ストリートからカーネギーホールへの道 Vol. 5 by Shige
2012年はたくさんのオペラのオーディションを受けました。その中で若手オペラの登竜門と呼ばれているBronx Opera CompanyとNew York Lyric Operaという歌劇団のオーディションに受かり、オペラ公演に出演しました。
まずはブロードウェーにあるシンフォニーホールで開かれた「カバレリアルスティカーナ」と「道化師」という演目です。 実をいうと、本番よりもリハーサルの方が緊張して胃が痛くなるほどでした。
みんな譜読み(楽譜読むこと)が恐ろしく早いので、ついていくのが大変。さらにイタリア語でもすぐに歌えてしまうのです。大学時代もっと勉強しておくべきだった・・・と思いました。
音楽を勉強しているみなさん、譜読みが早いと将来役に立ちますよ!(僕は本格的に音楽の勉強を始めたのが大学受験の時だったので、譜読みが遅かったのです)。
また、リハーサルの帰り道、汗びっしょりになった体がすっかり冷えてしまい、本当に冷や汗ってあるんだなーっと、一人帰り道に笑ってしまったのを思い出します。
そして、帰宅後も自主練習するという生活を2週間続け、公演も無事に終わったある日、久しぶりにリラックスしてセントラルパークで歌っていました。
その日は、前回のコラムでご紹介したキャシーが友達を連れて見に来てくれました。その友達というのが、New York Metropolitan Operaに20年以上在籍している歌手のガースさんです。
僕は本当に肝っ玉が小さく、オーディションなどでは、膝はガタガタと音を立て、途端に上手く歌えなくなるほど緊張してしまうですが、でも、この日は全くそんな風にはなりませんでした。
なぜなのか、それはまず絶対的な練習量(一日5時間は歌っていました)です。そして、自分の音楽人生に満足していたからなのかなと思います。誰かと比べるわけではなく、自分自身の実力と対話ができ、足りない所もいい所も知っていると言うことでしょう。
皆さんもコンクール等で演奏する時緊張してしまうと思います。でも、いいんですよ! 例え、落ちようが受かろうが、音楽を楽しむことが僕は一番大事だと思っています。そうやって、良い意味で開き直ることができた時、緊張もなく自分の力を発揮することができるのだと思います。
なので、親御さんは、子ども達の音楽が好きだというキラキラした心を、ぜひ大切にしてあげてください。 僕はちょうど歌の先生を探していたのですが、ガースさんは僕の声質とテクニックを絶賛してくれ、New York Metropolitan Operaのマーク先生を紹介してくれました。
「マークに会いなさい、私から推薦しておきます」とその場で電話してくれました。また、誰かのサポートのお陰で新しい扉を開くことができたのです。 あの頃の僕は、未来のことを考えず、とにかく今を生きる、そう決めて毎日たくさん歌っていました。
音楽って色々なところに連れて行ってくれる素敵な恋人みたいなものですね(笑)。あれから7年後、まさかハワイで楽しく暮らしているなんて、想像もしていませんでしたから。
(文=中野成将)
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(日刊サン 2019.11.01)