今年3月に引っ越してきたばかりのハワイ新参者、Renee’s Music School の講師の中野成将(シゲマサ)です。僕の音楽の旅は2011年、ポケットに十万円を握りしめ日本からNYへ渡米したところから始まりました。成田空港で友達や家族に見送ってもらい、機内では母が作ったおむすびを食べ、新世界に対する期待と不安で一睡もできませんでした。
12時間後、飛行機はNYへ到着。憧れ続けた自分にとって“音楽の聖地”アメリカ。その大地を初めて踏みしめた時の胸の高鳴りは今でも忘れられません。 2月のNYは、東京とは違う肌を突き刺すような寒さ。なんとも幸せなことに、小・中学校の同級生が空港まで迎えにきてくれ、その後1カ月ほど彼の家にお世話になりました。
当時は仕事のツテなど何もなく、どうやってお金を稼ごうかと早速マンハッタンをうろうろしてみました。東京の2倍以上の高さのビル、ブロードウェイの眩しい看板、街に渦巻くエネルギーに圧倒されました。地下鉄では沢山のミュージシャンが演奏をしていて、目の前のギターケースには沢山のお金が入っていました。「これだ!」と思い、次の日にはギターを抱えてTimes Square 42nd Streetで演奏をしてみたのです。
ニューヨーカーはとても冷たく、評論家気取りの人が多いと聞いていたので、内心はとても緊張して、膝がガクガク震えていましたが、慣れた素振りでギターケースを開け演奏を始めてみました。後でわかったことなのですが、ストリートパフォーマンスは場所が命です。僕が始めた場所は全く収入の見込めない最悪な場所でした。
なかなかお金が投げ込まれません。「はあ、ダメかな・・・」そんな風に思い始めた時に、ビジネスマン風のスーツの方が1ドルを入れてくれました。心がパッーと明るくなり、暗い、臭い、汚いNYの地下鉄が一瞬にして薔薇色に変わったのです。 さらにとても嬉しかったのは、お金を入れるときに「Thank You」とか「Beautiful!」とか、言葉をかけてくれるのです。
NYの人々は音楽にきちんと敬意を払ってくれ、優しく、心が救われ、癒されました。「音楽は世界共通言語」などとよく耳にしますが、僕も実感を持ってそう感じます。英語が片言の中で沢山の友達ができたのも、音楽が繋げてくれたのです。 ある日、僕が42ndで演奏していると、ボロボロの服を着たおじさんが、ずーっと聴いてくれていました。
彼の名前はポップ、68歳のホームレスでした。彼は1曲演奏が終わるたびに、チップをくれました。「もう結構です、ありがとう!」と伝えても、「たかがお金じゃ」とチップをくれ続け、断る僕とお金を無理やり渡してくる彼とのやり取りはまるでコメディのようで、電車を待つ人達にも笑顔がこぼれていました。しまいには$20以上になっていましたが(笑)。
別れ際に「おぬしの音楽は人を幸せにするのぉー!これからも辞めるでないぞ!」と言いながら、大きなカートをゴロゴロと引いて去っていきました。僕はその大きな背中に一礼をして見送ったのでした。 億万長者からホームレス、人種の垣根もなく、音楽によってみんなが繋がることができます。そして、年齢も関係なく、音楽はいつ始めても遅いということはありません。
皆さんもRenee’s Music Schoolで僕達と一緒に音楽の旅に出ませんか?きっと素晴らしい出会いや発見が待っていますよ。
(文=中野成将)
Renee’s Music Studio
ドンキホーテそばのハワイの音楽教室。リトミック教室から音大受験コースまで幅広いコースが選択可能。日本語・英語どちらでも対応。ピアノ、ウクレレ、ドラム、ギター、歌など趣味で音楽を嗜みたい人もウエルカム。トライアルレッスンも可。
(日刊サン 2019.08.23)