女子プロバスケットボールのWNBAで先月、シアトル・ストームが通算3度目の優勝を果たしました。ストームは2015年から渡嘉敷来夢選手も契約しているチームですが、今季は日本代表の練習に専念するため全試合欠場。そのシーズンにチームは8年ぶりの優勝トロフィーを手にし、先月16日には小雨が降る中、シアトルで優勝パレードが行われました。
史上3度目の優勝ともあり、選手は3台のトローリ―に乗り分かれ、1台に1つ、選手が優勝トロフィーを掲げてチームのホームコートがあるキー・アリーナ周辺をパレードしました。 シアトルでの優勝パレードは2014年のシーホークス(NFL)、2016年のサウンダース(メジャーリーグサッカー)に続き、この5年間で3度目。シーホークスとサウンダースはともにチーム初優勝でした。
2年ごとに地元のいずれかのスポーツチームが優勝トロフィーを手にしており、今年は前半好調だったマリナーズ(メジャーリーグベースボール)にもプレーオフ進出の期待が寄せられていました。しかし、オールスター戦の休み明けから急失速し、イチロー選手がデビューした2001年以来初となるプレーオフ進出は再びお預けになりました。2年後にはシアトルで遂にマリナーズの優勝パレードが見れることを願いたいです。
スー・バードの右に並ぶ者なし
ストームの司令塔は37歳のスー・バード。イチロー選手がマリナーズに加入した翌年に当たる2002年にドラフト全体1位指名でチームに入団後、プロ入り3年目の2004年にチームを初優勝へ導き、2010年にも2度目の優勝を果たしたベテランです。 今季でプロ入り17年目で優勝経験3回のバードは、アメリカ代表選手としてオリンピックにも4回出場。
2004年のアテネ五輪から2016年のリオデジャネイロ五輪まで4大会連続出場で金メダルを4つ獲得するなど、輝かしい功績を残しています。そして、コネティカット大学時代には全米優勝を2回経験。シアトルで最も偉大な選手と言っても、過言ではないかもしれません。
ただ、通常、シアトルで最も偉大なスポーツ選手は誰か?と聞かれると、大抵元マリナーズの外野手で2016年に史上最高得票率(99.3パーセント)で球界殿堂入りしたケン・グリフィーJr.の名が挙がります。グリフィーはメジャーで21年間プレーし、通算630本塁打は歴代7位。マリナーズをフロリダ移転の危機から救った英雄とみなされており、偉大な選手には違いありません。
しかし、ストームがNBAのチームで、バードが男子選手だったら、確実にグリフィーに匹敵するか、上回る英雄扱いを受けているはずです。シアトルのメジャーなチームスポーツで複数の優勝経験があるのはストームのみ。マリナーズには優勝経験どころか、ワールドシリーズ出場経験さえありません。
若手コンビの台頭
ストームが2004年と2010年に優勝した際は、バードの1年先輩で、2001年のドラフト全体1位指名で入団したオーストラリア出身のローレン・ジャクソン(2016年に引退)とバードの両エースがチームを牽引しました。それから8年後の今季は、2015年と2016年にドラフト全体1位指名でチームに加入した若手コンビが台頭し、ベテランのバードを支えました。
2015年のドラフト全体1位指名選手のジュエル・ロイドと2016年のドラフト全体1位指名選手のブリアナ・スチュワートはともに今季の急成長株。特にスチュワートはクリーブランド・キャバリーズ時代のレブロン・ジェームスのように試合に出ずっぱりで活躍し、レギュラーシーズンとWNBAファイナルのMVPに選出されました。
レギュラーシーズンとWNBAファイナルズのMVPに輝いたブリアナ・スチュワート(左) |
身長193センチのスチュワートはコネティカット大学の1年生シーズンから先発出場し、4年連続で全米優勝した負け知らず。同じくコネティカット大学出身のバードの後輩に当たります。
バードと同様に前年度のドラフト全体1位で別の選手を指名した翌年に、ドラフト全体1位でストームから指名され、入団後3年目のシーズンに優勝リングを手にすることになったのは、偶然とはいえ、何か不思議なつながりを感じます。まだ24歳で、同い年のロイドと共に、ストームの第2次黄金期を築く中軸として期待されています。