ハワイの教育コラム|イゲット千恵子の子供をビジネス脳にする
Vol.11 学校給食はビジネス
美味しい給食で育った日本人は、アメリカの学校給食に驚くことも多いと思います。日本の学校のように栄養士が献立を作り、大勢の給食職員が日々、学校で給食を作る学校などはほとんどありません。企業が給食を作って学校へデリバリーする給食ビジネスが成り立っているので、食生活の取捨選択は家庭にあるのがアメリカで、給食に過度な期待をしていないです。
私も最初、息子が幼稚園に入学した時、「ランチがおいしくない」と言って、1 ヶ月ほど、給食に何も手をつけずに帰ってきました。まさかのジャンクフードが出されると思ってもいなかったので、献立を見てびっくりしました。
アメリカはなぜ給食を重要視しないのでしょうか? 学校は教育の場で、就学前に食事習慣などの基本的な生活習慣を身につけさせるのは家庭で行うべきことだからです。学校予算は、質の高い先生を雇うための人件費に使うため、給食にはあまり重きを置いていないのです。
また、移民も多く多国籍だからこそ、宗教的な理由で食べないものもあります。学校では、栄養や肥満などの健康の授業はあるが、食生活については、各家庭に任されています。
ランチ代は別料金で、全員に給食が支給されるわけではありませんが、普通盛りと大盛り料金があったりするのは、アメリカならでは。ここも売り上げを上げるためのビジネスになっているのです。
逆に、オーガニック食材で作る給食がウリの私立校があるのは、健康意識の高い親のニーズに合わせた学校ブランディングであって、働いている親にとっては、少し割高でも安心な食べ物を提供してくれる学校に通わせたいのです。
またお菓子やジュースの自動販売機が学校に設置されているのも、学校運営のためのビジネスです。ジュースを飲ますか否かは「健康は教養の一つ」であり、毎日、買ってしまう消費者に育てるか、育てないかは、家庭の教育にかかっています。
アメリカは肥満大国でありますが、健康格差は所得格差と非常に比例しています。安くて、量が多く、お腹がいっぱいになることを希望する人にとっては、“食事とはお腹を満たすこと”ですが、“食事とは健康の基礎であり、さらに誰かと楽しむためのもの”である人にとっては、そこにお金をいくら払っても価値があるわけですね。
著者プロフィール:イゲット千恵子オアフ在住、日米で会社経営&作家。2017年に「経営者を育てるハワイの親、労働者を育てる日本の親」を出版し、日米の教育の違いによるビジネスパーソンの仕上がりの違いを書いた本が話題となる。日米での事業は、グリーンスパハワイ、通販事業、スクール、教育事業、ハワイ教育移住、執筆、講演、セミナーなど、詳しくは、WEBサイト chiekoegged.com |