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ハワイで食育を考える

Bynikkansan

5月 17, 2019

“糖質”は 善か?悪か?

 

アロハ! 今回は食育についてもう少しお話してみようかと思います。

 

私がハワイに来てもう8年になりますが、当初から驚いていたのが現地の人の体の大きさ!です。なるほど、3人に1人が肥満という世界一の肥満大国アメリカ。その理由がポットラックパーティーなどに招待されるようになってようやくわかりました。

 

パスタ、サンドイッチ、マカロニ、フレンチフライ、チップス、ピザ等、糖質食品のオンパレード! 野菜は申し訳程度のサラダがあるだけで、これらの食事をとった後に、さらにアイスクリーム、クッキー、パイ等のデザートが振舞われて、大人も子どももきれいに完食! これでは太るはずです。

 

糖質の過剰摂取は肥満に繋がるだけではありません。皆さんも“シュガーハイ”という言葉を一度は聞いたことがあると思います。シュガーハイとは空腹状態で甘いものを摂取することで、血糖値が急激に上昇し、興奮状態に陥る症状のこと。糖分の分解にはビタミンB1が使われますが、このビタミンB1は脳に必要な栄養素のため、不足するとイライラしたり怒りっぽくなったりするとされています。

 

では、子どもにも厳格な糖質制限をさせたほうがいいのでしょうか? 答えはNO! です。糖質(ブドウ糖)は人間の活動に欠かせない栄養素であり、脳はそのエネルギー源のほとんどをブドウ糖に頼っているため、極端に不足すると脳の働きが低下していまいます。知り合いの小学生の女の子は、母親から糖質制限をかけられていたため、学校で低血糖で倒れてしまったそうです。

 

大切なのは糖質の“質”と“順番”にあります。糖質には急激に血糖値を上げる「クイックカーボ」と、ゆっくり血糖値を上げる「スローカーボ」の2種類に大別できます。

 

クイックカーボは、いわゆる白い食品(砂糖・パン・白米)やクッキー、チョコレート、ケーキやキャンディーなどに多く含まれます。一方、スローカーボは、全粒の穀物やさつまいも、豆類、果物などに含まれます。こうしたスローカーボの食事は血糖値の急激な上昇、いわゆるシュガーハイを防いでくれる糖質なのです。

 

しかしスローカーボだけの食事というのも、味気のないもの。特に玄米食は子どものうちは消化吸収に時間がかかるため、胃に負担がかかります。さらに、おなかが空きにくいということは、他の食べ物が摂れなくなる危険も。私は白米に少し混ぜる等で充分であると栄養士である母に言われました。

 

しかし、お友達がおいしそうに食べているグミやクッキーを我が子には我慢させてしまうのも、子どもの精神的に良くなさそうです。クイックカーボであるクッキーやチョコレートなどのお菓子をあげるときは、先に野菜や果物、豆類などをあげてからにするだけでも、血糖値の急激な上昇を防ぐことができます。私は先に果物やクイックドライの納豆、蒸かしたさつまいもなどをあげてから、甘いお菓子をあげるようにしています。

 

ほんの少しの食の知識で、シュガーハイや肥満は防ぐことができるのです。偏った食事ではなく、バランスよく何でも食べるというのが食育の基本ですが、“糖質”に着目して実践するだけでも、かなり変わってくると思いますよ。

 


 

ディラング真由子

神戸大学大学院人文学研究科博士課程修了。学術博士。2011年にハワイに移住。2児(1男1女)の母。日本在住中は小学生から大学生・留学生に国語を教えていた経験を活かし、2018年より学習塾「こども学習教室」の教室長に就任。

 

 

(日刊サン 2019.05.17)