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科学・哲学が融合した インドの伝統医学 アーユルヴェーダ

Bynikkansan

2月 26, 2019

アーユルヴェーダは、インドとスリランカの伝統的な医学体系です。その原型理論が出現したのは約3000年前と言われています。病気を治すための西洋医学とは異なり、病気になる前に予防を図り、寿命を伸ばす予防医学が重視されています。

 

アーユルヴェーダでは、①身体、②心、③魂(意識)、④5大元素(土、水、火、風、空)の4つの要素が互いに影響し合いながら、人間の健康状態を左右していると考えられています。今回の健康特集では、アーユルヴェーダの概要、トリドーシャと呼ばれる3つの体質とその診断、今日から実践できる各体質に合った食事や行動などをご紹介したいと思います。

 

 

アーユルヴェーダとは

アーユルヴェーダという名前は、サンスクリット語で「生命」を意味する「アーユス」、「科学」を意味する「ヴェーダ」が合わさった言葉です。  医学、哲学、科学など、多くの概念を取り入れたアーユルヴェーダでは、心、体、食事、運動、行動、環境など、その人を取り巻くもの全体のバランスをとって自己治癒力を高め、病気の治療や予防、若返りや健康の維持、増進を図ります。

 

MEMO

アーユルヴェーダとが医学体系としてまとまったのは、紀元前6世紀頃といわれています(諸説あり)。その医学体系は、バラモン教、ヒンドゥー教の聖典『ヴェーダ』の関連書物で宇宙の根本原理を追求した「ウパニシャッド」や、サーンキヤ学派の二元論、ヴァイシェーシカ学派の自然哲学、ニヤーヤ学派の論理学などに基づいています。

 

 

アーユルヴェーダの治療

アーユルヴェーダの治療には、大きく分けて次の2つがあります。  

 

1つ目は、食事、薬、調気法というヨーガの呼吸法、日常行動の改善などでドーシャのバランスを整える緩和療法(鎮静療法)、2つ目は、増大、増悪したドーシャ(次項参照)、アーマ(未消化物)、マラ(老廃物)など、病気の原因となる要素を身体の外に出す減弱療法(排出療法・浄化療法)。

 

減弱療法では、浣腸、油剤、下剤、吐剤を使う「パンチャカルマ」というデトックス治療法が用いられます。また、霊的な部分の治療として、ジョーティシュ(インド占星術)やマントラ(呪文)、宝石療法なども取り入れられています。

 

 

 

3つの生命エネルギー ヴァータ、ピッタ、カパ

出典:https://www.heymonicab.com/blog/Ayurveda-Basics-The-Three-Doshas

 

サンスクリット語の「ドーシャ」の意味はさまざまで「体液、病素、不純なもの、増加しやすいもの、病気の根本的な原因」などに訳されます。これらを総合し、ドーシャは「生命エネルギー」とするのが一般的です。アーユルヴェーダでは、人間を含めた全ての生物はトリ・ドーシャと呼ばれる3つの生命エネルギーから成り立っていると考えられています。

 

それぞれのドーシャはサンスクリット語でヴァータ、ピッタ、カパと呼ばれています。各人で優勢になるドーシャは異なりますが、それは体質や性格の違いとして現れます。  

 

アーユルヴェーダでは、どのドーシャが優勢かによってその人の体質を図り、それを基本として、食事や生活の指導、病気の治療を進めていきます。各ドーシャの特徴やドーシャ型の診断については、後述していますのでそちらをご参照ください。

 

 

五大元素 土、水、火、風、空  

ドーシャは、古代インド哲学に由来し、パンチャ・マハーブータと呼ばれる5大元素に支配されています。この5大元素には、土(プリティヴィー)、水(アーパ)、火(アグニ)、風(ヴァーユ)、これら4つの元素に活動と存在の場を提供する空(アーカーシャ)があります。 3つのドーシャで、ヴァータは風・空、ピッタは火・水、カパは水・土がそれぞれの支配元素と考えられています。

 

 

病気や不調はドーシャのバランスの崩れ  

ドーシャは、3つのバランスが取れた状態では健康を守るエネルギーとしてはたらきますが、どれかが過剰になり、バランスが崩れると病気を引き起こすと言われています。

 

ヴァータの過剰は呼吸器系、精神・神経、循環器の不調を、ピッタの過剰は消化器系、肝・胆・膵、皮膚の不調を、カパの過剰は気管支の不調のほか、糖尿病、肥満、関節炎、アレルギー症状を引き起こすと考えられています。  

 

ドーシャのバランスを崩す原因として、日常生活、時間帯、場所、天体の運行がありますが、主な原因は「プラクリティ」と呼ばれる体質にあると考えられています。

 

 

各ドーシャの量は、時間帯、季節、年齢でも変化  

ドーシャは、1日の中では朝6時から4時間ごとにカパ→ピッタ→ヴァータのサイクルで増えやすくなると言われています。1年の四季の移り変わりでも変化し、春はカパが増悪、夏はヴァータが増大、秋はピッタが増悪、冬はカパが増大します。また、ハワイのように乾季と雨季がある場所では、雨季はヴァータが悪化しピッタが増大すると言われています。  

 

一生の中でも変化があり、それぞれのドーシャが増え易い年齢があります。カパが増えやすいのは0〜30歳の若年期、ピッタが増えやすいのは30〜60歳の壮年期、ヴァータが増えやすいのはその後の老年期とされています。各人の優勢ドーシャが増えやすい時期や時間は、ドーシャのバランスが崩れて心身に不調をきたすと言われています。そのため、自分の優勢ドーシャをもとに、不調への対策を取ることができます。また、食べ物や日常生活での行動などでもドーシャの量は変わると考えられています。

 

 

MEMO

ホリスティック医学  

アーユルヴェーダのように、心身のバランスや調和を重んじる医学をホリスティック医学といいます。ホリスティック医学を取り入れた伝統医学には、アーユルヴェーダのほか、4体液(血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁)の調和を図るユナニ医学(ギリシャ・アラビア医学)や、陰陽五行のバランスを図る中医学などがあります。

 

ヨガニードラとは  

ヨガニードラは、仰向けに横たわる休息の姿勢「シャバーサナ」をしながら行うリラクゼーション方法です。ストレスマネジメントとして取り入れている人もいます。ヨガといえば、身体にフォーカスした運動の一種で、アーサナをメインとしたハタヨガが一般的です。一方でヨガニードラは、体を横たえた状態で自分の内面を観察し、心を鎮めることを目的とするヨガです。

 

仰向けに寝て目を閉じ、足は腰幅より少し狭目に開き、腕は脇の下に卵が一個入るくらいの隙間を開け、手のひらは上にします。そして頭から足まで、身体の各部位に意識を向けながら意識的にリラックスするという能動的な瞑想方法です。