日本の農林水産省はアメリカ政府との間で、14年間もの歳月をかけて「日本産の生卵」の輸出交渉を続けてきた結果、昨年10月にやっと解禁を合意するに至った。
それを受け、今年2月にグアムで初めて日本産の生卵を販売。日本人が大好きな「卵かけご飯(TKG)」がグアムでも食べられると、現地の日本人を非常に喜ばせた。
全米で最も日本人の多いここハワイでも、日本産の生卵を販売しようと、11月4日「日本産TAMAGO事業説明会&試食会」が開催され、ハワイのレストランやホテル、日系スーパーマーケットなど飲食業界関係者が多数集まった。
日本からは日本養鶏協会の有宗政和氏、卵の生産販売業者MECフーズ小寺隆弘氏、JA全農たまごの新樂健人氏らが来場し、いかに日本産の卵が“安心・安全”であるかをプレゼンテーションした。
とても興味深い内容だったので、読者のみなさんにも概要をお伝えします。
コクがあってクリーミーな日本の新鮮卵、王道のTKGで食す幸せ!
日本産の卵ならではの、徹底した衛生管理
卵は世界中で生産され、中国がケタ違いにダントツで年間生産量3,100万トン。2位はアメリカ630万トン、日本は5位で230万トン。そして日本人の平均消費量は1人あたり年間333個、ほぼ毎日1個食べていることになる。
卵の栄養価の高さは知られたところで、高タンパク、ビタミンC以外の全てのビタミンが豊富で、ミネラルも多い。日本人が大好きな卵、あなたはどんな卵料理が好きですか?
ある調査機関のランキングでは、1位「たまご焼き」、2位「目玉焼き」、3位「親子丼」、4位は「卵かけご飯」、5位「オムレツ」という結果なのだとか。中でも「卵かけご飯」は、近年TKGの愛称で人気赤丸急上昇中だ。
ところがハワイに住んでいると、生で食べられる卵が圧倒的に少ないので、TKGは憧れのふるさとの味。
生や半熟で卵を食べられるようにするには、サルモネラ菌に対して厳しい衛生管理が必要で、生卵を食べる習慣のないアメリカや諸外国では、日本のような徹底的な衛生管理はして来なかったからだ。
昨年、アメリカFDAが発表したサルモネラ菌に関する報告では、全米9カ所の州でサルモネラリコールがあり、毎年3万〜4万人の人がサルモネラ菌に感染し、死者も出ているという。この3万〜4万人という数字はFDAに報告があったもののみで、実際は60万人以上とも言われている。 それに対し、日本で感染報告があったのは、たった1件のみ! 生で食べてもわずか1件だけという、世界に誇る安心・安全ぶりなのだ。
卵の生産販売を展開するMECフーズの生産ラインの映像を見たが、農場で飼うヒナには感染予防のワクチン、エサは加熱、鶏舎はオールインオールアウトで定期的に洗浄殺菌をする。
産卵後の卵を出荷するまでは、建物の衛生管理はもとより、卵1個1個を洗浄、殺菌、乾燥。さらに目視で検品、特殊なカメラやハンマーを使って、卵の内部の白身と黄身の状態までチェックするというのだから畏れいる。 日本産の卵は、ジャパンクオリティーの高さの結晶なのだ。
クイーンカピオラニホテルで卵かけご飯!
さて、そんな安心安全の日本産の生卵、一体いつから食べられるのだろうか?
実は日本の卵の輸出について、アメリカ政府はハードルの高い輸出条件をつけている。 「産卵後36時間からアメリカに輸送されるまでの間、摂氏7.2度で冷蔵されていること」などの条件だ。もちろん輸送は空輸。
これを実現するために今回ハワイに送られた試食会用の卵は、段ボールと発泡スチロールで厳重に温度管理されて運ばれて来たのだという。
一体いくらで売ればハワイでの採算が合うのか!? 消費者目線でいえば安ければ安いほどいいけれど、実際問題かなりのコストがかかることは事実。11月4日の試食会の後には、ハワイの食品業界との商談会が催された。
日本産の卵、いつどこで食べられるか、売られるかは現時点では未定だが、今回のイベントの会場となった、クイーンカピオラニホテル3FのレストランDeck、サンデーブランチビュッフェでは、以下の日程で「TAMAGOステーション」を設け、TKGやオムレツなど好みの卵料理をオーダーできるという。
Deckでの試食会には、ポケと卵黄のマリアージュ、ロコモコ、卵サンド、プリンなどの卵料理が並んだ
写真左から、有宗氏、新樂氏、小寺氏
(取材・文 奥山夏実)
クイーンズ ブランチ ビュッフェ 『TAMAGO』ステーション
【日時】11月17日(日)、24日(日)、12月1日(日) 11am〜3pm
【ビュッフェ料金】大人(13歳以上)$55〜(税サ別)
【会場】Deck クイーンカピオラニホテル3F(150 Kapahulu Ave)
【予約・問合せ】TEL808-707-9388
(日刊サン 2019.11.12)