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原因、自己チェック、自宅でできる予防方法をご紹介。

少しでも明るい気持ちで毎日を過ごせますように!

私たちは毎日、家庭や職場などで他の人々と接しながら、色々なできごとを経験します。その中で、ちょっとした嫌なできごとが原因で気持ちが沈んだり、憂うつな気分になったりすることって、ありますよね。普通だったら、数日でどうでもよくなったり、いつのまにか回復していたりして、元通りの生活ができるようになるもの。なのに原因が解決した後や、そのできごとからかなり時間が経っても憂うつな気持ちが続くような場合はうつ病が疑われ、何らかの対策が必要となってきます。 今回の特集では、うつ病の原因やメカニズムを把握し、うつ病の自己チェックをしながら、食事や運動、サプリメントなどで回復する方法を一緒に見ていきましょう!

 

うつ病とは

うつ病はその症状によって、うつ状態だけが起こる「うつ病」(「正式名は「大うつ病性障害」」と、抑うつ状態とそう状態の両方が起こる「双極性障害」の2つに分類されています。うつ病の「抑うつ状態」とは、物事への意欲や興味などの精神的活動が低下し、一日中憂うつな状態が続くこと。食欲がない、夜よく眠れないなど、体への影響も出てきます。アメリカの診断基準「DSM-5」では、うつ病をmajor depressive disorderと表現しています。

 

どれくらいの人がうつ病にかかっているの?

日本の厚生労働省では、3年ごとの10月に全国の医療施設に対する「患者調査」を行なっています。その中で「気分障害」の総患者数は、1996年は43.3万人1999年は44.1万人、2002年は71.1万人、2005年は92.4万人、2008年は104.1万人と、年々増加傾向にあり、2014年には、111.6万人と過去最多となりました。日本人で、生涯に1回うつ病にかかる人の割合は15人に1人、既にうつ病にかかっている人で、病院へ行っていない人は、4人に3人と言われています。

 

 

どんな人がかかりやすいの?

うつ病は、真面目で責任感が強く、周囲に気を使う性格の人がかかりやすい疾患だと言われています。また男性よりも女性の方がかかりやすく、年代別では、男女ともに40歳代の患者が最も多くなっています。

 

 

うつ病の原因

ストレス、病気、環境の変化、遺伝など、さまざまな要因が重なって発病すると考えられています。

①環境的な要因
・子ども供の頃のつらい体験

・職場や家庭の人間関係

・過酷な就労

・経済的ひっ迫

・身近な人との死別

・転職、転勤、リストラ、離婚、引越し ・妊娠、育児など

②身体的な要因
・慢性疲労

・月経前、出産後、更年期

・経口避妊薬(ピル)、降圧薬などの服用

・感染症や癌、脳血管障害など

③遺伝的な要因

・生まれつき、脳内の神経伝達物質の働きが良くない

(神経伝達物質については「うつ病発症のメカニズム」参照)。家族や親戚にうつ病患者がいる人に多い。

 

うつ病発症のメカニズム

最近の研究では、脳の神経細胞における情報伝達に異変が起こると、うつ病が発症することがわかっています。私たちの脳には、体に意欲などの感情を伝えたり、記憶などの知的な命令をするとき、神経細胞から別の神経細胞へと情報を伝える「神経伝達物質」というものがあります。神経伝達物質の中の「セロトニン」と「ノルアドレナリン」は、喜怒哀楽や、やる気、記憶など、私たちの感情に関わる情報伝達をコントロールして、心身の働きを活発にしています。  

うつ病とは、先ほどあげた3つの要因などが原因で、神経の細胞と細胞の間にあるセロトニンとノルアドレナリンの量が減少し、情報がうまく伝わらなくなる状態なのです。

下の図は、脳内の神経細胞のイメージ図です。私たちが行動しようとしたり、考えたりするとき、神経細胞AからBへ情報が伝わります。正常な状態の時は、神経伝達物質がAからBへスムーズに伝わるのですが、うつ状態の時は神経伝達物質が減少し、情報伝達が滞ってしまいます。これが、うつ状態を引き起こす仕組みなのですね。

 

もしかしてうつ病? と思ったら…まずは自己チェック

最近ずっと続いている憂うつ感は、もしかしてうつ病かもしれない…と思ったら、まず自己チェックをして、自分の心の状態を推測してみましょう。最近の2週間〜1ヶ月の間で、自分の状態に当てはまっていると思う項目をチェックしてみてください。

 

□(1)そわそわして気持ちが落ち着かず、ちょっとしたことでもイライラしてしまう。

□(2)夜寝つきが悪く、夜中に何度も目が覚める。もしくは、眠れても熟睡した感じがしない。

□(3)体がだるく、疲れやすい。

□(4)原因のよくわからない、漠然とした不安を感じる。

□(5)食欲がない、もしくは食べ過ぎてしまう。

□(6)物事に集中できない。

□(7)朝、気分が落ち込んだり、だるさを感じるが、夕方になると少し良くなる。

□(8)何に対しても悲観的になってしまう。

□(9)以前は楽しめていた趣味や人付き合いが、億劫になってきた。

□(10)毎日の生活に対して、満足感を持てない。

□(11)ふと涙ぐむことがよくある。

□(12)気持ちが沈み、憂うつだ。

□(13)体重が極端に減少、または増加した。

□(14)以前は普通にできていた判断や決断ができなくなった。

□(15)自分は価値のない人間だと思う。

□(16)死んでもいいと思うことがある、または自殺を考えたことがある。

 

チェックした項目から合計点数を出してみましょう

(1)〜(6) …1点

(7)〜(12) …2点

(13)〜(15) …3点

(16) …5点

 

合計(  )点

 

合計点で推測されるあなたのいまの心の状態です。

 

○0〜3点…おおむね健康に保たれているようです。このまま健康に気を遣いながら生活しましょう。
○4〜6点…少し疲れているようです。職場や学校のカウンセラーに相談してみてもよいかもしれません。
○7点以上…うつ状態・うつ病にかかっている可能性があります。 医療機関や精神科で相談してみてもよいかもしれません。

 

 

自分でできる、うつ病対策

ではここで、うつ病の予防&改善策として、自宅でもできることを見ていきましょう。

 

【食事】

うつ病の予防&改善には、まず、私たちの体を作る食事の内容がとても大事です。そこで、脳にセロトニンを増やすなど、私たちの心をサポートする食材を表にしてみました。毎日の食生活の参考にしてみてください!

 

うつ病予防に良い食材

多く含まれる栄養素

はたらき

魚類、豆類、玄米、ニンニク、生姜、バナナなど ビタミンB6 すべてのアミノ酸の代謝に関わり、脳内伝達物質を作る
肉類、レバー、魚類、ピーナッツなど ビタミンB3(ナイアシン) セロトニンを合成する大事な成分のひとつ
牛肉、レバー、豆腐、納豆、味噌、鰻、牡蠣など 亜鉛 ノルアドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質を作る酵素の補酵素
牛肉、豚肉、レバー、魚介類、納豆など セロトニンなどの神経伝達物質を作る、酵素の補酵素
納豆、豆腐、味噌、卵、ゴマ、バナナ、ナッツ類、ヨーグルト、牛乳など トリプトファン(必須アミノ酸のひとつ) セロトニンを合成する大事な成分のひとつ

 

【運動】

週に3回の有酸素運動  

最近の研究では、ウォーキングやランニング、水泳などの有酸素運動を、1回につき30分以上、1週間に週3日間以上行うと、抑うつ状態が改善することがわかっています。抗うつ剤と同等の効果がみられることも多いのだそうです。

 

有酸素運動とうつ病の関係  

70年代以降、年々有酸素運動がうつ病に対して治療的に働くという研究結果の報告が増えていますが、その中でも知名度の高い研究の一つに、1999年、アメリカのデューク大学の研究者、ジェームズ・ブルメンタールが行なった有酸素運動とうつ病の関係についての大掛かりな研究です。  

ブルメンタールはまず、重度のうつ状態にある人も含むうつ病患者156名を選び、約50名ずつ ①抗うつ剤(ゾロフト)だけで治療するグループ ②薬は飲まずに運動療法だけで治療するグループ ③薬と運動療法の両方で治療するグループの3グループに分けました。  

運動は、指導者の下で、中度〜強度の有酸素運動を週に3回、30分間、16週間にわたって行われました。この結果、16週間後にはどの群も同じようにうつ状態が回復しました。さらに、運動をしたグループは体力が著しく向上し、これがうつ状態の改善と、改善の継続、再発の予防に一役買ったということです。

 

 

サプリメント

食事と運動に加え、サプリメントで、うつ病の予防・改善に有効な成分を補ってみてはいかがでしょうか?Swanson Health Products やAmazon.comなどのオンラインでの購入は、見つけやすくてコスパも良いので、オススメですよ。

★ビタミンB群(チアミン、ナイアシン、B6、パントテン酸、葉酸、B12)

ビタミンB群は、ブドウ糖を原料として、全身にエネルギーを行き渡らせるのに欠かせない物質「アデノシン三リン酸」を作ります。

★マルチミネラル

クロム…血糖値をコントロールし、脳を正常に機能させます。 鉄…神経伝達物質を作る酵素の補酵素として酸素を細胞に運び、記憶力、集中力を高めます。 マグネシウム…アデノシン三リン酸とDNAの構成成分である他、エネルギー生産に関わっており、抑うつ、不安、不眠を予防します。

★イノシトール

脳内神経伝達物質の「セロトニン」と「アセチルコリン」を正常に働かせるのに欠かせません。 ★オメガ3、オメガ6 オメガ3、オメガ6は、脳と体をつなぐ神経ネットワーク全体をコントロールする「プロスタグランジン」という、ホルモンのように働く物質を作ります。

★アミノ酸

脳内神経伝達物質は、アミノ酸そのものからできていたり、脳内でアミノ酸を材料としてできたりします。

★セントジョーンズワート

日本語では西洋オトギリ草といい、ドイツでは、抗うつ効果のある薬用ハーブとして医薬品と同等に扱われています。脳内神経伝達物質、セロトニンを増やします。

 

感情を安定させる基礎フォーミュラ(マルチビタミン・マルチミネラル)

出典:『心の病は食事で治す』生田哲(著)/PHP研究所

 

お酒を飲む量に注意する

医療現場では、うつ病とアルコールの関係は「卵とニワトリ」に例えられます。アルコールの過剰摂取は、うつ病の原因である脳血管障害や、ビタミンB1不足を起こします。また、最近の研究では、アルコールを多く摂る人ほど、萎縮による脳の容量が小さくなり、頭脳の司令塔と呼ばれる前頭葉が特に顕著に萎縮するということがわかっています。お酒を飲む時、量に注意するだけでもうつ病予防になるのです。

 

意識して水分を摂る

成人の体は、約60%の水分でできており、人間の生存に欠かせないものです。水分が十分摂れていないと、脳にも影響が出てきます。自分で気づかないうちに脱水状態になることもあるので、是非こまめに水分を補給しましょう。ちなみに、温かい飲み物より、10度前後の冷たい水の方が体に速く吸収されます。お塩をひとつまみ入れると、さらに吸収がスムーズに。

 

 

参考文献:『心の病は食事で治す』生田哲(著)/PHP研究所、『アミノ酸の科学 その効果を検証する』櫻庭雅文(著)/講談社  

参考ウェブサイト:OMCIクリニックutsu.omci-clinic.com、あべクリニック abeclinic.com、社会実情データ図録 www2.ttcn.ne.jp/honkawa/