日刊サンWEB

過去記事サイト

香辛料の 健康効果と豆知識

Bynikkansan

11月 23, 2018

香辛料は、独特の芳香、辛味、色味のある植物から作られます。利用される部位は樹皮、葉、茎、花、蕾、果皮、果実、種子、根、地下茎など。料理に風味や美観を添え、消臭や着色などにも利用されます。100種類以上あると言われている香辛料は、食欲増進、消化促進、疲労回復、強壮、殺菌、抗菌など、私たちの健康維持への効果も認められており、サプリメントなどの健康食品としても販売されています。 今回の健康特集では、和食に使われる香辛料を中心に、健康効果や使い方、産地や歴史など、知って楽しい豆知識をご紹介したいと思います。

スパイスとハーブ

 

世界中で親しまれている香辛料ですが、その定義づけは国によって違い、どこまでが香辛料かという線引きは曖昧です。日本では、全日本スパイス協会が自主基準として香辛料をスパイスとハーブの2種類に分けています。

スパイス ― 香辛料のうち、茎、葉、花を除くもの

【例】茴香(ういきょう)、オールスパイス、オレンジピール、花椒(かしょう)、芥子(マスタード)、カルダモン、甘草、クミン、クローブ、芥子の実、胡椒、胡麻、サフラン、山椒、シナモン、生姜、西洋ワサビ(ホースラディッシュ)、唐辛子、ディルシード、ナツメグ、パプリカ、フェネグリーク、ロングペッパー、柚子、山葵(わさび)など ハーブ ― 香辛料のうち、茎、葉、花を利用するもの

【例】オレガノ、クレソン、香菜(コリアンダーリーフ)、サボリー、山椒の葉、紫蘇、セロリ、タラゴン、チャイブ、チャービル、バジル、パセリ、ペパーミント、ニラ、芥子菜(マスタードグリーン)、ミョウガ、レモングラス、ローズマリー、蓬、山葵の葉など。

 


 

さまざまな 

ここでは、日本の食卓でおなじみの香辛料の特徴や栄養成分を見ていきましょう。

 

 

紫蘇 Shiso 【シソ科シソ属 原産地:ミャンマー、中国中南部】

 東洋のハーブと呼ばれ、食用、薬用に使われます。古代名は「イヌエ」。イヌは似て非なるもの、エはエゴマの意で「エゴマに似ているが違うもの」という意味です。刺身のツマなどに使われる他、相性のよい寿司飯、鶏肉、豆腐、納豆などの香りづ付けに使われます。

 

☆主要な栄養成分

●ぺリルアルデヒド:紫蘇の香りの素となる成分で、食欲増進、殺菌、抗菌などの作用があります。

●ビタミンK:骨の形成を促したり血管を丈夫にするビタミンKは、紫蘇100gあたり690μg(マイクログラム)含まれています。

 

 

 

山椒 Japanese Prickly Ash 【ミカン科サンショウ属 原産地:日本】  

雌雄異株の落葉低木で、半日陰の湿った土地でよく育ちます。木の高さは2〜5m。4月頃、枝先に黄緑色の小さな花をつけます。古代日本では「椒(ハジカミ)」と呼ばれていました。「椒」には「かぐわしい」という意味があり、「山に生える木のかぐわしい実」ということで「山椒」という名前がつけられました。

 

☆主要な栄養成分

●サンショール:山椒独特の辛味の素、サンショールは、神経痛、肩こり、冷え性改善に効果があるのされています。

●シトロネラール:こちらは、独特の香りの素となる成分。食欲増進、消化促進、抗ウィルス、消炎、食中毒予防などの作用があるといわれています。

●カリウム:胡椒と同様、山椒もカリウムを多く含みます。

●ビタミンA:豊富に含まれるビタミンAは、肌の健康維持、免疫力向上、疲れ目を癒すなどの効果があります。

 

山椒の葉
山椒の実

 

 

山葵(本わさび) Wasabi 【アブラナ科ワサビ属 原産地:日本】

根茎が生食用として利用される日本原産の山葵。元々は山奥の渓流に沿って自生していたもので、それらが根分けされ、奈良時代頃に栽培されるようになったといわれています。山葵について記された最古の資料は、奈良県明日香村の奈良時代の遺跡から出土した「委佐俾三升(わさびさんしょう)」と書かれた木簡です。また、718年(奈良時代)に『賦役令』の中に「山葵」の記載があることから、土地の名産品と納付され、薬用として利用されていたことが窺えます。

 

☆主要な栄養成分

●イソチオシアネート:山葵の辛味の素となる揮発性のからし油。すりおろすなどして山葵の細胞が壊れる際、酵素の働きで生成される成分です。山葵を口にすると鼻にツーンとくる刺激はこの成分が作用しています。  

イソチオシアネートは抗菌、血栓予防、食中毒予防、覚醒などの作用がある他、がんの原因の1つ、食品の「焦げ」の物質を分解する働きがあるため、近年はがんの予防に有効とも考えられています。同じアブラナ科のキャベツ、ブロッコリー、カリフラワーなどにも含まれています。

 

 

生姜 Ginger 【ショウガ科ショウガ属 原産地:熱帯アジア】

生姜として食べる部分は地下の根茎です。中国では紀元前7世紀頃から食用として、インドでは紀元前6世紀頃から保存食や医薬品として利用されていました。ヨーロッパに伝わったのは1世紀頃で、古代ギリシャでは主に医薬品として使われていました。日本には3世紀頃に伝わったとされ、奈良時代頃に栽培が始まりました。『古事記』にも生姜についての記述が見られます。

 

☆主要な栄養成分

●ジンゲロール:辛味の素で、生の生姜に多く含まれます。毛細血管を広げて血流をよくしたり、真菌やウィルス、寄生虫などを殺菌する効果があります。刺身や寿司に添えられるガリには、口休めの他に食中毒予防という役割があるのです。また、発がん物質による遺伝子の突然変異を抑制する作用があるとも考えられており、がんの予防効果も期待できます。

●ショウガオール:生の生姜を加熱・乾燥すると、ギンゲロールがショウガオールに変化します。胃腸の壁を刺激して血流をよくする働きがあり、摂取すると生のものよりもゆっくりと身体が温まっていくため、冷え性の改善などに役立ちます。

●シネオール:生姜の香りの素、シオネールには、疲労回復、健胃、消炎、解毒などの作用があるといわれています。

●マグネシウム:生姜100gあたり27mg含まれるマグネシウムは、骨や歯の形成を助けたり、神経伝達を正常に保つ他、300種類以上の酵素の働きを助ける補酵素でもあります。

 

 

三つ葉 Japanese Honeywort【セリ科ミツバ属】  

東アジアに広く分布し、特に標高が高めの日陰を好みます。日本全国の山野に自生し、山菜採りでも収穫ができます。栽培での主な産地は千葉県、愛知県、茨城県、静岡県で、この4県が全国の三つ葉生産量の5割以上を占めています。

 

☆主要な栄養成分

●クリプトテーネン、ミツバエン:三つ葉の芳香成分の一部で、食欲増進、消化促進、精神安定、不眠改善などの効果があるといわれています。

●カリウム:胡椒、山椒と並び、三つ葉もカリウムを多く含みます。

●βカロテン:髪、皮膚、粘膜、目の健康維持に加え、肺や喉などの呼吸器系統を保護する働きがあるといわれています。

 

三つ葉の花。開花期は夏。

 

 

茗荷(みょうが) Japanese Ginger 【ショウガ科ショウガ属 原産地:アジア大陸東部】

茗荷の独特な芳香は、200種類以上の成分から構成されています。「茗荷を食べると物忘れがひどくなる」といわれますが、これは俗信で、茗荷の芳香成分には集中力を高める効果があることが分かっています。

 

☆主要な栄養成分

●アルファピネン:香りの素の精油成分で、血行促進、免疫力向上、強壮などの作用があるとされています。ヒノキやフランキンセンスなど、樹木系のアロマオイルにも含まれている成分です。

●ミョウガジアール:清涼感ある辛味の素で、抗菌、解毒作用があるといわれています。

●ガラナール:香りの素となる成分の1つで、がんや免疫疾患の原因となる酵素の活性化を阻害することから、がん予防への効果が期待されています。

 

 

茗荷のレシピ(茗荷、キュウリ、トマト、オクラのゴマ油和え)

材料(2人分) 茗荷2本/キュウリ1本/トマト1個 オクラ8本 ごま油大さじ1/しょうゆ小さじ2/ 塩適量/ゴマ適量

①茗荷、キュウリは千切り、トマトは一口大に切る。

②オクラをさっとゆがき、縦半分に切る。

③ボウルに材料を入れ、ごま油、醤油、塩を入れて混ぜる。

④器に盛り、白ごまをかけて出来上がり。

参考: mynameisyuko@Cookpad (https://cookpad.com/recipe/856653)

 

香辛料の日本史

古墳時代〜奈良時代

「薬味」とも呼ばれる日本の香辛料。その歴史は古く、3世紀末(古墳時代)に編纂された中国の歴史書『魏志倭人伝』には、当時の日本に「山椒が自生していた」という一節があります。  712年(奈良時代)に編纂された日本最古の歴史書『古事記』には生姜、山椒を指す「はじかみ」、蒜(にんにく)、などに関する記述があります。また、聖武天皇(701-756)、光明皇后ゆかりの物品を収蔵した東大寺正倉院には、外国から伝来した胡椒、クローブ、シナモンなどが貴重な薬として収められたといいます。  これらの香辛料は、米中心の食文化の影響で、長い間定着することがありませんでした。

 

江戸時代

室町時代頃から「薬味」の概念が広まり、江戸時代には一般の人々に広く利用されるようになりました。葱、大根、芥子、紫蘇、生姜、山葵、山椒、柚子が多く使われたといいます。  江戸時代、うどんの薬味には唐辛子ではなく胡椒が使われていました。江戸時代の代表的な料理書『料理物語』(1643年刊)には「うどんには胡椒、梅、にうめんには胡椒、さんしょうの粉」と記されているほか、近松門左衛門が著した浄瑠璃『大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ)』(1715初演)には「本妻の悋気とうどんに胡椒はお定まり」という一節があります。江戸時代後期に唐辛子が広まり、うどんの薬味としての胡椒は使われなくなっていきました。 また、漢方薬としてバジルの種子が輸入されるようになりました。グルコマンナンを多く含むバジルの種子は、乾燥したものを水に浸すと30倍に膨張します。江戸時代は、水に浸したバジルの種子で目に入ったゴミを洗浄したため、目箒(めぼうき)と呼ばれていました。

 

宝暦年間(1751~1764)に登場した江戸時代のファミレス、煮売り酒屋。メニューには吸い物、煮魚、刺身、鍋焼きうどんなどがあったという。

 

©️ベランダ菜園 (http://ichigo.otemo-yan.net/e626026.html)