ハワイでの終活 vol.1
終活とは何のこと??
終活(しゅうかつ)とは、「人生の終わりに向けた自らの活動」の略語のこと。2010年の流行語大賞にノミネートされた頃から、日本では一般的に使われるようになってきました。現在では、葬儀やお墓など死後に向けた生前準備をさすだけではなく、「人生のエンディングについて自ら考えることによって、今をより良く充実させて生きるための活動」というポジティブな意味として定着しています。
少し前まで、自分や家族が死んだ時のことを話題にするのは、縁起でもないとダブー視されていました。 でも平均寿命が年々伸びて、老後の生活が心配になる中、人生のエンディングについて早くから考え、行動する“終活”は、タブーではなく、自分らしいライフスタイルの選択として明るくポジティブに受け入れられています。 核家族や単身者世帯の増加と、親戚や隣近所との付き合いが薄れる昨今、死は家のものでも地域のものでもなく、個人のものに変わりつつあります。 その結果、「家族や周囲に迷惑をかけないよう、自ら死後について考えて準備をしておきたい」という、自立的な終活の動きが加速しているのです。 ハワイの日系コミニティーも日本と同じように高齢化社会です。独立した子どもは、日本やメインランドなど離れて暮らし、核家族も多くなっています。 国際結婚をしているカップルも多いハワイでは、宗教や葬儀・埋葬など、異なる文化や価値観を持つ場合もあり、お互いのエンディングを話し合っておくことはより大切です。 日刊サンでは、「ハワイでの終活」と題し、特集シリーズでお伝えします。 (取材・文 奥山夏実)
今回のナビゲーター:花水恵美さん 長きにわたり日本とハワイの銀行、そしてファイナンシャルアドバイザーの仕事を経て、現在は平等院がある、バレーオブザテンプルズでスーパーバイザーを務めています。家族はアメリカ人の旦那さんと、可愛いワンチャンが3匹、そして旦那さんの母上94歳と一緒に暮らしています。 |
第一回目のテーマは「終活って、何をしたらいいの?」という素朴な疑問についてです。
まず終活(しゅうかつ)とは、「人生の終わりに向けた自らの活動」の略語のことです。日本では2010年頃から一般的に使われるようになってきました。現在では、葬儀やお墓など死後に向けた生前準備をさすだけでなく、人生のエンディングについて考えることによって、今をより良く充実させて生きるための活動」というポジティブな意味を持っています。 今回、終活についてナビゲートしていただけるのは、ハワイ在住で日本の終活アドバイザーの資格を持つ花水恵美さん。
−−恵美さん、どうぞよろしく!
さて、そもそも終活って、何をすることなんですか? はい、明るく楽しく終活についてお話ししますね。 終活は大きく分けて3つの活動から成り立っています。1つ目は、自分のエンディングを考える活動です。エンディングプランというノートがありまして、私はこれに書き込むことをお勧めしています。書き込むことで気持ちが整理でき、どんな風に人生を締めくくりたいのか希望が見えてきます。 気持ちが変われば書き換えればいいので、気楽に始めてみるといいと思います。
終活その1:自分のエンディングを考える
−−エンディングとは、ピンピンコロリとか、自分の死に方ですか?
ピンピンコロリのシナリオ通りにはいかないかもしれないけど(笑)、どんな最期にしたいか、介護の希望や終末期医療の希望、お葬式のスタイル、お墓はどうするかといったことを考えてみるのが終活その1です。 −−そういえば、私は1年ほど前に主治医の前でPOLSTポルスト(Provider Orders For Life-Sustaining Treatment)のリビングウィル(生前の意思)書に、尊厳死を選択したいと署名しました。
ポルストは合理的な制度ですよね。アメリカの場合、6ヶ月以内の命だと判断されたら、「このまま治療を続けるか」、「治療を拒否して自宅に戻って最期を迎えるか」、「自分が最後にどうしたいのか」を書くポルスト書類があります。アメリカは救急車も入院費も超高額ですから、延命措置を続けると本人だけでなく、家族の負担が大変ですからね。主治医に言えばその場で作成してくれます。
−−お葬式も、宗教に則ったものから親近者だけで行う家族葬まで、いろいろな形式があります。
日本では、好みの棺桶まで選ぶエンディンガーもいるとか。 エンディンガーって、エンディングの自作自演家さんのことですか(笑)。 確かにお葬式用の遺影を撮っておいたり、喪主の挨拶じゃなくて、亡くなったご本人の生前挨拶が読まれたりしているそうです。 またお葬式は費用もまちまちですので、信頼できる葬儀社を選びたいものです。人生のライフイベントである教育資金や住宅の購入資金と同じように、葬儀資金も意外とかかるので、信用できる葬儀社に見積もりを出しておいてもらうのも終活の一つです。
−−埋葬やお墓も多様化しています。
ハワイでは土葬が主流でしたが、最近は70%くらいの人が火葬を選択しています。火葬の方がお安いですし。樹木葬や海への散骨を希望するなら火葬です。 これ、大切なことですが、日本で亡くなられてハワイの海に散骨したいという方は、日本での火葬の際、遺骨ではなく遺灰にしてもらうようにしましょう。遺骨での散骨は禁止されています。 あと、日本ではお墓の引越しをしたり、墓じまいをする人が急増しています。お墓が遠い田舎にあるとか、法要のお布施など維持費がかかるなどで、子どもの代にまで負担をかけたくないと考える人が多いからです。 私の父は43歳という若さで急死したため、三男でしたが今でも本家のお墓に眠っています。 まだ母は元気なので、母が亡くなったら父と一緒に母の大好きなハワイで海を見ながら父と仲良く永眠してもらえるように兄たちとプランしています。
−−コオラウ山脈の緑あふれる自然美の懐に抱かれた、世界で最も美しい霊園ですよね。
そうなんです!すごく手入れが行き届いていて、とてもピースフルなんです。国籍や住んでいる場所、宗教を問わない永眠の地ですから、ハワイにお住まいの日本の方、また日本在住者の方でも購入することが出来ます。私と主人も初めてオーシャンビューテラスに行った時に、素晴らしい眺めに一目惚れしてしまい、心地よい風に吹かれ、「ここにずっと眠りたい」って言ってしまったほどでした。そして最近二人用の小さなお墓を購入しました。私たちは子どもがおらず、墓守も後継人もいないため海洋散骨する予定でしたが、バレーオブザテンプルズは永久管理霊園で、購入後は管理費が一切かからず、永代管理をしてくれるので安心して二人で永遠のパラダイスで永眠したいと思います。
終活その2:大切なモノをリレーする
−−財産や形見を家族や大切な人にバトンタッチする終活ですね。
銀行の口座や、有価証券、生命保険など、どこのどの口座なのか、お子さんなど家族はご存知ですか? これ、書き留めておかないと亡くなった時にとても慌てるんです。資産や権利はすべて書き出して、保管場所もわかるようにしておきましょう。
−−これって、年齢に関係なくしておいた方がいいですね。
そうなんです、終活って早くしておいても役立つんです! がん保険や生命保険などは数年ごとに特約などが改正される場合があるので、時々見直した方がいいし。そういうことを忘れないようにするためにも、エンディングノートに書き出しておけば、チェックすることができます。自分で自分の個人情報を管理するのにとても便利です。
−−でもエンディングノートは、遺産相続などの法的権限は及びません。
そうです、なのでアメリカではエステートプランニング、日本語だと相続設計をする人が多いです。ハワイの相続設計では、リビングトラスト(生前信託)を弁護士に作成してもらい、不動産などの名義をリビングトラストに変更します。そしてリビングトラストに含まれない宝飾品などを記しておくウィル(遺言状)などがあります。 トラストも遺言も何度でも書き換えることができ、一番日付の新しいのが有効と認められます。 ハワイでも英語によるエステートプランニングの講習会はよく催されていますが、日本語はほとんどありません。これから私も専門家を招いた、日本語によるエステートプランニングの会を企画したいと考えています。
−−終活その2には断捨離も含まれますね。
持ち物を整理して、常に身辺を軽くしておく。これ、我が家に課せられた任務でもあります(笑)。
終活その3:想いや意思を愛する人に託す
−−自分史や想い出、好きなことなどをエンディングノートに書いておけば、愛する人の心の中に生き続けることができる。
ご家族や大切な人への感謝の気持やメッセージなどを面と向かって話すのは照れ臭かったりするので、書くというのは都合がいいんです。好きな色は黄色、好きな場所はカイルア、最後の晩餐に食べたいのはイカ刺しなど、他愛のないことをメモ書きしておくだけでもいいと思います。書き出してみることで意外な自分を発見したり、自分を肯定することもできる。ああいい人生だったなあなんて思ったり、新しいチャレンジをするきっかけになったりするかもしれません。
−−認知症になった時、黄色い洋服を着せてくれたり、イカ刺しを食べさせてくれるかも!
いいですね、会いたい芸能人や行ってみたい外国も書いておかなくちゃ。 よく死ぬことはよく生きることです。元気なうちに死と向き合って、自分らしい終活をプランニングしてみる。ぜひご一緒に始めてみましょう!
「自分らしいエンディングを考えることは、今をよりよく生きることです!」
(取材・文 奥山夏実)