今季からはレイカーズの黄色と紫のユニフォームを身に着けるジェームス(23番)
オフシーズン中のNBAでは「キング」が話題になっています。キングと言えば、シアトルではマリナーズのフェリックス・ヘルナンデスですが、バスケ界では「キング・ジェームス」の愛称で知られるレブロン・ジェームス。7月1日にロサンゼルス・レイカーズと4年1億5330万ドルの契約に合意しました。
レブロンが出身地クリーブランドのキャバリアーズを去るのは、マイアミ・ヒートへ移籍した2010ー11年シーズンに続き2度目。チーム初優勝を達成できないまま、自身は戦力の揃ったマイアミへ移籍した前回は、ファンが背番号23のユニフォームを燃やしたり、チームのオーナーが辛辣な声明を発表するなど、裏切り者扱いされましたが、今回は謝辞を贈られながらの移籍です。
ヒートで2度優勝を果たした後、2014ー15年シーズンに古巣へ復帰したレブロンは、全米一の惨めなスポーツタウンと言われるクリーブランドに52年ぶりの優勝トロフィーをもたらした英雄。1勝3敗の崖っぷちからの3連勝による優勝はNBA史上初。
対戦相手ゴールデンステート・ウォリアーズは73勝9敗の史上最高勝率でレギュラーシーズンを終えたチームだったけに、地元ファンにとっては一生忘れられない思い出でしょう。
新天地は強豪揃いの ウエスタン・カンファレンス
新天地のレイカーズは、2016年にコービー・ブライアントが引退してからチーム再建期に突入。選手はもとより、監督のルーク・ウォルトンもまだ38歳の若いチームです。そこへ百戦錬磨のベテランが加入することで、どれだけチームが改善されるかに注目ですが、4年連続でプレーオフを逃していたキャバリアーズは、レブロン復帰初年度から4年連続でNBAファイナルへ勝ち進んでいます。
ただ、レイカーズが所属するウエスタン・カンファレンスは強豪揃い。特にステフィン・カリーやケビン・デュラントを擁するゴールデンステート・ウォリアーズは、レブロン率いるキャバリアーズが4年連続でNBAファイナルで対戦し、3回優勝を阻まれた相手です。
また、レギュラーシーズンではそのウォリアーズよりも高い勝率を残し、カンファレンス優勝戦ではウォリアーズを相手に3勝2敗と王手をかけていたヒューストン・ロケッツも、ウエスタン・カンファレンスに所属。今季からはこの両チームを倒さないことには、NBAファイナルへ進むことさえできません。
バスケの神様ジョーダンに追いつき、 追い越せるか?
サイズ、スピード、パワーの三拍子が揃い、高校時代から「選ばれし者」と呼ばれてきたレブロンも、12月には34歳の誕生日を迎えます。バスケ史上最強選手と言われるマイケル・ジョーダンが一旦現役を引退した年齢です。レブロンは今季でプロ入り12年目。13年目終了後に一旦引退し、3年間のブランクを経て復帰したジョーダンはNBAで通算15年間プレーしました。
昨季のカンファレンス優勝戦ではジョーダンが持つポストシーズン通算最多得点記録(5,987得点)を塗り替えるなど、レブロンがジョーダンの個人記録を抜く度に、レブロンはジョーダンに匹敵するか、それより勝る存在か?の議論が盛んになります。
しかし、誰もジョーダンに勝るとは言い切れないのは手にした優勝リングの数に開きがあるため。NBAファイナル出場6回で3連覇を2回達成したジョーダンに対し、レブロンは出場9回で優勝回数は3度のみ。そのジョーダンでさえ、優勝回数は11回で歴代最多のビル・ラッセルから数えて10番目。上には上がいるものです。
チームメイトやコーチに恵まれたジョーダンと優勝回数を比較するのは不公平ではないかと指摘する人もいます。当時のシカゴ・ブルズにはジョーダンの右腕として知られ、殿堂入りも果たしたスコッティ・ピッペンやデニス・ロッドマン、スティーブ・カー(現ウォリアーズ監督)が所属し、そして監督のフィル・ジャクソンはジョーダンが所属していたシカゴ・ブルズ時代に6回、コービー・ブライアントが所属していたレイカーズ時代に5回、チームを優勝へ導いた殿堂入りの名将です。
2016年当時はウォリアーズのアシスタントコーチだったルーク・ウォルトン現レイカーズ監督(左) |
一方、レブロンのこれまでのチームメイトに現時点で殿堂入りできるような選手は見当たらず、ヒート時代のエリック・スポルストラ監督も、キャバリアーズ時代のタイロン・ルー監督も同様です。バスケットボールはチームスポーツですが、一選手がチームに与えたインパクトの大きさを考えれば、レブロンの右に出る者はいないでしょう。残された選手生命でせめてジョーダンの優勝回数を超えることができれば、異論なしのGOAT(Greatest of All Time)と呼ばれることは間違いないはずです。