
紀元前5000年頃の古代ペルーで、アンデス南部のインカ族によって栽培されていたというのが最古の記録です。日本には、江戸時代に「ヒモゲイトウ」という種類が観賞用として用いられ、東北地方では「アカアワ」という名前で食用に栽培されていました。白米と比較すると、カルシウムは25倍、良質の脂質は5.6倍、鉄分は50倍も含まれます。種皮が柔らかく、全粒で食べられるのが特長です。独特の土のような香りと噛み応えのある食感です。