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循環器と消化器のはたらき

Bynikkansan

6月 18, 2019

消化器(digestive organ)

腹腔の主な臓器、消化器は、食べ物を消化し、身体に必要な栄養を吸収し、残りを便として排出する臓器です。消化器には、食道、胃、小腸(十二指腸・空腸・回腸)、虫垂、大腸(盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸)、肛門、肝臓、胆嚢、膵臓などがあります。

 

 

 

口腔部 (oral cavity)  –栄養素を取り込む 消化器系の入り口

口唇(rips)  

口輪筋、皮膚組織、粘膜で組成される消化器の入り口、つまり上下の唇のことです。他の部分に比べてメラニン色素が少ないため、血管が透けて赤く見えます。

 

歯(tooth)  

上顎と下顎に付いているもので、口唇から入る食べ物を噛み砕き、摂取、消化しやすいようにする役割があります。根元は粘膜と組織から成る歯肉に覆われ、上の部分はエナメル質の層を持つ歯冠が出ています。成人の永久歯は上下16本ずつ、計32本あり、四角形、円錐形、ノミ形などさまざまな形があり、それぞれが食べ物を嚙み切る、すり潰すなどの役割を担っています。

 

口腔(oral cavity)  

口唇の奥にある空間部分を指します。天井は「口蓋」といい、前2/3は「硬口蓋」という鼻腔との仕切りを作る骨で、後1/3は粘膜性の「柔口蓋」で成っています。喉と繋がる最奥部には、舌根と協力して食べ物が鼻の方へ入らないようにする役割を持つ「口蓋垂」があります。口腔の底には、表面が粘膜で覆われた「横紋筋」という筋肉で出来ている舌があります。舌は咀嚼、嚥下、味覚、発声を助けます。口腔には3つの大きな唾液腺があります。一番大きいものは粘度の低い唾液を分泌する「耳下腺」で、残り2つの顎下腺、舌下腺は粘度のない漿液と粘液の混ざった唾液を分泌します。

 

 

咽頭部 (pharynx)  –消化器、呼吸器両方の 機能を持つ

咽頭部は、鼻・口・咽頭の3つの部分に分けられます。食べ物などを飲み込む際、気管(鼻の方)へ入っていかないよう口腔の口蓋垂と舌根が働きますが、それらと連動して喉頭にある軟骨が持ち上がり、蓋のようになって気管への入り口を閉じます。その後咽頭筋が収縮し、食べ物は食道へと運ばれます。その後、それぞれの器官は元の位置に戻って呼吸を再開します。この一連の動きは「嚥下反射」と呼ばれ、ほんの一瞬で行われています。

 

 

食道 (esophagus)  –食べ物を胃に送る

咽頭から続く食道は、咀嚼した食べ物を胃に送る通路です。長さは約25センチ。第六頚椎(上から6番目の喉の骨)、背骨、呼吸気管の間を通り、心臓の後ろ側を下り、横隔膜を貫通する形で胃に繋がっています。食道が食べ物の大きさや硬さなどに応じて拡がり、それに合わせて筋肉が動き、食べ物を胃へ送るため、横になっていても物を食べることができます。

 

 

胃 (stomach)  –食べ物を3〜6時間かけて消化

胃は消化器の中で最も拡張することができる器官で、容量は1〜1.5リットル程です。食べ物を3〜6時間溜め込みますが、その間に胃液を分泌して消化を行います。「胃体」と呼ばれる袋状のメイン部分は、左に向けてCの字を描くように湾曲しています。そのほか、C字の外側は「大彎」、内側は「小彎」、食道との接続部分は「噴門」、ドーム型になっている上部分は「胃底」、十二指腸と繋がる下部分の開口部は「幽門」、その手前は「幽門前庭」とそれぞれ呼ばれています。胃壁の外側は腹膜で覆われており、内側は粘膜で、縦方向に絡み合う襞があります。粘膜の表面には「胃小窩」という胃液が出る小さなくぼみが無数にあり、その奥には胃液を分泌する腺があります。胃の動きをコントロールする筋肉は平滑筋の層で、輪送筋、縦走筋、斜走筋の3種類があります。

 

 

小腸 (small intestine)  –テニスコート1面分の 表面積で栄養分を吸収

小腸は栄養分の吸収を行う管状の臓器で、十二指腸、空腸、回腸の3部位に分けられます。太さは3〜4センチで伸縮性があります。完全に伸ばした場合、全長は約6メートルになりますが、私たちの身体の中では約3メートルに縮んだ状態で収まっています。運ばれてきた栄養を効率よく吸収するため、表面積をヒダや繊毛で拡げています。

 

3つの動きで内容物を混ぜつつ移動  

粘膜の下にある2層の平滑筋が小腸を動かし、内容物を3〜6時間かけて混ぜながら下方へ送り込みます。小腸の動きには、蠕動(せんどう)運動、分節運動、振子運動という3つの運動があります。蠕動運動は筋肉が小腸を絞りながら胃から大腸へと移動させ内容物を押しだす動き、分節運動は筋肉が収縮したり弛緩したりしながら内容物を混ぜる動き、振子運動は筋肉が収縮したり緩和したりしながら内容物を混ぜる動きです。

 

膵液と消化酵素による消化  

小腸では、膵液と小腸の上皮細胞にある消化酵素で消化が行われます。膵液は膵臓から1日あたり1〜1.5リットル分泌される弱アルカリ性の液体で、澱粉、タンパク質、脂肪などの栄養分を分解し、体内へ吸収されやすいようにする役割があります。消化酵素にもこれと似た役割があり、十二指腸腺から1日に1.5〜3リットル分泌される腸液と一緒になって消化を行います。また、肝臓から1日約500〜600ミリリットル分泌される胆汁は、分泌量の9割以上が小腸で吸収されて肝臓に戻されます。胆汁には脂肪を吸収しやすい形に変化させる働きがあります。

 

 
■MEMO
小腸は行動や感情をも司る?

脳は神経を通って心臓や肺、消化器官などの臓器に指令を送っていますが、消化器官の約9割は脳に情報を送り返しています。中でも「第二の脳」という異名を持つ小腸は、腸神経系と呼ばれる独自の神経系があるため、脳からの指令なしでも動くことができます。

 

 例えば、不必要な異物を身体に吸収してしまわないよう、吸収した後で再度小腸の管の中へ戻してしまうという仕組みがあります。また、快楽を感じさせる神経伝達物質、ドーパミンの約5割、幸福感を感じさせるセロトニンの約9割が小腸の腸内細菌が生成しているといわれ、腸内環境の良し悪しは、これまで考えられていたよりももっと気分に影響しているのではないかと考えられています。

 

 いわゆる善玉菌が多くある腸内環境の人は、悪玉菌が多くある人に比べてセロトニンが多く、学習や記憶の関わるタンパク質量が多いという研究もあるのだとか。また、納豆、ヨーグルト、コンブチャ、キムチなどの発酵食品の善玉菌は、生きたまま腸へ到達しますが、ある鬱状態の人が発酵食品を毎日食べ続けた結果、1ヶ月ほどで症状が軽くなったという例があります。その延長で、腸内細菌の状態が人間の社会性に影響するという研究もあるのだそうです。私たちの気分や行動に大きな影響を与える食事内容には、やはり十分気を配りたいものです。

 

大腸 (colon)  –消化されにくい食物繊維を発酵

大腸は、全長1.6メートル、直径5〜8センチで、盲腸、結腸、直腸の3部位に分けられます。

 

主な機能は食物繊維の発酵  

大腸では、他の消化器官では消化されにくい食物繊維の発酵や、一部の栄養素、水分、塩分の吸収が行われています。最後まで吸収されずに残ったものは大便となりますが、排泄されるまでの間、管内に貯めておくという役割もあります。大腸内で水分のがうまく再吸収されなかった場合、便は水分の多い下痢の状態になります。

 

胃に食べ物が入ると内容物を一気に輸送

大腸の動きには、くねくねと動いて内容物を下へ運ぶ蠕動運動、逆に上側に押し戻す逆蠕動運動、伸び縮みする分節運動があります。しかし、小腸に比べて動きが弱いため、内容物が停滞し、便秘が起こることがあります。また、大腸は胃に食物が入ると内容物を一気に輸送するという性質があります。この動きは「胃大腸反射」といいますが、赤ちゃんがミルクを飲むたびにうんちをすることや、大人が朝食後にトイレへ行きたくなるのはこのためです。

 

便やおならはなぜ臭う?  

大腸が分泌するアルカリ性の大腸液は、腸壁の保護や内容物の輸送を促します。大腸液には消化酵素が含まれないため、内容物の分解は大腸菌などの常在菌が行います。常在菌は内容物を発酵させ、電解質にまで分解し、最後まで栄養を吸収させようとしますが、その過程で酪酸、酢酸、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、メタンガスなどが発生します。また、アミノ酸を発酵、分解する際はインドールやスカトールなどの有機化合物も生じます。これらの腸内ガスで、腸内で吸収されなかったものがおならになり、便と共に排出されたものがその臭いの原因になります。

 

 

<参考URL> 2019年6月12日閲覧

・Matthew Hoffman, MD “Picture of the Abdomen” https://www.webmd.com/digestive-disorders/picture-of-the-abdomen#1

・FinderUniversity“’Second brain’ neurons keep colon moving”https://www.scimex.org/newsfeed/second-brain-neurons-keep-colon-moving

・時事メディカル「人体の構造図」https://medical.jiji.com/medical/item?l0=知っておきたい知識&l1=人体の構造図&depth=2

・光英科学研究所「どうして腸は大事なの?食べ物と腸内細菌のおはなし」https://koei-science.com/gutstory/foods/

・Wikipedia「器官」https://ja.m.wikipedia.org/wiki/器官 

・画像出典 Wikipedia, Public domains, Pixabay

 

(日刊サン 2019.06.18)