水の美容・健康効果
肥満を防止
常温で水を飲むと、体を冷やさないため冷たい水を飲むよりも代謝が上がります。また、十分に水を飲むことで筋肉にしっかりと血液が送り込まれるため、効率よく筋肉量が増えます。筋肉量が増えると基礎代謝量も増え、余計な脂肪が溜まりにくくなります。
特に運動中は意識して多くの水を飲むことをお勧めします。また、食事中、少し多めに水分を摂るようにすると、水分を採らないときよりも食べるスピードが遅くなるほか、胃に水が入ることで満腹感が得られ、食べ過ぎを防ぐことができます。
血液をサラサラに
脂肪などの余計な成分が多く含まれるドロドロの血液は、血管内をスムーズに流れることができません。血液には、酸素を運搬して全身に行き渡らせる役割があるため、血流が滞ると細胞に十分な酸素が届かず、免疫力の低下や、脳や内臓などの機能低下が起こります。
意識して水を飲むようにすると尿で老廃物が排泄されると同時に血流が良くなり、酸素が全身に正しく行き渡ることで体調が良くなります。また、血流の悪さが原因で起こる脳梗塞や心筋梗塞の予防にもなります。
美しい肌を保つ
化粧水などで表面から水分補給しても、角質層の下の表皮層や基底層、真皮には届きません。水を多く飲むことは、肌の深部まで水分を補える最も手軽な方法です。肌の奥まで水分を補うことで、細胞内の老廃物など余計なものが排出されやすくなり、細胞に必要な栄養素が補われやすくなります。古い細胞から新しい細胞へと変わる新陳代謝を促し、シワ、くすみ、シミなどの改善が期待されます。
集中力を高める
脳は約80%が水分でできています。勉強や仕事の前にコップに1〜2杯の水を飲むと、脳の働きが良くなり知的活動がよりスムーズに行われると言われています。2013年、“Frontiers in Human Neuroscience”という科学雑誌のウェブサイトに、こんな実験が掲載されました。
イーストロンドン大学とウェストミンスター大学の研究で、知的な作業に集中する前に約0.5ℓの水を飲んだ人は、飲まなかった人と比べて14%も反応時間が速くなりました。また、のどの渇き感じている人に対して同じ実験をしたところ、さらにはっきりとした反応時間の差が出たといいます。
ベタつく寝汗の原因と予防法
人間の身体は、睡眠中に汗をかいて体温を下げ、深い眠りに就こうとします。健康な成人が良質な睡眠を保つために一晩にかく汗の量は、コップ約1〜2杯と言われています。しかし、いつもより多くの寝汗をかいた感じた場合は、少し注意した方が良いかもしれません。
ベタベタした大量の寝汗の原因は様々で、そのひとつにストレスがあると言われています。ストレスで自律神経が乱れると、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくできなくなり、睡眠中の体温調整がうまくいかず、大量の寝汗をかくことがあります。また、アルコールの飲み過ぎでも寝汗をかきます。アルコール類を摂取すると、体内にアセトアルデヒドというが発生します。アセトアルデヒドは、肝臓で酵素によって酢酸になります。酢酸は水と二酸化炭素に分解されて、汗、尿、呼気となって体外に排出されるため、寝汗を多くかいてしまいます。
また、閉経前の女性は排卵後のプロゲステロンの増加によって体温が0.3〜0.5℃上昇し、生理前に多く寝汗をかくことがあります。更年期障害のホルモンのバランスの乱れが寝汗の原因になることもあります。
ベタつく寝汗の予防方法は、就寝前にコップ1杯の水を飲むことです。寝る前は水分を控えるという方もいると思いますが、控えすぎると汗の中のミネラル濃度が高くなり、汗をかいても蒸発しにくく肌にまとわり付くため、睡眠を妨げることがあります。寝る前の1杯分の水で、汗のミネラル濃度が下がり、ベタつきを抑えることができます。
MEMO
就寝前の水分補給にお勧め
ノンカフェインで利尿作用のない麦茶は、就寝前でも安心して飲むことができる日本の夏の定番飲料です。水分を補給するだけでなく、血栓の予防や抗酸化作用などがあります。麦茶の香ばしい香りの素、アルキルピラジンという成分には、血液をサラサラにする効果があると考えられています。麦茶を飲むと血液の流れがよくなり、その効果は飲んだ後、約1時間ほど続くと言います。暑い気候下では、汗をかいて体内の水分が減少し、血液が濃くなって血栓ができやすくなるため、ハワイでの水分補給には麦茶がお勧めです。
また、麦茶には茄子やブルーベリーに含まれるアントシアニン、緑茶のカテキン、大豆イソフラボンなどの仲間で、「カテコール」や「ゲンチシン酸」というポリフェノールが含まれています。ポリフェノールには、脳卒中、動脈硬化、心筋梗塞、癌など、さまざまな病気や不調の原因とされる活性酸素を抑制する効果があると言われています。
水の話(2) 軟水と硬水
飲料水や生活用水は、カルシウムとマグネシウム(ミネラル分)がどれだけ含まれているかを表す硬度によって、軟水と硬水に分けられます。分ける基準は国によって異なりますが、日本では「カルシウム濃度×2.5+マグネシウム濃度×4.1」で算出されるアメリカの基準が採用されています。
濃度は水1ℓ中にカルシウム、マグネシウムがそれぞれ何ml含まれるかで計算されます。算出された硬度が100以下の場合は軟水、101~300で中硬水、300以上で硬水と分けられます。硬水に含まれるミネラル分は、地下の石灰岩などから長い年月をかけて地下水に溶け出したものです。
日本やイギリスなどの島国では、地下水が地下に留まる期間が短いため、多くは硬度が低い軟水になります。一方で、大陸の地下水は水が地下に留まる期間が長いため硬水が多い傾向があります。
ミネラル分の少ない軟水は、まろやかなので飲みやすく、料理にも向いています。硬水はそのまま飲むとミネラル分が採れますが、一般的な料理にはあまり向いていません。ちなみにハワイの水は軟水です。
【参考URL】 ダナ・コーエン/ジーナ・ブリナ(2018)『「食べる水」が体を変える』講談社 <参考URL> 2018年9月11日閲覧
・Frontiers in Human Neuroscience“Subjective thirst moderates changes in speed of responding associated with water consumption” https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnhum.2013.00363/full
・厚生労働省「健康のために水を飲もう 推進運動」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html
・SUNTRY 「水大辞典」https://www.suntory.co.jp/eco/teigen/jiten/science/11/
・大塚製薬 「身体と水分」https://www.otsuka.co.jp/nutraceutical/about/rehydration/water/body-fluid/
・味の素 「飲酒と脱水について」https://www.ajinomoto.co.jp/nutricare/useful/insyu/
・画像出典:Public Domain, Pixabay, Wikipedia 他
(日刊サン 2019.09.17)