レイブンズのキャンプで練習するジョー・フラッコ(2015年8月)
アトランタで行われた第53回スーパーボウルは、ニューイングランド・ペイトリオッツがロサンゼルス・ラムズを13-3で破り、通算6度目の優勝を遂げました。リーグトップクラスの得点力を誇る2チームの対決だけに乱打戦が予想されていたものの、試合残り7分まで両チームともタッチダウンなし。
第4クォーターにようやくタッチダウンを決めたペイトリオッツがそのまま逃げ切り、ピッツバーグ・スティーラーズと最多優勝タイに並びました。
オフシーズンへ突入したNFLは3月13日に新年度を迎えます。今季が契約最終年の選手はこの日からフリーエージェントとなり、チーム間の選手トレードも解禁となります。ただし、水面下ではトレードの交渉が始まっており、3月13日の解禁日に即、合意が発表されるケースも多々あります。
すでに正式発表待ちと報道されているのは、ボルティモア・レイブンズのクォーターバック(QB)ジョー・フラッコのデンバー・ブロンコスへのトレードです。フラッコは2008年のドラフト全体18位指名でレイブンズに入団して以来、新人シーズンから11年連続で先発QBを務め、2012年シーズンには第47回スーパーボウルで優勝。スーパーボウルのMVPにも選出された選手です。
しかし、今季は11月のスティーラーズ戦で股関節を痛め、次戦から欠場を余儀なくされました。その間に代役で新人のラマー・ジャクソンが大活躍し、それまで4勝5敗と負け越し、ジョン・ハーボー監督の解任もささやかれていたチームは残り7試合を6勝1敗で終え、レギュラーシーズン最終日に地区優勝。
故障から復帰したフラッコはジャクソンの控えに回り、一度も出場機会を与えられないままレイブンズを去ることになりました。 QBといえば、アメフトでも花形のポジションですが、フラッコは非常に物静かで控えめな選手です。
スーパーボウル優勝後に6年1億2,000万ドルもの契約を手にしましたが、リムジンサービスではなく、シャトルバスに乗って空港へ向かう姿がファンのカメラに収められるなど、堅実なタイプ。
プレースタイルも同様で、ジャクソンを含め、自ら走ってヤードを稼ぐモバイルタイプのQBが増える中、典型的なポケットパッサー(オフェンスラインの選手の壁で作られたスペース内に留まってパスを投げるタイプのQB)として知られます。
マニングの後継者探しが続くブロンコス
フラッコの新天地となるブロンコスは、2015年シーズンのスーパーボウルで優勝後にペイトン・マニングが現役を引退して以来、後任が定まっていません。
マニングの跡を継ぐはずだった控えQBのブロック・オスワイラーは、より高額な契約を求めてヒューストン・テキサンズへ移籍。そのため2016年シーズンのブロンコスは当時プロ入り2年目のトレバー・シミアンを先発起用しましたが、9勝7敗で地区3位へ転落し、その翌年は5勝11敗で地区最下位に終わっています。
今季は2017年シーズンに3番手QBならがもミネソタ・バイキングスをプレーオフへ導いたケース・キーナムを先発に迎えましたが、2年連続の負け越しで6勝10敗。3年連続でプレーオフ進出を逃した挙句の果てに、ジョン・エルウェイGMが白羽の矢を立てたのは、レイブンズの先発QBの座を失った34歳のフラッコでした。2012年に36歳のマニングを迎え入れた状況とよく似ています。
1998年の新人シーズンからインディアナポリス・コルツの先発QBを務め、2006年シーズンにはスーパーボウルで優勝を果たしたマニングは、首の大手術を受けた2011年シーズンを全休しました。リーグ最下位に終わったコルツは2012年ドラフトの全体1位指名権を手にし、数年に一度の逸材と言われたアンドリュー・ラックの獲得が確実となりました。
それを見越したコルツはドラフトの2ヵ月前にマニングを解雇。以前のようにプレーできるのか?という疑問が残る中、複数のチームが争奪戦を繰り広げた結果、マニングはブロンコスと契約。以後、マニングが現役を引退するまで、ブロンコスは4年連続でプレーオフへ勝ち進み、優勝を果たした2015年シーズンを含めてスーパーボウルに2度出場しています。
今回もスーパーボウル優勝経験があるベテランのフラッコを加入させることで、プレーオフ返り咲きを狙っているはずですが、ブロンコスが所属するAFC西地区はリーグ屈指の激戦区となっています。
今季はカンザスシティ・チーフスとロサンゼルス・チャージャースの2チームが12勝4敗の好成績でプレーオフへ進出。中でもリーグMVPと最優秀オフェンス選手に選出されたプロ入り2年目のパトリック・マホームズ率いるチーフスは、選手層が若いだけに来季もペイトリオッツと並んでAFCの優勝候補に挙げられています。
また、フラッコが加入することで短期的なQBが見つかっても、長期的な解決策にはならず、ブロンコスのQB探しはまだまだ続くことになります。
ブロンコスの本拠地マイルハイ・スタジアム |