日刊サンWEB

過去記事サイト

毎日のお茶の時間をもっと楽しく! 発祥、歴史、種類、効能 etc. お茶の雑学

餅茶 https://www.amazon.co.jp/marumero/ 

 

 

私たちの生活の中で、気分転換やリラックスの時に欠かせないお茶。その発祥は、紀元前2700年頃の中国南部と言われています。人類の歴史上、初めてお茶が登場するのは、古代中国の伝承に登場する「神農」のエピソードです。漢方と農業の始祖、神農は、人々の健康に役立てるため、一日100種類弱の野草を噛んで薬効を研究していました。野草が毒だったときは、解毒のためにチャノキの葉を噛んだと伝えられています。また、鎌倉時代以前の日本でも、茶は健康を維持し長寿を促す薬として珍重されていました。今回は、お茶が薬から嗜好品へ変化した経緯や、茶の効能、種類など、毎日のお茶の時間がもっと楽しくなる歴史や雑学をご紹介します。

「茶」とは、ツバキ科の常緑樹「チャノキ」の葉や茎で作られる飲み物の総称です。チャノキの原産地は、インド、ベトナム、中国西南部と言われています。野生化した木も多く、熱帯から暖帯アジアまで広い範囲に分布しています。

 

チャノキ(ウィキペディア)

 

中国の茶の歴史

スープ感覚で飲まれていた茶 – 三国時代(3世紀)  

三国時代、茶は、ショウガやネギ、ミカンの皮などを加え、スープのような感覚で飲まれていました。朝廷では、茶は酒と同じものとして扱われ、社交には欠かせない飲み物でした。

 

上流階級の嗜好品 – 唐の時代(7~10世紀)  

世界最古の茶の本『茶経』が記された唐の時代、茶葉は中国全土で広く栽培されるようになり、上流階級の人々に嗜好品として愛飲されるようになりました。この時代の茶は、生の茶葉を蒸し、餅のようについて型に入れ固め、日干しをした上で火であぶり、乾燥させた「餅茶(へいちゃ)」というものでした。飲む時は、茶の固まりを削って粉にし、塩を入れた湯に入れて煮出しました。

 

役人や文人も愛飲 – 宋の時代(10~13世紀)  

宋の時代には、貴族に加え、役人や文人も社交の場で茶を飲むようになり、何種類かの茶を飲み、味を当てて勝敗を競う遊び「闘茶」も流行しました。この頃の茶は、茶葉を擦って粉末にしたものを茶器に入れ、湯を注ぎ、竹製の茶せんで混ぜて飲むという日本の抹茶に似たものでした。

 

一般庶民へも普及 – 明の時代(14~17世紀)  

明の時代になると、茶を飲む習慣は、一般の人々へ広く普及していきました。この頃のお茶は、茶葉を蒸して作る方法から、釜で炒って作る方法が一般的になりました。また、花の香りを加えた、ジャスミン茶などの「花茶」が登場しました。また、17世紀に入ると、福建省の武夷茶(ぶいちゃ)など、稀少価値の高いお茶に高値が付けられ、上流階級の人々が愛飲するようになりました。

 

文化大革命による茶の制限 – 中華人民共和国の時代(20世紀後半)  

1966~1976年の文化大革命により、茶は贅沢品とされ、茶の配給やチャノキの栽培が制限されました。そのため、台湾や香港でチャノキの栽培や茶文化が発展することになりました。

 

日本の茶の歴史

茶を楽しむ人「高雄観楓図屏風」狩野秀頼 16世紀 東京国立博物館蔵

 

茶の伝来 – 奈良~平安時代(8~12世紀)  

奈良~平安時代の日本では、当時最先端だった唐の文化や制度を学ぶため、遣唐使が派遣されていました。最澄と空海は、遣唐使で等に渡り、日本に帰国する際、茶とチャノキの種を持ち帰りました。これが日本史における茶文化の始まりです。平安時代初期に記された『日本後記』の中には「近江の梵釈寺で大僧都永忠が茶を煎じ、嵯峨天皇に奉った」というくだりがあり、これが喫茶に関する日本史上初の記述と考えられています。この頃の茶は、中国の唐の時代に一般的だった「餅茶」でした。当時、茶は大変に珍しく貴重なもので、僧侶や貴族など、上流階級の人々だけが味わえるものでした。

 

茶園の誕生 – 鎌倉~南北朝時代(12~14世紀)  

臨済宗の開祖・栄西禅師は、宋で禅宗を学んだ際、禅寺で行われていた飲茶の習慣を知りました。日本に帰国した栄西は、1211年に『喫茶養生記』で茶の製法や効能を記し、茶葉と共に、当時の将軍・源実朝に献上。実朝は、その茶を二日酔いの薬として愛飲しました。この頃は、餅茶に加え、蒸して粉にしたものを器に入れてお湯を注ぎ、茶せんでかき混ぜた「散茶」も飲まれていました。栄西からチャノキの種を譲り受けた華厳宗の僧、明恵上人は、京都栂尾(とがのお)高山寺でチャノキを栽培し、日本初の茶園を造りました。その後、チャノキは、伊勢や伊賀(三重県)、駿河(静岡県)などでも栽培されるようになりました。その後、武士の社交の場でもてなされる飲み物となり、南北朝時代には「闘茶」も行われるようになりました。

 

「茶の湯」の完成 – 室町~安土桃山時代(14~16世紀)  

この時代、室町幕府の三代将軍・足利義満は、宇治茶を特別な茶として保護し、1379年には「宇治七名園」と呼ばれる七つの指定茶園を作りました。安土桃山時代になると、宇治七名園で覆下栽培(一定期間チャノキを覆って遮光し栽培する方法)が始まり、抹茶の原料である「てん茶」に加工されました。15世紀後半、茶人の村田珠光が「わび茶」の様式を創始。千利休によって受け継がれたことで「茶の湯」が完成し、大商人や武士たちの間へ浸透していきました。

 

「玉露」の誕生 – 江戸時代(17~19世紀前半)  

江戸時代、「茶の湯」は幕府の儀礼に正式に取り入れられ、武家社会に欠かせないものとなりました。また、この頃には、一般の人々も茶葉を煮出したお茶を飲むようになりました。1738年、宇治の豪族、永谷宗円が、それまでよりも丁寧な煎茶の製法「青製煎茶製法(宇治製法)」を考案しました。その後、この製法は全国の茶園に広がり、日本の緑茶の主流となりました。1835年には、茶商の山本嘉兵衛によって、煎茶に覆下栽培を応用した「玉露」の製法が生み出されました。

 

江戸後期の闘茶道具(横浜文化教室)http://school.cha-cafe.jp/toucha.htm

 

茶が生活に根付いた時代 – 19世紀後半~20世紀 – 明治~昭和時代  

明治初期、士族授産事業などを契機に、平坦な土地に集団茶園が形成されるようになりました。しかし、茶園開拓をした士族たちは次第に離散していき、代わりに農民が茶園を継承するようになりました。また、茶の製造の機械化が進み、茶の品質や消費量が安定していきました。今日のように、茶が庶民の生活に根付いたのは昭和の初め頃でした。

 

お茶の健康効果

お茶には、私たちの健康を助けるさまざまな効能があります。 ここでは、一般的なお茶に含まれている有効成分と、その主な効能を見てみましょう。

テアニン  脳と神経の機能を助ける、血圧の上昇を抑える
ビタミンC  疲労回復、抗酸化、抗ストレス、美肌(コラーゲン生成を促す)
ビタミンK  止血、骨の形成
葉酸  代謝促進、神経の機能を助ける、美肌・美髪
フラボノイド  抗酸化作用、免疫機能の向上、血流を良くする
ギャバ  脳細胞の活性化、精神安定、血中コレステロールの上昇を抑える
 貧血の予防、免疫機能の向上、動脈硬化の予防
亜鉛  美肌・美髪、抗酸化作用、免疫機能の向上
マンガン  骨の形成
クロム  血糖の上昇を抑える
フッ素 虫歯予防

          
お茶の種類

緑茶は不発酵茶、紅茶は発酵茶  

チャノキの生葉は、摘み採った直後から「酸化酵素」による発酵が始まります。この発酵の仕方によって、さまざまな種類の茶が生まれます。緑茶は、生葉が新鮮なうちに、蒸す、炒るなどして加熱することで酸化酵素の働きを止めた「不発酵茶」、紅茶は、生葉を乾燥し、完全に発酵させた「発酵茶」です。発酵の際、茶葉に含まれる酵素が、「カテキン」をはじめとした約300種類の成分と反応し、抗酸化性のポリフェノール「テアフラビン」など、新たな成分を生成します。その生成の度合いにより、茶の味、香り、色が違ってきます。発酵が進むにつれて、茶葉の色が緑から暗褐色へと変わっていくのは、葉の緑色の成分、クロロフィル(葉緑素)が酸化するためです。

 

【煎茶】  

煎茶は、チャノキの生葉を蒸して揉んだ緑茶です。パッケージに「深蒸し煎茶」と書かれたものは、普通の煎茶よりも2倍の時間をかけて生葉を蒸したものです。深蒸し煎茶を入れると、長い時間蒸されたために細かくなった粉状の茶葉も多く入るため、茶葉そのものに含まれる有効成分を摂取できます。

 

【番茶】  

番茶は、夏以降に収穫した三番茶や、三番茶を秋に摘んだ秋冬番茶、煎茶の製造工程ではじかれた大きな葉などを原料とした茶です。成長した茶葉を使った番茶は、タンニンは多め、カフェインは少なめなのが特徴です。血糖値を下げる多糖類、ポリサッカライドを多く含みます。

 

【玄米茶】  

玄米茶は、番茶や煎茶と蒸して炒った玄米を、約1:1の割合で混ぜたものです。戦前、ある茶商が、正月の鏡開きの時に出る餅屑を再利用しようと、これを炒って茶葉に混ぜたのが始まりと言われています。玄米茶の玄米には、糖尿病や動脈硬化の予防に効果が期待できるポリフェノールの一種、γ-オリザノールが含まれます。

 

【ほうじ茶】  

煎茶や番茶、茎茶を炒ったお茶。北海道、東北、北陸地方では、ほうじ茶のことを「番茶」と呼ぶ地域もあります。抗菌作用のあるカテキンを多く含みます。

 

【玉露】  

玉露の原料は、チャノキの新芽が開いたころ、チャノキをヨシズやワラ、寒冷紗という化学繊維で20日間ほど覆い、日光を制限して育てた生葉です。これを、煎茶と同じように蒸して揉んだ緑茶が玉露となります。光が当たらないことで、アミノ酸の一種、テアニンから生成されるカテキンの含有量が抑えられ、渋味が少なくまろやかな味になります。ビタミンB群、ビタミンC、ミネラルを多く含みます。

 

【抹茶】  

玉露のように、被覆栽培したチャノキの一番茶(新芽)の生葉を蒸し、揉まずにそのまま乾燥して、茎や葉脈を除いた後の茶葉が「てん茶」となります。てん茶を出荷する直前に石臼で挽いたものが「抹茶」です。茶葉に含まれる栄養素をそのまま摂取できるため、他の茶では摂取できないビタミンAや食物繊維などを摂ることができます。

 

紅茶の種類

【アッサム(Assam)】  

北東インド、ブラマプトラ河の両岸に広がるアッサム平原で栽培される紅茶です。世界有数の雨量の多い土地、アッサムは、世界最大の紅茶の産地。色は濃く深い茶褐色で、甘味が強く濃厚な味と、芳醇な香りがあります。ミルクティーに向く紅茶です。

 

【ダージリン(Darjeeling)】  

インド北東部、東ヒマラヤ山麓のダージリン地方で栽培される、世界三大紅茶の一つです。色は薄い琥珀色で、マスカットフレーバーと呼ばれる香りと、パンジェンシーと呼ばれる適度な渋みがあります。ダージリン茶の木々は、標高2000メートルにも及ぶ高地から谷底へと伸びる急斜面で栽培されています。昼の直射日光による高温と、夜の低温による寒暖差で発生する霧が「紅茶のシャンパン」と呼ばれるダージリンの味と香りを作っています。

ダージリンの茶畑

 

【ニルギリ(Nilgiri)】  

南インド、西ガーツ山脈南部に位置するニルギリ丘陵で栽培される紅茶をニルギリといいます。色は濃いオレンジで、濃厚な味のため、ミルクティーやスパイスティーに向いています。

 

【ジャワ(Java)】  

インドネシアのジャワ島、スマトラ島で栽培される紅茶をジャワティーといいます。色は明るいオレンジで、すっきりとした味と、新鮮な香りがあります。苦味が少なく、番茶のような味がします。

 

【ウバ(Uva)】  

スリランカ南東部のウバの高地で栽培される、世界三大紅茶の一つです。ダージリン同様、昼の高温と夜の低温の寒暖差で霧が発生しやすく、この霧よって「サロメチール様香気」と呼ばれる、バラやスズラン、ハッカのような味と香りが作られます。爽やかな渋味があり、色は明るく鮮やかな紅色。カップに注いだとき、内側の縁に浮かぶ金色の輪は「ゴールデンリング」と呼ばれています。ミルクティーに向いている紅茶です。

 

【ディンブラ(Dimbula)】  

スリランカ中央高地の西側斜面に位置する、ディンブラで栽培される紅茶です。明るいオレンジ色で、タンニンの含有量が少なく、マイルドな香りとフルーツのような風味が特徴です。アイスティーに向いています。

 

【キーマン(Keemun)】  

中国の安徽省祁門県(あんきしょうきーまんけん)で栽培される紅茶で、世界三大紅茶の一つです。漢字表記は「祁門紅茶」。生産時期は6~9月の3ヶ月のみで、採取量がとても少ない紅茶です。特に8月に摘まれるものが珍重され、高値が付けられます。蘭やバラを思わせる甘い香りと、渋みの少ないスモーキーな味が特徴です。ストレートティーに向いています。イギリス女王の誕生日茶会に供されることでも有名な紅茶です。

 

お茶の雑学

茶葉以外の原料のお茶

チャノキ以外の植物、キノコなどの真菌類、動物由来の加工物から作られた、茶という名前の付く飲み物は「茶外茶」と呼ばれます。私たちの身の回りには、どんな茶外茶があるのでしょうか。

どくだみ茶:夏期に採取したドクダミの葉を乾燥させたもの。

杜仲茶:中国原産の落葉高木トチュウの葉を煎じたもの。

麦茶:焙煎した大麦の種を煎じたもの。

とうもろこし茶:焼いたトウモロコシを熱湯で煮出したもの。

そば茶:そばの実を脱皮した後、焙煎したもの。

ゴーヤー茶:日干しで乾燥させたゴーヤーを焙煎したもの。

ルイボスティー:南アフリカのセダルバーグ山脈に自生するマメ科の植物ルイボスの葉を乾燥させたもの。

ハーブティー: ハーブを乾燥させたもの。

しいたけ茶:干しシイタケの戻し湯。

虫糞茶: お茶の材料とする葉を蛾の幼虫に食べさせ、その糞を茶にしたもの。

象糞茶:アフリカ東部のマサイ族などが、乾期のゾウの糞を元に作るもの。「サバンナ・ティー」とも呼ばれる。

 

       

「トチュウ」の葉(かのんの樹木図鑑)http://kanon1001.web.fc2.com

 

高価なお茶のいろいろ

世界で最も高価な紅茶の一つ、 シルバーティップス・インペリアル  

インド・ダージリンにあるマカイバリ茶園産で、ダライ・ラマも愛飲している「シルバーティップス・インペリアル」という茶葉が、世界で最も高価な紅茶の一つとされています。価格は1キロ当たり約20万円。この紅茶は、宇宙の力を作物に活かす有機農法「バイオダイナミック農法」において、地球の生物、植物の水分が最も少なくなる満月の日の夜中に摘み取られた茶葉なのだそうです。

 

240グラム当たり5万4000円の玉露  

2010年、静岡市で行われた全国茶手揉振興大会に出品された手もみの茶に、1キロあたり112万3456円という値が付き、落札されました。また「京都・舞妓の茶本舗」で販売されている「屋敷の茶」という玉露は、240グラム当たり5万4000円。現在市販されている中で、最も高価な緑茶の一つと言われています。

 

世界一高価なお茶、大紅袍(だいこうほう)  

大紅袍は、烏龍茶の一種です。「岩茶」と呼ばれる岩場で育つチャノキで、地面が硬いために木の根が発達しておらず、水分や栄養素は主に葉から吸収します。このため、岩茶の茶葉は肉厚になり、旨みが多くなります。岩茶の中では、中国・福建省北部の武夷山市で採れるものに最も高値が付いていますが、武夷山岩茶の中でも一番高価なものが「大紅袍」です。  

樹齢約350年の大紅袍の原木は、武夷山に4本しか自生していません。そのため、この原木からできる茶は年間800グラム程度にしかなりません。この4本の原木から直接採れる茶は、一般には販売されておらず、購入できるものは、接ぎ木から採摘された第二世代以降のもの。それも、年間2キロ程度しか作られないのだとか。大紅袍の過去最高落札額は、20グラムあたり約252万円。100グラム当たり約1260万円、5グラムを1杯分とすると、1杯約63万円になります。過当な高値が付けられる大紅袍の茶葉ですが、その原木にも、約13億円の保険が掛かっているのだそうです。

 

茶殻のリサイクル  

茶を飲み終わった後の茶殻には、日干しにしてガーゼで包み、冷蔵庫や靴箱の消臭剤にしたり、食器やシンクを洗ったり、床に生渇きの茶殻をまいて掃いたりなど、茶の消臭効果を活かしたいろいろな再利用法があります。また、茶殻を再利用して作られたエコ製品も販売されています。ペットボトルのお茶で有名な伊藤園のウェブサイト(www. itoen.co.jp/csr/recycle/product/)では、お茶入りベンチや、茶殻入り折りたたみチェア、茶殻入り健康サンダル「葉かなくっ茶」、靴のインソール「カテキン快足」、茶殻入りの段ボール箱や名刺、折り紙など、さまざまな茶殻製品を紹介しています。

 

 

参考URL:

お茶ミュージアム <http://museum.ichikawaen.co.jp>  

お茶百科 <http://www.ocha.tv/>

日本紅茶協会 <http://www.tea-a.gr.jp/>  

夢農人いしかわの毎日楽しいっ茶 <http://ishicha.boo-log.com/>

京都 舞妓の茶本舗 <http://www.maiko.ne.jp/>  

ウィキペディア <https://ja.m.wikipedia.org/>