ハワイ大学(UH)と州土地・天然資源局(DLNR)は9月27日発行のネーチャー誌に、ハワイの気候変動による海面上昇が、これまでの予想よりも大きく、海面上昇の影響を受ける陸地部分が以前の予想の2倍になり、海岸から1~2マイルの内陸部の低地帯でも影響は免れない可能性があると発表した。 この研究では、より内陸部まで広範囲に洪水を引き起こす慢性的な浸食と波の打ち上げ高を考慮に入れており、より現実的なものである。海面が静かに上昇するという前提の従来のバスタブ方式では、海面上昇で実際に影響を受けるであろう35~54%の地域が省略されてしまう。また、この研究では、その地点から洪水が加速しさらに内陸部に広がってしまう「臨界点」が特定されている。 臨界点はオアフ島では海抜2~3フィートの位置にある。2フィートの海面上昇で、島の6平方マイルが海水洪水の影響を受けるが、3フィートの上昇では、2倍以上の12.5平方マイルに拡大する。ワイキキからダニエル・K・イノウエ国際空港、エバ・ビーチに至る南岸の低地は、特に被害を受けやすい。
同研究の研究者の1人は、海面は、南極の氷床の溶解の速さによるが、世紀末までに2-8フィート上昇すると予想している。今のペースが続くと海面は世紀末までに2フィート以上高くなるが、南極とグリーンランドの氷河の溶解が近年の加速化していることを考慮すれば、今世紀末までに6~8フィートの海面上昇の可能性が出てくる、とコメントしている。 UHとDLNRのこの研究では、UHの高性能コンピューターが2年間使用された。陸上と海底の地形がインプットされ、海岸に沿った波と浸食の計算が行われた。オアフ島、マウイ島、カウアイ島は、65フィートごとに区切られ、州全体の計算は、将来の海面上昇の4つのシナリオの想定の下、10,000箇所以上の海岸のポイントを対象にした。 この研究では、最も影響を受ける地域では、20-30年以内に毎日満潮時に洪水に見舞われ、夏の高潮時には最大規模の浸水に、他の季節でも洪水に見舞われる、と予想している。州全体の沿岸地域は、毎年夏に少なくとも1-3回、波の打ち上げによる広範囲にわたる沿岸洪水を引き起こすであろうとのこと。 また、今後30~70年間の気候変動により海面が3.2フィート上昇すると予測し、オアフ島の被害は、129億ドルの構造物と土地の喪失、ワイキキのホテルを含む3,800戸の構造物の崩壊、13,300人の住民の避難移動、17.7マイルの長さに渡る主要道路の喪失、と予想している。
(日刊サン 2018.10.13)