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古代ハワイから癒しの名所 ヌウアヌの妙法寺でオヒアレフアの植樹会

Bynikkansan

3月 12, 2019

オヒアレフアという、ハワイ諸島固有の植物をご存知だろうか。フトモモ科の常緑樹で、花の名はハワイ語でレフア、“髪”という意味だ。確かに細い糸を束ねて作るポンポンのような、繊細で美しい花を咲かせる。花色は赤が多いが、オレンジや黄色、白などもある。

 

 

レフアの赤い花と同じ色のベニハワイミツスイ

 

 

オヒアレフアには恋の伝説もある。

昔々、オヒアという青年とレフアという娘がいた。二人は深く愛し合う恋人同士だった。ところがある日、ハワイ島の火山の女神ペレがオヒアに一目惚れ。ペレは激しく求愛するのだが、レフアを愛するオヒアはきっぱりと拒否してしまう。ペレは振られた腹いせに、なんとオヒアをゴツゴツと醜い木に変えて、恋人たちの仲を切り裂いてしまった。

悲しんだレフアは毎日泣き続け、森も雨に覆われ太陽が差さなくなってしまった。同情した神々は、ペレの呪いを解くことはできないが、レフアを花に変えてオヒアに咲かせてあげることにした。そしてオヒアレフアという1本の木となって、永遠に愛し合うことができた−−めでたしめでたしという物語だ。(ペレ自身が反省して、レフアを花にしたという説もあります)

そして今でもハワイアンの間では、レフアの花を摘み過ぎると雨が降ると言い伝えられ、神聖な花とされている。

8つの島があるハワイでは、それぞれの島にシンボルフラワーがあるが、オヒアレフアはハワイ島の象徴で、実際キラウェア火山周辺にはオヒアレフアが多く群生している。溶岩が流れた後に最初に芽吹く、生命力の強い植物でもある。ちなみにオアフ島のシンボルフラワーはイリマだ。

 

 

オヒアレフアが枯れる消滅危機

 

そんな本来丈夫なオヒアレフアが2010年頃から、真菌が原因の感染症にかかり、次々と枯れる危機に瀕している。

真菌はラピッド・オヒア・デス(ROD)と名付けられ、関係機関が拡大を阻止するためにさまざまな取り組みをしている。例えば、ハワイ島のオヒアレフアを他の島に持ち出すのは禁止で、罰金が科せられる。

またフラの祭典、メリーモナークでは、最高位の花の一つとされてきたレフアの花を使ったレイを作るのを、2年前から自粛している。

それでもハワイ州の2017年の調査では、全島で40万ヘクタールあったオヒアレフアの群落のうち7.5%、3万ヘクタールが枯れて消滅したと報告。2018年の5月にはカウアイ島でもROD真菌によるオヒアレフア被害が見つかった。

オヒアレフアは蜜の多い花で、やはりハワイ固有種である鳥の、ベニハワイミツスイが絶滅危惧種になったのも、オヒアレフアの減少が原因だ。

州や連邦機関は対策を急いでいるが、真菌撲滅への道は険しい。

 

 

妙法寺のサンクチュアリにオヒアレフアの苗

 

クムフラとしてホノルル妙法寺などでフラを教えているカリコラウさんは、以前からオヒアレフアの減少を心配していた。自ら神聖なレフアのレイを何度も編んだことがあり、とてもリスペクトしてきた。 「レイは飾りじゃありません。フラにとってのレイは、フラの女神であるキノラウが植物に自在に宿るので、その植物を身につけることで神とつながる、ダンサー自身が神聖な祭壇になるためです。またダンサーを悪いエネルギーから守るために身につけるものもあります」

妙法寺の少し下のエリアは、女神ペレが可愛がっていた妹ヒイアカが訪れたとも伝えられてきた。 「Pele’ula(ペレウラ)と呼ばれた地で、ヒイアカが詠んだ歌を今回のフラとして奉納いたしました」

 

 

心を鎮めたクワイエットボディで古典フラ、カヒコを舞う

 

 

ペレウラを含むヌウアヌエリアは、昔から良い気の流れるヒーリングスポットだったよう。また妙法寺の脇を流れる川はホノルルハーバーから水路で上がるゲートウェイでもあった。

妙法寺があるヌウアヌがハワイアンの名所であったことを知った、山村尚正住職も大変喜んだという。境内には菩提樹はじめ、さまざまなハワイアンプランツが、緑の風吹くサンクチュアリをなしている。 「本堂の脇にとてもいいスペースがあって、何か植えようという話しになったんですね。それでご住職にぜひオヒアレフアを植えたいとお願いしました」

フラで使うティーリーフの栽培など、ワイマナロで植物ナーサリーをしているデビットさんがオヒアレフアの苗を調達してきてくれて3月3日、オヒアレフアの植樹会が行われた。

 

 

神聖なカヒコと、レフアを歌ったフラを奉納

 

まず本堂で山村住職が御経を唱えた後、フラカヒコの奉納が行われた。パフと呼ばれる、神聖な儀式に使われる大小の太鼓を鳴らしながら、厳粛なチャントを詠うカリコラウさん。主宰するハーラウ(フラ教室)の上級者8人が厳かに、魂を鎮めるように奉納フラを舞った。

 

山村尚正住職
植樹されたオヒアレフアの苗とカリコラウさん

 

 

そしてオヒアレフアの4本の苗を植樹。赤や黄色の花が咲く予定だ。山村住職は以下のように話した。 「この神聖で恵まれた場所をみなさんに開放します。遊びに来てください、癒されに来てください。川音を聞きながら緑の風に吹かれてのんびりとお過ごしください。オヒアレフアのお守りも作る予定なのですが、今日には間に合わなかった(笑)。苗が育ったら、レフアの花のお花見もしたいですね」

 

フラ界の重鎮でカリコラウさんの師匠であるレフア・カワイカプオカラニ・ヒューエット氏が作った“レフアビューティ”というフラも披露。フラシスターズ達から雛祭りのお祝いフラをプレゼントしてもらったひと時でもあった。

(取材・文 奥山夏実)

 

(日刊サン 2019.03.12)