カリフォルニアのメンロ大学4年のクリスタル・セベドさんは、ワイアナエ中学7年生の時に、自身の最も辛い体験をフィルムに収めた。セベドさんが母親を看病し、母親の死の受け入れる姿を撮影したそのショートフィルムは、公共放送サービスPBSハワイの学生ニュース・ネットワークの「ヒキ・ノー」で放映された。
2011年にヒキ・ノーが開局する前の段階では、さまざまな学校の10代の若者が、州の公共テレビであるヒキ・ノーの視聴者に適したニュースや番組を毎週作成できるかどうかが大きな課題となっていた。
しかし、セベドさんのような物語がこれを可能にした。 ハワイの90の公立・私立学校は現在、全米初の学生ニュース・ネットワークである「ヒキ・ノー」と繋がっており、これを利用する学生たちによって、小さなハワイ州が全国レベルで注目を浴びている。
ヒキ・ノーを利用するハワイの23校の生徒は3月、シアトルで開催された、学生テレビ・ネットワーク大会(全米の約3千人の学生と教師が参加)で35の賞を獲得した。
この獲得した賞の数は、全ての賞のほぼ5分の1に当たる。 PBSハワイの自発学習担当部長で、ヒキ・ノーのエグゼクティブ・プロデューサーを務めるロバート・ペニーバッカー氏は、「30分間番組を始める時、恥ずかしくないレベルの番組が組めるか心配であったが、出来上がった作品の質、内容、内容の深さは、予想を大きく超えるものであった。学生は、専門家とは違ったコミュニケーションの仕方で、自分たちの見たものをそのままフィルムに収められる」と述べた。
若者は、スマートフォンで撮影することに慣れており、ビデオ撮影を自然にこなすことができる。しかし、プロレベルでニュース記事を伝えるには、はるかに多くのことが要求される。ヒキ・ノーは、「プロジェクトを通じた学習」の場所を提供し、学生に創造性を与え、「現実の世界」と繋げる役割を果たしている。
学生は、技術的なスキルと機器の扱いを習得するとともに、仲間と協力し、コミュニティの問題を分析し、その場で問題を解決し、期限内に仕上げることを学んでいる。さらに、すべてのストーリーに彼らの新しい視点を取り入れている。 生徒は、ライフスタイル、逆境を克服したストーリー、ノーベル賞受賞に貢献した人の話、など幅広いトピックを選択している。 このプログラムで「ソフトスキル」を学ぶことによって、学生の未来が大きく開けているという。
ヒキ・ノーのプロジェクトは、生徒と教師の話し合いで、通常の授業、選択科目、放課後クラブ活、のいずれかで行うことができ、週末と深夜まで及ぶこともある。
このプロジェクトの過程で、生徒たちは、互いにコミュニケーションを取り、違いを認め、批評や提案に寛容になり、妥協する方法を見つけ出そうとするようになる。そして、スキルを習得し、自信を持つようになるという。 ヒキ・ノーの運営は寄付に大きく依存しており、ハワイ銀行基金、カメハメハ・スクール、ABCストアがメイン・スポンサーである。
(日刊サン 2019.09.14)