会場となったJTBハワイ・オハナラウンジには在住の日本人を始めとする約100人が集まり、談慶さんの立川流落語に聴き入った
落語家の立川談慶さんのハワイ独演会が、17日、ワイキキDFSギャラリアのJTBハワイ・オハナラウンジで開催された。この独演会は、2013年から東日本大震災の支援を行なっている「NPOクラブ・カサ・デラ・ドルチェ・ビタ」主催のチャリティー寄席。オアフ島在住の日本人を始めとした約100人が来場し、ハワイでは初となる談慶さんの落語立川流を堪能した。 クラブ・カサ・デラ・ドルチェ・ビタ代表の大田千栄美さんは、挨拶の中で、チャリティー寄席の開催に賛同した談慶さんへの感謝を述べると共に「皆さまが来場という形で東北の支援に参加してくださったことに心から感謝しています」と語った。 出囃子と共に大きな拍手が起こると、舞台袖から談慶さんが登場。落語を生で聴くのは初めてという来場者が半分を占める中「落語は会話だけで成り立つものですから、皆さんの想像力を働かせながら聴いていただければと思います。それが落語の醍醐味です」と語った。そして、天才児と言われた談慶さんの師匠、故・立川談志さんのエピソードや、短い小噺などを巧妙な話術で披露。一通り会場を沸かせた後、古典落語の『転失気(てんしき)』と『牛ほめ』の二遍を演じた。
『転失気』は医学用語の意味について知ったかぶりをする人々の噺で、若手が演じる「前座噺」の一つとしても知られている。『牛ほめ』は江戸時代中期の笑話本『はなし大全』の一遍「火除けの札」が原話で、世間ずれした言動ばかりをし、いつも父親の頭を悩ませている与太郎が主人公の噺。談慶さんの緻密でありながら初心者にも分かりやすい高度な演技に、満場の拍手が起こった。
第2部の冒頭では、チャリティー寄席に協賛し、駿台甲府高校時代は談慶さんと同級生だったという医師の森田敏宏さんが挨拶をした。森田さんは、毎年参加しているホノルルマラソンに参加した際のエピソードとして、コースの途中で慶応大学同窓会の三田会が応援席にいるのに気がついたことに触れ「ハワイの三田会に協力してもらえたら(慶応大学出身の)談慶師匠のチャリティー寄席を開催できるのでは」と考えたという。 森田さんの挨拶の後、再び談慶さんが高座に登場。古典落語の『紺屋高尾』を披露した。
『紺屋高尾』は、花魁の最高位・高尾太夫と、紺屋に勤める染物職人・久蔵の純愛を描いたもので、古典落語の名品と言われている。「落語を聴いたのは初めて」という来場者の一人は「一人で数人の人物を演じる人物転換の速さには驚きました。特に『紺屋高尾』では男女二人が一人で演じられているにもかかわらず、場の情感がよく伝わってきました。一人芝居という以上の緻密で高度な技術を伴った落語は、日本の伝統文化ならでは。ハワイにまで足を運び、落語の面白さと奥深さを見せてくださった談慶さんには心から『ありがとう』と言いたいです」と語った。
(日刊サン 2018.10.18)
(取材・文 佐藤友紀)