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サプリメントとは、食事では摂りきれない栄養を補助する、薬効があるとされるビタミンやミネラル、アミノ酸やハーブの成分で、特定の症状を緩和することが目的の「栄養補助食品」です。1910年代にビタミンが発見されて以来、今日まで、サプリメントは世界中の人々の関心を集め続けています。
特にアメリカは世界一のサプリメント先進国と言われていますが、この背景には、アメリカの食事は炭水化物と脂肪分が多く栄養が偏りがちなこと、また医療費が高額なため、健康でいることへの関心が特に高いということがあります。
この特集では、サプリメントとなっている栄養成分の主な働きや飲み合わせ、含まれる食べ物などをご紹介しています。普段あまり食べないものを見つけたら、偏った栄養を補ってバランスを整える1つの方法として、サプリメントを摂ってみてはいかがでしょうか。
ビタミンの発見
1700年代のイギリスでは、レモン、オレンジなどの柑橘類が壊血病予防に有効なこと、日本でも1800年代後半、肉や麦が脚気の予防によいということが知られていました。しかし、その理由までは分かっていませんでした。
1910年、日本人の農芸化学者・鈴木梅太郎が米ぬかから脚気の予防などに有効な成分を抽出し、世界で初めてビタミンを発見しました。その成分には「アミン」という化合物の性質があったため「vita-mine」=「生命のアミン」という名前が付けられました。最初に発見されたこのビタミンは、ビタミンB1(チアミン)でした。これは「オリザニン」という名前で、ビタミンB1剤として商標化されました。
鈴木梅太郎 (1874-1943)
【豆知識 脚気とは?】
脚気は、かつて結核と並んで「日本の国民病」と呼ばれたビタミン欠乏症の一つで、ビタミンB1の不足によって起こる病気です。症状としては、末梢神経の障害による脚のしびれ、心不全による脚のむくみがあります。
平安時代には、ビタミンB1を含まない白米を食べる上流階級の人々がかかる病気でした。
江戸時代、首都の江戸では、玄米よりも白米を食べることがステイタスとされました。地方から江戸に出て来て白米しか食べない人が脚気になったため「江戸わずらい」とも呼ばれました。江戸の麺類が、うどんよりも蕎麦が主流となったのは、経験的にビタミンB1を多く含む蕎麦を食べた方が脚気にならないということが認知されていたためで、漢方医学でも脚気の予防に蕎麦が用いられていました。
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サプリメントの効果を感じるまでの期間は?
サプリメントは主に、継続して摂取することで体に栄養を補給していき、内臓や骨、皮膚などの機能を徐々によくするという目的の食品なので、薬のような即効性のあるものはほとんどありません。
サプリメントの効果を感じるまでの期間は、新陳代謝が行われ、細胞が新しいものに入れ替わる時間を目安にするとよいでしょう。例えば、皮膚は28日、腸や胃の内壁細胞は5日、肝臓は5カ月、赤血球は4カ月、骨は半年〜1年で入れ替わります。全身の細胞は、約1年ですっかり入れ替わると考えられています。健康にしたい部分や個人の体質にもよりますが、最短でも約3カ月間、定期的に摂取することで、効果が感じられることが多いようです。
【豆知識 運動でサプリメントの効果を上げる】
定期的な運動をすると、運動をしない時よりも新陳代謝が促進されます。細胞の入れ替わりがより活発になるため、サプリメントとの相乗効果が期待できます。
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主要ビタミン&ミネラルの働き
●ビタミンA 視覚の暗順応(暗い場所に入っても目が慣れて見えるようになる機能)や、皮膚の健康維持、粘膜からの細菌感染の予防、発育促進などの働きがあります。食べ物では、バター、チーズ、マーガリン、卵、うなぎ、緑黄色野菜などに多く含まれます。油脂に溶ける脂溶性ビタミンです。
●ビタミンB1 体内で糖質をエネルギーに変える働きがあります。食べ物では、胚芽米、玄米、麦、豆類、豚肉などに多く含まれ、豚肉は特に豊富に含まれています。水に溶ける水溶性ビタミンです。
●ビタミンB2 体内で、糖質、脂質、たんぱく質をエネルギーに変える働きがあります。スポーツなどの活発な活動をする方や、疲れやすい方におすすめのサプリメントです。食べ物では、葉物野菜、卵、納豆、乳製品、うなぎなどに多く含まれています。水溶性のビタミンです。
●ビタミンB6 ドイツ人のP・ジエルジーという研究者が皮膚炎を予防する成分として1935年に発見したものです。人間の体内でも、腸内細菌の働きによって少量のB6が作られています。いろいろな食品に含まれるビタミンですが、特に赤身の魚と肉に多く含まれます。水溶性のビタミンです。
●ビタミンB12 葉酸と助け合って血液を作る働きがあり、貧血の予防と改善に有効なビタミンです。また、神経細胞の核酸とたんぱく質を修復し、正常な働きを保ちます。食べ物では魚介類や肉類に多く含まれる一方、野菜や海藻にはほとんど含まれません。普段魚や肉をあまり食べないという方は、サプリメントで補うとよいでしょう。
●ビタミンC 細胞間を結んで支えるたんぱく質の1つ、コラーゲンを作るビタミンで、皮膚や粘膜の健康を維持します。その他、抗酸化作用やストレスへの抵抗力強化、鉄の吸収促進などの働きがあります。食べ物では、柑橘類、イチゴなどの果物や野菜に多く含まれます。水溶性のビタミンです。
●ビタミンD 小腸や腎臓でカルシウムとリンの吸収を促進し、血液中のカルシウム濃度を保つ働きによって、健康な骨を作ります。人間の体内でも、太陽光を浴びることによって少量のDが作り出されています。食べ物では、卵、キノコ、魚介類に多く含まれます。脂溶性のビタミンです。
●ビタミンE ビタミンEは、体内の脂質の酸化を防ぐ抗酸化作用があり、細胞膜の酸化を防いで老化を遅らせたり、血中コレステロールの酸化を防ぐことで動脈硬化を予防すると考えられています。ビタミンEは、構成されるトコフェロールという物質によって数種類に分けられ、最も一般的で効果が高いのは「αトコフェロール」という種類です。食べ物では、植物油、魚介類、ナッツ、アボカド、カボチャなどに多く含まれます。細胞膜にあるビタミンA、体液中にあるビタミンCにも抗酸化作用があるため、これらのサプリメントを一緒に摂るとバランスのよい抗酸化作用が期待できます。油脂に溶ける脂溶性ビタミンです。
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●葉酸(ようさん) ビタミンBの仲間で、ビタミンB9とも呼ばれます。葉酸は、体内で新しく細胞が作られる時に必須のDNA「核酸」を合成する働きがあります。また、ビタミンB12と助け合って血液を作る働きがあるので、一緒に摂るとよりよい効果が期待できます。多くの食べ物に含まれますが、特にブロッコリーやホウレンソウ、モロヘイヤなどの緑葉野菜に多く含有され、葉酸の名前の由来ともなっています。
●カルシウム 人間の体重の1~2%はカルシウムで、その99%は骨と歯に存在します。残り1%は血液などの体液と筋肉などの組織にあり、止血をしたり、神経や筋肉の働きを助けます。体の他の部分と同様、骨は絶えず形成と吸収を繰り返し、新しいものに作り替えられています。摂取したカルシウムは、小腸で吸収され、すぐに使う分は血中に入り、残りは骨に蓄えられます。血中カルシウムが不足すると、骨に蓄えられたカルシウムが壊され、血中へ補われます。食べ物では、牛乳、小魚、海藻、大豆などに多く含まれます。
●マグネシウム カルシウム、リンと共に骨や歯を作っています。成人の体内に20~30gあり、そのうちの50〜60%は骨に存在します。体内でマグネシウムが必要になると、カルシウムと同じように骨から離れて、神経を鎮めたり、血圧を維持するなどの働きを助けます。食べ物では、魚介類、海藻類、穀物類、ナッツ類に多く含まれます。
●亜鉛 正常な味覚を保ち、皮膚や粘膜の健康を維持する働きがあります。成人の体内に約2g存在します。そのほとんどは骨、肝臓、腎臓、筋肉にあります。食べ物では、牡蠣やうなぎなどの魚介類に多く含まれます。
●鉄 体内に3〜4gある鉄は、約70%が赤血球を作るヘモグロビンとして存在し、約25%は肝臓に蓄えられています。ヘモグロビンは、呼吸で肺へ入った酸素を体全体に届ける働きがあります。食べ物では、魚介類や海藻類、大豆やレバーなどに含まれます。サプリメントでは、吸収率の高いヘム鉄(Heme Iron)を選ぶとよいでしょう。
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【主なサプリメントの効能と用法】
※摂取量や相性の良いサプリなど、推奨されるものがない部分は空欄になっています。
※効果はあくまでも一般論です。診断、治療が必要な場合は医師にご相談ください。
サプリメントの成分 | 期待される効果 | 推奨摂取量1日あたりの目安(μg:マイクログラム) | 摂取量 1日あたりの 上限(目安) | 推奨される 摂取の タイミング | 相性のよい サプリメント | 英語名 |
ビタミンA | 視覚の暗順応、細菌感染の予防、美肌 | 800μg | 82700μg | 食後 | ビタミンE | Vitamin A |
ビタミンB1(チアミン) | 疲労回復、美肌、粘膜の健康維持、脳神経の正常な働き | 5.5μg | 食後 | ビタミンB群 | Vitamin B1(Thiamine) | |
ビタミンB2 | 疲労回復、美肌、粘膜の健康維持 | 1.5mg | 食後 | ビタミンB群 | Vitamin B2 | |
ビタミンB3(ナイアシン) | 疲労回復、美肌、粘膜の健康維持、神経系疾患の予防 | 13mg | 250mg | 食後 | ビタミンB群 | Niacin |
ビタミンB6 | 血液・筋肉を作る、疲労回復、美肌、粘膜の健康維持、PMS(月経前症候群)症状の緩和 | 1.4mg | 45mg | 食後 | ビタミンB群 | Vitamin B6 |
ビタミンB12 | 貧血の予防と改善、神経の健康を保つ | 2.4μg | 食後 | 葉酸、鉄、ビタミンB群 | Vitamin B12 | |
ビタミンC | 美肌、アンチエイジング、粘膜の健康維持、ストレス緩和 | 100mg | 食後、就寝前 | ビタミンE、亜鉛、鉄、 コラーゲン、ヒアルロン酸 | Vitamin C | |
ビタミンD | 骨や歯を丈夫にする | 5.5μg | 100μg | 食後 | カルシウム、マグネシウム | Vitamin D |
ビタミンE(αトコフェロール) | アンチエイジング、血流促進 | 6.5mg | 700mg | 食後、就寝前 | ビタミンA、ビタミンC | Vitamin E |
葉酸 | 貧血の予防と改善、粘膜の健康維持、血流促進 | 240μg | 1,000μg | 食後 | ビタミンB12、鉄 | Folic Acid |
カルシウム | 歯や骨を作る、筋肉の働きを助ける、血流促進 | 650mg | 2,500mg | 食後 | ビタミンD、マグネシウム | Calcium |
マグネシウム | 歯や骨を作る、便秘の解消、精神安定 | 350mg | 食後 | ビタミンD、カルシウム | Magnesium | |
亜鉛 | 正常な味覚を保つ、皮膚と粘膜の健康維持、免疫力を高める、血糖値を下げる | 8mg | 35mg | 食後 | ビタミンC | Zinc |
鉄 | 貧血の予防と改善、疲労回復、骨や歯を丈夫にする | 7mg | 40mg | 食後 | ビタミンC、ビタミンB12、葉酸 | Iron |
セレニウム(セレン) | 免疫力を高める、血流促進、アンチエイジング | 30μg | 350μg | 食後、就寝前 | ビタミンC、ビタミンE | Selenium |
オメガ3 | 目と脳の働きを助ける、血流促進、中性脂肪の分解 | 1g | 3g | 食後 | Omega-3 | |
コラーゲン | 美肌、関節痛の緩和 | 10g | 食後、就寝前 | ビタミンC、ヒアルロン酸、 アミノ酸、コエンザイムQ10 | Collagen | |
ヒアルロン酸 | 皮膚の保湿、関節痛の緩和、目の健康維持 | 100mg | 食後、就寝前 | コラーゲン、ビタミンC | Hyaluronic Acid | |
アミノ酸 | 美肌、筋肉を作る、疲労回復 | 70g(タンパク質として) | 運動の前後、疲労時、就寝前 (就寝前はグルタミン以外) | ビタミンC、コラーゲン | Amino Acid | |
αリポ酸 | 疲労回復、アンチエイジング、動脈硬化や糖尿病の予防 | 300mg | 食後 | コエンザイムQ10 | α- lipoic acid | |
コエンザイムQ10 | 疲労回復、アンチエイジング、血流促進、美肌 | 300mg | 食後 | αリポ酸、コラーゲン | Coenzyme Q10 | |
プロバイオティクス | 整腸、食中毒・アレルギー・動脈硬化の予防 | 食後 | パパイヤ酵素 | Probiotics | ||
パパイヤ酵素 | たんぱく質・脂肪・糖分の分解を助ける、整腸 | 食後 | プロバイオティクス | Papaya Enzyme | ||
セントジョーンズワート (セイヨウオトギリソウ) | 更年期障害・自律神経失調症・うつの予防と改善 | 900mg | 1800mg | 食後、就寝前、 PMS時 | St. John’s Wort | |
ギャバ | 精神安定、不眠の改善、血圧を下げる、肥満予防 | 100〜500mg | 1000mg | ストレスを 感じた時、就寝前 | GABA | |
メラトニン | 体内時計の調節、時差ぼけの改善、アンチエイジング | 0.3〜5mg | 就寝前、時差のある場所 へ行く時の機内など | Melatonin |