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脳の構造と働き

Bynikkansan

10月 16, 2018

 

人間の脳は、その複雑な構造からよくコンピュータに例えられます。五感からの情報を受け取って解析したり、記憶したり、考えたり、感動したり、身体に運動の指令を出したりと、私たちの心や身体の活動を司っています。生まれた時から私たちと一心同体の脳ですが、脳がどんな造りで、どんな働きをしているかなど、日常で考えることはあまりないと思います。 そこで、今回の健康特集では、身体の中枢である脳の構造や働きを中心に、その健康を守る方法などをご紹介したいと思います。

 

脳の構造

頭蓋骨内の大部分を占める脳は、大脳に約140億個、小脳に約1000億個の神経細胞(ニューロン)があると考えられています。  大脳、小脳、脳幹の3つに分けられ、軟膜、クモ膜、硬膜の3層の髄膜に覆われています。軟膜は脳に密着し、その上にクモ膜があります。軟膜とクモ膜の間には「クモ膜下腔」と呼ばれる空間があり、クモ膜下腔は脳脊髄液で満たされています。クモ膜の上には硬膜がありますが、この2層の膜はほぼ密着しています。硬膜は、一部分を除いて頭蓋骨の内側に密着しています。

 

 

大脳

大脳は場所によって機能が分かれている臓器です。大脳は、側頭葉、前頭葉、前頂葉、後頭葉の4つに分かれています。側頭葉、前頭葉、前頂葉の3つは「領野」と呼ばれる部分に分かれており、さらに細かい役割分担をしています。

 

●側頭葉―上後方のウェルニッケ野で記憶や言語を、上方の聴覚野で音を認識、解析します。

●前頭葉―前面の前頭連合野で思考、判断、感情、創造などを、後方の運動野で身体を動かすための指令を、下方のブローカ野で会話や発音を司ります。

●頭頂葉―体性感覚野で温度や圧迫感など、皮膚や筋肉で感じたことを、頭頂連合野で空間や動きを認識、解析します。

●後頭葉―視覚からの情報を取り入れ、見たものの大きさ、形、色などを解析します。

 

右脳と左脳

大脳は「大脳縦裂」という縦向きの深い溝で、右脳と左脳の2つに分かれています。左右の脳は「脳梁」という太い神経の束で結ばれています。

 

【右脳】創造や直感を司る  

右脳は、左半身への運動の指令と五感を司ります。創造的な発想、直感的な理解、空間や方向の認識など、知覚と感性に携わる右脳は、絵を描くなどの創造的な訓練によって発達すると言われています。

 

【左脳】言語や計算を司る  

左脳は、右半身への運動の指令と感覚を司ります。「言語脳」とも呼ばれ、話す、聞く、書く、読むなどの言語処理、時間の感覚、計算などの思考や論理に携わっています。日常生活で使うことが多い左脳には、人間関係を円滑にする能力が備わっています。一方で、10~20%の人の言語中枢は、右脳や両側の脳にあると言われています。

 

脳の話① 液体の中に浮かぶ脳

私たちの脳は、頭蓋骨の内側を満たす「脳脊髄(のうせきずい)液」という液体の中に浮かんでいます。液体は、脳室にある「脈絡叢(みゃくらくそう)」という場所で、1日に約500ml作られています。脳脊髄液は、脳室、脊髄の周囲、脳の表面を循環した後、頭頂部にある静脈へ吸収されていきます。この脳脊髄液の循環がどこかでせき止められてしまうと、頭痛、意識の低下、吐き気などが起こる水頭症という状態になります。脳脊髄液の流れをスムーズにするため、また血流をスムーズにするためにも、毎日意識的に水を飲むようにしましょう。

参考HP:脳神経外科疾患情報ページ http://square.umin.ac.jp/neuroinf/index.html

 

小脳

カリフラワーのような見た目の小脳は、大脳の下後方に位置しています。重さは約120〜140g。脳全体の重さの1割強を占めます。1000億個以上の神経細胞を持っており、脳全体の神経細胞の大部分は小脳にあります。  小脳は、新小脳、古小脳、原小脳の3つに分けられます。新小脳は大脳から送られてくる運動指令を受け取って反映させ、古小脳、原小脳は、平衡感覚や筋肉からの情報を元に、姿勢を維持したり、より細かい運動の調整に携わっています。表面は、神経細胞が集中している「小脳皮質」で覆われています。小脳皮質は、全身から届けられた情報を解析してまとめ、視床などを通して大脳皮質や全身に伝える役割を担っています。しかし、手足や眼球などの動きの情報は大脳皮質には送られず、小脳が脳幹や脊髄を通して直接筋肉に指令を送っています。

 

 

【脳幹・間脳】

呼吸、心拍、体温調節などに関わる器官  大脳と脊髄を結ぶ通路としての働きも担う脳幹は、「中脳」「橋」「延髄」の3つに分けられます。中脳は視覚と聴覚、橋は呼吸や嚥下などの反射運動の神経伝達を行います。延髄は、代謝や血液循環の調節に携わっています。間脳は、「視床」「視床下部」の2つに分けられます。視床は、脊髄を通って送られてきた嗅覚以外の感覚の情報を大脳に伝える中継ぎをします。視床下部は、自律神経系、内分泌系の神経伝達を担当しています。

 

画像出典(©︎Houken):https://health.goo.ne.jp/medical/body/zukan goo ヘルスケア「家庭の医学」 ― 株式会社法研『からだと病気のしくみ図鑑』 監修:川上正舒自治医科大学名誉教授/地域医療振興協会 練馬光が丘病院院長・野田 泰子自治医科大学医学部解剖学部門教授、 矢田俊彦自治医科大学医学部生理学講座統合生理学部門教授

 

 

脳の話② 脳の大きさと重さ

人間の脳の大きさは人種や個人によって様々ですが、平均的なサイズは概ね以下のようになっています。

●男性―大きさ:縦16.2cm×横13.3cm重さ:1.375kg 容積:1.3ℓ

●女性―大きさ:縦15.3cm×12.6cm重さ:1.245kg 容積:1.2ℓ  

現在までに確認されている人間の脳の重さで、1番軽いものは男性で約960g、女性で約800g、1番重いものは男性で2kg強、女性で1.8kgとされています。  

脳は、男女共に7歳までに急速に重くなり、その後はゆっくりと重くなっていき、20歳頃に成人の平均値に達します。以後、約30年は重さの増減があまりなく、50歳頃からはゆっくりと軽くなっていくと言われています。

 

脳の話③ 脳を元気にするウォーキング

【明るい気持ちをもたらすホルモンが分泌される】

 ウォーキングなどの有酸素運動をすると、自律神経のバランスを整え、幸福感、爽快感、達成感などの明るい気持ちをもたらす脳内ホルモンの分泌が促進されます。そのため、適度な有酸素運動の後はスッキリした気分になります。時速4〜5キロでウォーキングをした場合、約20分後には、達成感をもたらすドーパミンや、爽快感をもたらすβエンドルフィンが分泌し始めます。約40分後には、「幸せホルモン」として有名なセロトニンが分泌し始めます。セロトニンは、脳にリラックスした気分や幸福感をもたらしてくれます。

【記憶力の向上、認知症の予防にも効果的】  また、ウォーキングで脳に酸素が取り込まれることで、記憶力が向上したり、認知症が予防できると言われています。ウォーキングをすると、体内に普段より多くの酸素が取り入れられます。そのため、全身の血行がよくなるとともに、新鮮な酸素や栄養を含んだ血液が全身に送り込まれます。脳の血流も増え、神経細胞の働きが活発になるため、記憶力や学習力が向上すると考えられています。1日40分のウォーキングを週3回、1年間行った場合、記憶を司る海馬が大きくなるという報告もあります※

※参考HP:ユニ・チャーム「今からはじめる『歩く』を通じて認知症予防推進」 http://www.unicharm.co.jp/company/news/2016/1204387_3942.html