常夏と言われるハワイですが、これからの時期は夏のピーク。いつでも強い日差しが更に強くなり、気温も上昇します。それに伴い、紫外線の照射量も最大に。紫外線にはビタミンDを生成する働きがありますが、長時間紫外線にさらされると、皮膚・眼・免疫系への慢性疾患(または急性)を引き起こす可能性があります。ハワイはアメリカの中でも特に紫外線指数の高い場所。紫外線に関する知識を深めて、紫外線対策をグレードアップしましょう!
紫外線の性質
太陽の光りには目に見える光り(可視光線)の他に、目に見えない紫外線や赤外線が含まれています。紫外線とは、地上に届く光りの中で最も波長の短いものです。
UVA(紫外線A波):UVBほど有害ではないが、長時間浴びた場合の健康状態が懸念されている。 UVB(紫外線B波): ほとんどが大気層(オゾンなど)で吸収されるが、一部は地表に到達し、皮膚や眼に有害である。
UVC(紫外線C波): 大気層(オゾンなど)で吸収されてしまい、地表には到達しない。
※UVA/ UVB/ UVC の分類にはいくつかの定義があります。ここでは日本の気象庁にならって280~315nm(ナノメートル)をUVBとしています。
紫外線は波長によってA・B・Cの3つに分けることができます。C領域紫外線(UVC)は空気中の酸素分子とオゾン層で完全にさえぎられてしまうので、地表には届きません。
B領域紫外線(UVB)もオゾン層の変化に影響されることから、現在、増加が懸念されています。
紫外線は人間の目には見えないものですが、太陽光の一部であり、基本的な性質は可視光線と同じです。季節や時刻、天候などにより、紫外線の絶対量や日射量に占める割合は変化しますが、可視光線と同じように建物や衣類などでその大部分が遮断されます。一方、日中は日陰でも明るいように、大気中での散乱も相当に大きいことが分かっています。中でも、B領域紫外線(UVB)は散乱光の占める割合が高くなっています。
人体に有害と言われるB領域紫外線を中心に、紫外線の性質をまとめると以下のようになります。
●薄い雲ではUVBの80%以上が透過するので、太陽から直接地上に届く紫外線量と、空気中で散乱して届く紫外線量は屋外ではほぼ同程度である。
●地表面の種類により紫外線の反射率は大きく異なる。 新雪:80% 砂浜:10~25% コンクリート・アスファルト:10% 水面:10~20% 草地・芝生・土面:10%以下
●標高が1000m上昇するごとにUVBは10~20%増加する。 ●建物の中には屋外の10%以下の紫外線がある。
紫外線のウソ・本当
世界保健機構(WHO)では紫外線に関するガイドブック「Grobal Solar UV Index-A Practical Guide 」を発行しています。その中にまとめられている「紫外線のウソ・本当」をここでご紹介します。
【間違い】
●日焼け(サンタン)は健康的である。 日焼けは(サンタン)太陽紫外線を防いでくれる。
●曇りの日には日焼けをしない。
●水辺では日焼けをしない。
●日焼け止めを塗っていれば、非常に長い時間日光を浴びても大丈夫である。
●日光浴の途中で定期的に休憩をとると、日焼け(サンバーン・サンタン)を起こさない。
●太陽の光りに暑さを感じない時には、日焼け(サンバーン・サンタン)を起こさない。
【正しい】
●日焼け(サンタン)は、私たちの体が紫外線による被害を防ごうとする防御反応ですが、その効果は小さく、注意信号と考えるべきです。
●薄い雲の場合、紫外線の80%以上が雲を通過します。
●水面の反射は紫外線のばく露を増やすと言えます。また、水はわずかな紫外線しか防いでくれません。
●日焼け止めは紫外線を浴びることが避けられないときに、防止効果を高めるものですが、太陽に長時間あたるために使用するのは間違いです。
●紫外線ばく露は一日を通して蓄積されていきます。
●サンバーンは私たちが感じることのできない紫外線によるものです。暑さをかんじるのは赤外線によるもので、紫外線ではありません。
日焼け止め
紫外線対策に欠かせないのが日焼け止め。日焼け止めは紫外線への対処の仕方から、「紫外線吸収タイプ」と「紫外線錯乱タイプ」に大きく分けられます。製品によっては吸収剤か錯乱剤のどちらかが配合されていることもあれば、両方を組み合わせたものもあります。重要なのは「きちんと使うこと」なので、肌質や目的、環境、好みなどに合わせて選んでください。
紫外線吸収剤
肌の内部に紫外線が入らないように、表面で「吸収」する働きをするのが「紫外線吸収剤」。吸収した紫外線をエネルギーに変換して放出することで、肌の内部への侵攻を防ぎます。紫外線への防御力が高く、SPF値の高いほとんどの製品に紫外線吸収剤が含まれていると言えます。
マイナス面は、防御力が高い分、肌への負担も大きくなりがちなところです。
紫外線散乱剤
紫外線を乱反射させることで、肌の内部への侵入を防ぐもの。特殊なカッティングを施した粉体が、入ってくる紫外線を散乱させます。防御力では紫外線吸収剤に劣りますが、肌への負担は少ないので、赤ちゃん向けの日焼け止めや敏感肌用の製品で多く使用されています。「ノンケミカル」と表記していることが多いので、判断しやすい。
日焼け止めのSPFとPAって何?
日焼け止めに表示されているSPFとPAという数値が何を表しているのか、実は知らない方も多いのではないでしょうか。SPF値は紫外線B波を防ぐ効果の度合いを表し、PA値はA波を防ぐ度合いの目安となる数値です。
SPF1で紫外線B波を20分ブロック
素肌に紫外線B波をあてると、時間と共に皮膚が赤く炎症を起こします。SPFはこの「赤くなり始める状態をどれくらい引き伸ばせるか」を表す数値で、SPF1が20分に相当します。つまり、SPF2なら40分、SPF3ならば60分引き伸ばすことができることになります。
日焼け止めの効果は塗り方や肌質によって大きく左右されるので、SPF値はあくまでも目安。高ければ絶対に日焼けしないというわけではないのでご注意を。
目安
日常:SPF10~20 軽いレジャーやスポーツ:SPF20~30 リゾート地や海辺など:SPF30以上
紫外線の強いハワイでは、SPF30以上のものを選んだ方がいいでしょう。日焼け止めは汗で流れたりして少しずつ落ちてしまいます。そのままにしておくとムラ焼けになってしまうので、塗りなおすクセをつけるとより効果的に紫外線を防ぐことができます。SPF値が高くても、落ちてしまったら意味がありません。
汗をたくさんかいた時は、顔を洗って全部塗り直しできると一番良いのですが、メイクをしているので顔が洗えない場合「汗を抑える→あぶらとり紙で抑える→日焼け止めを塗り直す→パウダーファンデーション」という手順で塗りなおしてみてください。 崩れがひどい時は乳液を使うと効果的。崩れやすいところや崩れてしまったところを乳液をつけたコットンでやさしく拭き取り、それから日焼け止めやファンデーションを使います。これなら厚塗りになりません。ムラにならないようにするには、塗るのではなくおさえる感覚で使うといいでしょう。
PA値は+++が最大
PA値は、紫外線A波を防ぐ度合いを表します。紫外線が当たった2~4時間後にメラニンの黒化を防ぐ度合いを「+」で表し、以下の3段階に分かれています。
+:効果がある
++:かなり効果がある
+++:非常に効果がある
アメリカの日焼け止めの新しい規制
アメリカのドラッグストアではサンスクリーン(日焼け止め)よりもサンタン(肌を黒くする日焼け製品)の方が多く並んでいましたが、最近では日焼け止め製品の方が多く見られるようになりました。
紫外線予防に意識が高まり、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、昨年日焼け止め製品に対する新しい規制を発表しました。アメリカで日焼け止めの規制が改定されるのは実に33年ぶり。新規制は今年の夏から正式に施行されます。
最高値が「SPF50+」に
日本ではSPFの最高値をすでに「SPF50+」と定めていますが、アメリカでもようやく同様に規制されることになりました。
アメリカではSPF100+という表記が今まで見られましたが、どんな日焼け止めでもUVBの防御率はSPF15で約93%、SPF30で約97%、SPF70で約99%となっています。実際は、SPF30以上の場合、数値が2倍・3倍と高くなっても防御率の効果はそれほど大きく変わりません。それなのに、SPF100+はまるでSPF50の2倍の効果があるような誤解を与えてしまうため、今回のように最高値が定められました。
ブロード・スペクトラム(Broad Spectrum )表示
UVA/ UVB ともに同等のレベルで防止する効果をFDAが認可した製品に対して「ブロードスペクトラム」という表示がされます。以前はUVBを防ぐSPFの数値しか表示の規制がなかったのですが、皮膚がんや肌の老化を引き起こすUVAの予防が重要視されるようになり、今後はすべての日焼け止め製品にこの表示が必要となります。
「ブロードスペクトラム」表示が認可され、なおかつSPF15以上の製品だけが、肌の老化や皮膚がんのリスクを軽減することをパッケージに記載することができます。
ブロードスペクトラム成分例
Ingredients | Other Names |
Benzophenones | Oxybenzone |
Cinnamates | Octinoxate |
Ecamsule | Cinoxate |
Sulisobenzone | Mexoryl SX |
Salicylates | |
Titanium Dioxide | |
Zinc Oxide | |
Avobenzone | Parsol 1789 |
「サンブロック」「オールデイプロテクション」「インスタントプロテクション」表記の禁止
今までの日焼け止めには「サンブロック」という表記が多く見られましたが、今後この表記はすべて禁止されます。サンブロックというと、実際には不可能なのに、完全に日光を遮断できるような誤解を与えてしまうからです。
「オールデイプロテクション」や「インスタントプロテクション」という表記も同様に、実際には不可能なのに一日中効果が持続するような印象や、塗った瞬間に効果を発揮するかのような誤解を与えてしまうため、これらの表記も禁止となりました。
「ウォーターレジスタンス」表示
今後は「ウォータープルーフや「スウェットプルーフという表記も禁止されます。どんなに水や汗に強い日焼け止めでも、実際には水や汗に濡れると徐々に効果が失われてしまうので、紫外線効果が水や汗でもまるで持続するかのような表現は禁止されることになりました。
その代わり、水に対して抵抗力があることを表す「ウォータープルーフ」という表示は認められます。この場合、FDAの検査に基づき、紫外線防止効果が持続する時間(40分または80分)を表記する必要があります。
「Drug Fact」表示
「Drug Fact」とはアメリカで医薬品に対して表示することが義務付けられているラベルです。このラベルには、製品に含まれる有効成分・使用目的・使用法・使用上の注意などが表示されています。今後はすべての日焼け止め製品に対して「Drug Fact」を表示することが義務付けられます。
また、使用法には「紫外線防止効果を持続させるためには、2時間ごとに塗りなおす」ことを表記することも義務付けられました。
FDAによる紫外線予防のアドバイス
●午前10時から午後2時の間は1日のうちで紫外線量が最も多い時間帯なので、なるべく日光を浴びないように心がける。
●日焼け止めだけでなく、長袖や長ズボンなどつばの広い帽子やサングラスを身につけて、紫外線から肌を守る。
●日焼け止めは2時間ごとに塗り直す。
●水に濡れたり汗をかく場合、より頻繁に日焼け止めを付け直す。
●「ブロードスペクトラム」SPF15以上の日焼け止めを使用する。
UVインデックス
近年、紫外線を浴び過ぎると皮膚がんや白内障になりやすいことが明らかになっています。さらに「オゾン層の破壊」によって、地上に到達する紫外線が増加していることから、世界保健機構(WHO)ではUVインデックス(UV指数)を活用した紫外線対策の実施を推奨しています。UVインデックスとは紫外線が人体に及ぼす影響の度合いをわかりやすく示すために、紫外線の強さを指標化したものです。UVインデックスは世界共通の指標なので、海外でも現地のUVインデックス情報を利用することにより、適切な紫外線対策を行うことができます。
アメリカ環境保護協会のUVインデックスガイドラインは下記の通り。
2以下:弱い
健康な人には紫外線による危険は低い
●晴れの日はサングラスを着用しましょう。
●日焼けしやすい人は長袖などで肌を保護し、日焼け止めを使用しましょう。
雪と水は紫外線を反射します。スキーをする人と泳ぐ人は、専用の対応を行ってください。サングラスまたはゴーグルを使用し、少なくともSPF15以上の日焼け止めを使うこと。顎や鼻など、太陽光線の反射で紫外線に当たりやすい場所を保護することを忘れずに。
3~5:中程度
何も保護をせずに太陽光を浴びた場合の危険は中程度。
●屋外に出る際は、長袖を着るなどの予防措置を取ること。
●日中日差しが強い間は、なるべく日陰にいるようにしましょう。 自分の影を見ると、どれくらい紫外線を浴びているかが分かります。
●自分の影があなたの身長よりも長かったら(早朝や夕方など)、紫外線を浴びている量は少ない。
●自分の影があなたの身長よりも短かったら(日中)強いレベルの紫外線にさらされています。日陰に入り、肌と眼を守りましょう。
6~7:強い
保護をしないで肌を太陽光線にさらすと、ダメージを受ける危険が高い。少なくともSPF15以上の日焼け止めを使用すること。つばの広い帽子とサングラスで眼を保護すること。
●日焼けへの対応が必要。
●午前10時から午後4時の間は、太陽光を浴びる時間を減らす。
●長袖などで肌をカバーし、帽子とサングラス、日焼け止めを使用すること。
サングラスの使用は眼球と同様にまぶたも保護することができます。
8~10:非常に強い
肌を保護せずに太陽光を浴びると、肌への危険は非常に強い。午前10時から午後4時までの間は、太陽光を浴びる時間をできるだけ減らしましょう。SPF15以上の日焼け止めを使って肌を保護すること。肌をカバーできる衣類を見に着け、サングラスで眼を守りましょう。
●しっかりとした予防措置を取ること。肌を保護しないと日焼けによってダメージを受ける可能性が高くなります。
●午前10時から午後4時までの間は太陽光を浴びる時間を最小限に抑えるか、日陰を探し、衣類などで肌をカバーして、帽子とサングラスを着用しましょう。日焼け止めの使用も忘れずに。 ガーデニングやスポーツなど、屋外での日常的なアクティビティに注意。午前10時から午後4時のピーク時は、紫外線が非常に高いことを忘れずに。スポーツをする時と同じように、スポーツ観戦時も強過ぎる太陽光から眼を保護することと、日焼け止めの使用を忘れずに。
11以上:極端に強い
肌を保護せずに紫外線を浴びると、肌へのダメージは極端に高い。午前10時から午後4時までの日中は、避けるようにしましょう。少なくともSPF15以上の日焼け止めを使用し、2時間ごとに塗りなおすこと。
●すべての予防措置をとること。肌を保護しないと数分で日焼けする可能性があります。海水浴の際は、白い砂やその他太陽光を反射しやすい状況が、紫外線を反射するので、紫外線を浴びる量が増加します。
●午前10時から午後4時の間は、太陽光を浴びることを避けること。
●日陰を探し、肌をカバーする衣類を見に着け、帽子、サングラス、日焼け止めを使用すること。
※UVインデックスが11以上でも、屋外に出ることは可能です。日陰に入ることや帽子をかぶること、肌を保護することを忘れずに、UVカット99~100%のサングラスを使用すること。日焼け止めを使用すること。または、危険なレベルの太陽光を浴びるのではなく、屋内でリラックスする機会を見つけましょう。 (http://www.epa.gov/sunwise/uviscale.htmlより)
トマトジュースで紫外線対策
トマトに多く含まれている赤い色素「リコピン」は、抗酸化作用が期待されており、様々な研究がされています。リコピンが紫外線によるメラニン産生細胞の活性化を抑制することが、試験管内の実験で報告されています。つまり、リコピンには紫外線によるシミとシワに対して予防効果がある可能性があるのです。
そこで簡単にリコピンを摂取する方法として、トマトジュースをおススメします。トマトジュースには、リコピンだけでなくビタミンCや葉酸も含まれているので、野菜不足を補うにも役立ちます。カロリーも低いので、ダイエット中でも安心。
リコピンの摂取には、もちろん生のトマトの方が更に効果的。ハマクアトマトやカムエラトマトなど、ハワイではトマトを生産しているので、ローカルトマトで紫外線対策してみませんか?
参考:
http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/uvhp/3-40uvindex_manual.html
http://allabout.co.jp
http://www.epa.gov/sunwise/uviscale.html
http://www.env.go.jp
http://www.fda.gov/Radiation-EmittingProducts/RadiationEmittingProductsandProcedures/Tanning/ucm116445.htm#4
(日刊サン 2012年8月9日)