日本の夏の食べ物といえば、冷奴や素麺、飲み物では麦茶などが思い浮かびます。日本には暑い気候をしのぐ昔からの知恵が多くありますが、日本の伝統的な夏の食べ物にもその知恵が隠されています。今回のエキストラ特集では、夏場に不足しがちな水分や栄養分を補給したり、体温を下げたりなど、実はさまざまな健康効果が期待される日本の夏の食べ物をご紹介したいと思います。
冷奴(ひややっこ)
主成分・大豆….100gあたり 約76kcal
今では1年中食べられますが、暑いと特に食べたくなるのが冷奴。江戸時代の豆腐レシピ本『豆腐百珍』には「冷奴の料理方法は余りにも知られているため、わざわざ書くほどでもない」という意味の一文があり、冷奴がかなり昔から日本人に親しまれていたことがうかがえます。好みによって木綿豆腐、絹ごし豆腐の両方を使います。
絹ごし豆腐は、木綿豆腐より濃い豆乳と凝固剤で作られます。絹ごし豆腐は水分を残したままにするため、マグネシウムやカリウム、ビタミンB1などの水溶性ビタミンが木綿豆腐よりも多く含まれています。また、木綿豆腐は水分を切るため、たんぱく質、カルシウム、鉄分などが絹ごし豆腐よりも多く含まれています。豆腐に含まれる栄養素と期待される効果をさらに詳しくご紹介しましょう。
レシチン(100gあたり約19g)
記憶力UP、アルツハイマー型認知症の予防
豆腐に含まれる脂肪酸の1つ、レシチンは約13%のコリンを含む「リン脂質(リンを含む脂質)」の一種です。身体の細胞膜の主成分となり、脳神経を含む神経組織を構成しています。レシチンには、酸化防止、乳化、保水などの作用があり、細胞膜を正常に機能させ、コレステロールの蓄積を予防します。
レシチンに含まれるコリンは、ビタミンと似た働きや、ビタミンの作用を助ける働きがあります。また、レシチンが腸で分解される際にコリンとして独立し、脳に運ばれ、「アセチルコリン」という情報伝達物質に変わります。そのため、レシチンには記憶力や集中力のUP、アルツハイマー型認知症の予防など、脳に関する健康にを維持する効果があると考えられています。
イソフラボン*(100gあたり約27mg)
更年期障害の改善、乳がんの予防
女性ホルモンの1つ、エストロゲンと似た働きをし、女性ホルモンの減少によって起こる更年期障害などの症状に効果が期待されています。また、高血圧、コレステロール値の抑制、心臓疾患、乳がん、前立腺がん、胃がんの予防効果があると言われ、日本人が欧米人に比べてこれらの疾患が少ないのは、豆腐などの大豆製品を常食しているためとも考えられています。
オリゴ糖(100gあたり0.42g)
ビフィズス菌の栄養源
豆腐の甘みを引き出す糖質の一部、オリゴ糖は、高い整腸作用のあるビフィズス菌の栄養源となります。 カルシウム(100gあたり約120mg) 骨や歯を構成 豆腐たんぱくは、豆腐に含まれるカルシウムの吸収を促進します。
ペプチド
心臓疾患の予防
豆腐のたんぱく質に含まれるペプチドは、血圧の上昇を抑え、心筋梗塞や狭心症などの心臓疾患を予防すると言われています。米国食品医薬品局(Food and Drug Administration・FDA)は、1999年に「大豆たんぱくを1日25g食べると心臓疾患を防ぐことができる」という食品表示を認めています。
βコングリシニン
内臓脂肪や中性脂肪を減少
豆腐のたんぱく質に含まれるβコングリシニンは、中性脂肪の素となる遊離脂肪酸を肝臓内で減らす働きがあり、内臓脂肪や中性脂肪を効果的に減少させると言われています。
サポニン
骨粗鬆症予防、整腸作用
期待される効果として、骨粗鬆症の予防、脂肪酸の酸化抑制と活性酸素の抑制、整腸、血栓の予防、癌の予防などがあります。
*イソフラボンの過剰摂取については、サプリメントには上限値が設けられています。豆腐などの大豆食品は対象外になっていますが、摂りすぎには注意しましょう